腎硬化症が進むにつれ、腎臓のろ過能力が低下し、血液中のクレアチニン値が上昇していきます。クレアチニンとは筋肉のエネルギー代謝で生じる老廃物で、腎臓が正常に働いていれば尿として排出されます。しかし腎機能が落ちると排出が滞り、血中濃度が高まります。ここでは、クレアチニン値の変化とeGFRを組み合わせた評価の重要性についてご説明します。

監修医師:
田中 茂(医師)
専門は内科学・腎臓内科・血液透析・腹膜透析・臨床疫学・生物統計学
腎硬化症においてクレアチニン値が上昇するメカニズム
腎硬化症が進むにつれて、クレアチニン値がどのように変化するのかを理解することは、病気の経過を把握するうえで大切です。このセクションでは、腎硬化症とクレアチニン値上昇の具体的なメカニズムと、検査値の読み方について解説します。
腎硬化症が進むとクレアチニン値はどう変わるか
腎硬化症が進行すると、腎臓の血管が硬くなり血流が減少します。腎臓の中には、糸球体(しきゅうたい)と呼ばれる非常に細かいろ過装置が多数あり、健康な腎臓にはおよそ100万個の糸球体が存在します。腎硬化症では、硬化した血管の影響を受けた糸球体が少しずつ機能を失い、正常にろ過できる糸球体の数が減少していきます。
糸球体が機能を失うと、腎臓全体のろ過能力(eGFR)が低下します。ろ過能力が落ちると、クレアチニンを血液から取り除く力が弱まるため、血清クレアチニン値が徐々に上昇します。腎機能の低下と血清クレアチニン値の上昇は概ね反比例の関係にあり、eGFRが下がるほどクレアチニン値は高くなる傾向があります。
腎硬化症の初期段階では、クレアチニン値の上昇はわずかであるため、自覚症状がないまま見過ごされることがあります。しかし、腎機能がある程度低下した段階で検査を受けると、クレアチニン値がすでに高い状態になっているケースも少なくありません。
腎硬化症においてクレアチニン値が1.5mg/dLを超えるようになると、腎機能低下が一定程度進んでいるサインと考えられます。さらに2.0mg/dL、3.0mg/dLと上昇するにつれて、慢性腎臓病のステージも進み、将来的な透析療法の必要性についても医師と相談する必要が出てきます。
クレアチニン値だけでなくeGFRと合わせて判断することの重要性
腎臓の機能を正確に把握するためには、血清クレアチニン値とともに、eGFR(推算糸球体ろ過量)を確認することが大切です。eGFRは、クレアチニン値・年齢・性別をもとに計算される指標で、腎臓が1分間にどれだけの血液をろ過できるかを推算したものです。
eGFRは60mL/分/1.73㎡以上が正常とされており、60を下回ると慢性腎臓病(CKD)のステージに分類されます。さらにeGFRが30を下回るとCKDステージ4、15を下回るとステージ5(腎不全)となり、透析療法や腎移植を検討する段階に入ります。
腎硬化症の経過を観察するうえでは、クレアチニン値とeGFRを定期的に測定し、変化の推移を追いかけることが重要です。一時的な変動に一喜一憂するのではなく、数ヶ月単位・年単位での傾向を医師と一緒に確認する姿勢が望まれます。
また、eGFRは年齢とともにある程度低下することが知られており、高齢の方では若い方と比べてeGFRが低めになる傾向があります。そのため、数値の絶対値だけでなく、変化のペースや他の検査値(尿タンパク、血圧など)と合わせた総合的な判断が必要です。腎臓内科や内科での定期的な診察を通じて、医師とともに検査値を管理していくことが腎硬化症の進行を抑えるための基本的な取り組みです。
まとめ
腎硬化症は自覚症状が出にくいながらも、放置すると腎機能の低下が着実に進んでいく病気です。クレアチニン値やeGFRなどの検査値を定期的に確認し、血圧管理・減塩・適切な運動・禁煙といった生活習慣の改善を継続することが、腎硬化症と上手に向き合うための基本です。症状がないからといって安心するのではなく、定期的に医療機関を受診し、医師と一緒に病状を管理していくことが大切です。クレアチニン値の異常や身体の変化が気になる方は、腎臓内科や内科への相談を検討してみてください。
参考文献
日本腎臓学会「診療ガイドライン」
厚生労働省「腎疾患対策」
厚生労働省「第7回 慢性腎臓病(CKD)ってなぁに?」
厚生労働省「4 慢性腎臓病(CKD)」
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