糖尿病による壊疽の治療方法と効果

初期段階の壊疽はどのように治療しますか?
自分の足の状態を知ることは、糖尿病による足のトラブルを防ぐためにとても大切です。皮膚の様子や血の巡り、しびれ、足の形などに日頃から気をつけて、必要なときは医師の診察を受けましょう。まず始める治療として大切なのが、フットケアです。
足の裏にできた傷は、歩くたびに体重がかかって悪化しやすいです。そのため、特別な靴やギプス(オフローディング)を使って、傷にかかる圧をできるだけ減圧します。専門の靴や装具を使用するようにしましょう。
傷をやさしく洗って、乾いた清潔なガーゼなどで保護します。消毒液の使いすぎは皮膚を傷めるので、医師の指示に従いましょう。湿った環境の方が傷が早く治るため、保湿ガーゼや創傷被覆材を使うことがあります。
加えて血糖管理を強化します。さらに、糖尿病性壊疽の成因に基づき治療を行います。まず、血行障害があるかどうかを評価します。血行障害がない場合は神経障害と感染を伴うことが多いため、抗菌薬の治療と死んだ組織を取り除く治療を行います。
傷の表面に黒くなった皮膚や膿があると、治りが悪くなります。医師が必要に応じて、壊死した組織をとりのぞきます(=デブリードマン)。
傷が赤く腫れたり、熱をもっていたり、膿が出る場合は感染徴候です。抗生物質の飲み薬や点滴で治療を行います。
血行障害がある場合は、できるだけ早く血行再建術を行います。
進行した壊疽の治療法を教えてください
壊死が深部に及ぶ場合、より侵襲的な治療が必要になります。血行再建術
具体的には、血管を広げるカテーテル治療(バルーンやステントなど)、閉塞したり狭窄したりした血管を迂回するようにほかの血管から血流が流れるようにするバイパス手術などです。足先に血液が流れるようにします。 局所創傷管理
広範な壊死部を外科的に除去し、感染源を取り除いたうえで陰圧閉鎖療法やbFGF製剤などを用いて肉芽形成を促します。 集学的医療
内科形成外科、フットケア外来、看護師などと連携し、全身管理と創傷処置を統合した治療が必要です。 特殊療法
無菌ウジ虫による生物学的デブリードマン(MDT)などの高度療法も選択肢となります。
早期の血行再建や適切な創傷ケアにより、壊疽の範囲を小さくし、切断を防げる可能性が高まります。
広範な壊死や感染制御困難の末期壊疽の場合、血流が保たれていない組織を切り離す治療が必要になります。命を守るため、感染制御が不可能なケースでは足指単位から下腿切断まで、検討されます。足を切断した場合、着衣、移動、入浴、トイレの使用などの日常生活のADL(Activities of Daily Living:日常生活動作)が低下する可能性があり、切断後の断端ケアやリハビリテーション、義足装着などを含む生活支援が重要です。切断は最終手段ですが、命を救うために選択されることがある重大な介入です。
治療を行えば足は元どおりになりますか?
糖尿病性壊疽は再発の多い疾患です。また、糖尿病は病歴が長くなると足の変形を伴うこともあり、管理がより難しくなります。加えて原疾患による神経障害、血行障害は進行性であり、壊疽を起こしやすい患者さんはリスクが上がりやすいです。したがって、早期に治療する、あるいは予防が重要な疾患です。
壊疽の治療を行った後のリハビリテーションについて教えてください
糖尿病性壊疽の治療後のリハビリテーションは、再発予防、歩行機能の回復、生活の質の維持を目的に多職種で行われます。再発予防のためのケアとして、フットケアと足の圧分散が重要です。
足底の圧力が集中しないよう、装具(インソール、靴)や特注靴、歩行補助具を使用します。
また、歩行機能の回復のため、筋力のリハビリテーションを合わせて行います。下肢筋力トレーニングで活動制限後の筋力低下を防ぐことが重要です。また、治療後に傷や装具のために歩行訓練が必要になる場合があります。傷や装具に合わせた負荷の調整が必要となるため、義肢装具士、理学療法士と連携して行います。
編集部まとめ

糖尿病で発症する壊疽の初期症状や予防、治療法を解説しました。糖尿病は全身に影響を及ぼす疾患であり、特に壊疽は集学的治療が必要な疾患です。生命予後も悪いため、予防と早期発見、早期治療が重要になります。糖尿病と診断された場合、フットケアを定期的に正しく行い、壊疽を未然に防ぎましょう。
参考文献
糖尿病と糖尿病足病変の成り立ちについて(日本フットケア学会雑誌)
糖尿病足病変のフットケアから下肢救済治療の基本(日本義肢装具学会誌)

