水谷豊&檀れいが語る、10年目を迎える『無用庵隠居修行』の深み 夫婦役の関係は「陰ながら顔色を気にする」仲に

水谷豊&檀れいが語る、10年目を迎える『無用庵隠居修行』の深み 夫婦役の関係は「陰ながら顔色を気にする」仲に

水谷豊主演「無用庵隠居修行」第10弾が9月22日(火)に放送される
水谷豊主演「無用庵隠居修行」第10弾が9月22日(火)に放送される / (C)BS朝日

水谷豊×岸部一徳×檀れいが共演する人気シリーズ「無用庵隠居修行」の最新第10弾の放送が決定した。本作は、直木賞受賞作家・海老沢泰久原作の短編時代小説を吉川一義監督が映像化した痛快エンタメ時代劇。欲を捨て、隠居した元旗本の半兵衛(水谷豊)が、江戸に巣食う巨悪を討つ痛快かつサスペンスフルなストーリーとなっている。 “隠居殿”こと日向半兵衛役の水谷豊と、妻・奈津役の檀れいにインタビュー。撮影を終えたばかりの2人に、10年目を迎えた本作への想いや最新作の撮影秘話などをたっぷりと語ってもらった。

■水谷豊「今回で“6回目の最終回”が終わったことになります(笑)」、第10作目となった人気シリーズへの軌跡

ーー「無用庵隠居修行」も10作も続く人気シリーズになりました。今、時代劇が10作も続くというのはなかなかないことだと思います。まずは率直な気持ちを教えてください。

水谷:「10年一昔」と言いますからね。我々も10年前は…10歳若かったですから(笑)。

檀:はい(笑)。

水谷:始まった頃は時代劇が減っている状況でしたが、最近ちょっと時代劇が増えてきたかなという印象があり、とてもうれしいですね。本作は決して派手ではないかもしれませんが、長く続けていることが、視聴者の皆さんをはじめ何かの力になっているのではないかと思っています。檀さんはいかがですか?

檀:毎年、暖かくなる季節に京都で撮影することが当たり前になっていて、「もう第10作目なんだな」と驚きました。それとともに、この作品は原作もね…。

水谷:実は第4作で原作が終わってしまったんです。それで「終わるのは寂しい」とオリジナルで作った第5作を最終回にしようとしたんですね。あの時、最終回の挨拶をしましたよ。

檀:大きい花束をいただきましたね。

水谷:「これで最後なんだな」という大きさでした。それで終わりかと思ったら、なぜか第6作目が…(笑)。気がついたらまたここにいて、それが2回目の最終回になり、その時は花がブーケみたいに小さくなっていました。今は第10作ですから、今回で“6回目の最終回”が終わったことになります。よくこんなに最終回が続くなと思っていますよ。

檀: (笑)。原作はもちろん素晴らしいですが、それをもとにキャラクターを生かして一作ずつオリジナルで進んでいます。「今回はどういうキャラクターが『無用庵』を賑やかにしてくれるんだろう」という楽しみが毎回ありますよね。

水谷:はい、楽しいですね。

■台本をはるかに飛び越える! 水谷&檀を刺激し続ける吉川一義監督の演出術

ーーこの10年、吉川監督がずっとメガホンを執ってきましたね。

水谷:監督とは長いお付き合いですが、吉川監督の作品は「大変だな」と思うシーンこそ面白くなるんですね。監督が基本的な流れを全部作ってくださるので演出に不自然さがなく、あとはどうエンターテインメントにしていくかだけですからね。俳優にとっては無理をする必要すらない、そうそう出合えない現場です。素晴らしい演出でまだまだ勉強になります。

檀:私は吉川監督のような演出は初めてで、第1作目は本当に戸惑いました。でも出来上がった作品を見るととても楽しいですし、ある時から監督の意図がすっと入ってくるようになりました。台本をはるかに飛び越えた演出をされるのでいつも驚かされますし、すべてにおいて刺激的で学びの場です。

■円熟味を増す半兵衛・奈津・勝谷の掛け合い&今作の注目シーンとは…?
「4K時代劇スペシャル無用庵隠居修行10」より
「4K時代劇スペシャル無用庵隠居修行10」より / (C)BS朝日


ーー半兵衛と奈津、そして勝谷彦之助(岸部)の関係性も円熟味が増してきたように感じます。改めて、3人で演じる楽しさを教えてください。

水谷:何年か前に、奈津との関係が“空気みたいな関係”になったと言いますか。…刺激がなくなったという意味じゃないですよ(笑)。勝谷ともまさに今そんな関係で、この3人のうち誰か1人欠けても成立しない良い関係ですよね。最初はどうなるかと思いましたが、今やそれぞれがなくてはならない存在です。

檀:第1作目の時は、水谷さんと岸部さんの掛け合いの面白さや、お二人のなんとも言えない間合いが楽しかったんです。でもそこに奈津として入っていくのが難しくて、「私は大丈夫なんだろうか」としばらく思っていました。それが時を重ねて、ある時水谷さんに「空気のような存在だね」と言われたのが本当にうれしかったです。吉川監督の演出は何かをしながら日々の生活の中で話が進んでいくのですが、そこに私も入れさせていただき、良い関係性をお届けできるのは、やはりこの10年があってのことだと思います。

ーー3人の関係性が深まっていく中で、特に印象に残っているシーンはありますか?

水谷:見事なまでの勧善懲悪で、半兵衛の正義が毎回ストーリーの中に組み込まれていくわけですが、やはり印象的なのは毎回の変装でしょうね。「何をやらせるんですか?」と言いたくなることをやらせてくれるので、毎回楽しみにしています(笑)。今回もちょっといかがわしい祈祷師になるんですが、スタッフから「もうそこには半兵衛が1ミリもない」と言われてしまって(笑)。

ーーそれはもはや一人二役ですね(笑)。

水谷:本当にとんでもないんですよ(笑)。今回の祈祷師はちょっとうさん臭いんですが、「でも本当にパワーを持っているんじゃないか…?」と思わせるような説得力を必要とされましたね。

檀:私が印象に残っているのは、今作で入られた片桐仁さんと、半兵衛様、勝谷さんの3人のシーンです。片桐さんが演じる蔦屋重三郎が、当時の春画本を「こんなのもやってるんです」って見せるんですが、そこで勝谷さんが…どこまで言っていいんですかね?(笑)

水谷:ああ(笑)。見せて、勝谷が興奮するやつですね。

檀:それを奈津が覗き込んで見ちゃって(笑)。

水谷:我々は睨まれるんですよ(笑)。

檀:でも、半兵衛様は奈津のことを分かっているので、「ね、勝谷ね」みたいな顔をするんです。セリフは何もないのに、動きや表情だけで伝わってくる。こういうところが「無用庵隠居修行」の面白いところだなと改めて思いました。

■檀れいが「三人娘」で踊り子に! 水谷豊が明かす、最近の“夫婦関係”の変化
水谷豊主演「無用庵隠居修行」第10弾が9月22日(火)に放送される
水谷豊主演「無用庵隠居修行」第10弾が9月22日(火)に放送される / (C)BS朝日


ーー変装のお話が出ましたが、檀さんは今回踊り子に扮して踊りも披露していますね。

檀:私も毎回変装シーンはとても楽しみで、見どころの一つですね。変装するのは必ず半兵衛様だと思っていましたが、今回は奈津とお咲さん(中山忍)、あけみさん(小川菜摘)の3人も踊り子に扮しました。3人の中では「三人娘」って呼んでいるんですけどね(笑)。

水谷:そう、またその踊りが本格的なんですよ。

檀:実は日本舞踊の先生がいらして、真面目にきちんと教わって踊りました。

ーーこの10年で奈津というキャラクターもだいぶ変わってきたのではないでしょうか?

檀:そうですね。作品を重ねるごとに距離が少しずつ近づき、夫婦になり…今は時々奈津が強かったり、尻に敷いたりするようなシーンもありますが、2人の仲の良さは深まっていると感じます。やはり10年かけて、岸部さんも加えた3人の空気感がとても良い形で反映されていますよね。一作一作丁寧に重ねることでお芝居の息も合ってきて…私が勝手に思っているだけかもしれないんですけれど、水谷さんとの関係も役者としてより深まっていると感じるんですが、どうですかね?

水谷:僕に聞いてるんですか?

檀:はい、勝手な思い過ごしだったらそう言ってください(笑)。

水谷:いやいや。よく家に帰って奥さんがちょっと不機嫌だと「あれ、何かしたかな…?」と心配になって顔色を伺うことがあるって言うじゃないですか。最近、その感じが少しあるんですよ(笑)。奈津がちょっと冷たい顔をしていて…。

檀:そんな顔していないですよ(笑)。

水谷:だから、陰ながらいつも奈津の顔色を気にしていました(笑)。そういえば、2025年に放送した前作は米騒動の話だったんです。世の中で令和の米騒動が起きる前から予定されていた話だったので偶然ですが、時代劇って今に通じるものがちゃんとあるドラマなんですよね。だから、夫婦関係もまさにそうです(笑)。

ーー現代劇と時代劇で、芝居としての違いなど意識しているところはありますか?

水谷:特にはないですね。随分前のことですが、吉川監督がある俳優さんに「武士も家に帰ったらだらしない格好もするし、きっちり喋っていないはず。そういう世界を描きたいから、型を作ってやらなくていい」というようなことをおっしゃっていたんです。そういう部分を大事にしてくださるので、僕自身には“時代劇だから”という意識は全くないです。ただ、ここ(松竹撮影所)へ来るたびに身についていくものはあります。余談ですが、お亡くなりになった有名な殺陣師の上野(隆三)さんが、若い俳優さんの歩き方が気になったようで、「おい!コンビニの帰りじゃないんだぞ!」と指摘されていて(笑)。

檀:ふふふ(笑)。

水谷:「そういう教え方があるんだな」と思いました。時代劇を体で感じられるように何かをしてくださる、京都ならではの場所ですね。書かなくていいですよ(笑)。

檀:「おい!コンビニの帰りじゃないんだぞ!」って見出しになっちゃいますね(笑)。

取材・構成・文=戸塚安友奈

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