サッカー元日本代表の本田圭佑さんが6月23日、自身のXに「日本中の経営者の皆さん、すみません。出勤時間の調整を宜しくお願い致します」と投稿した。
ワールドカップ北中米大会1次リーグF組の日本対スウェーデン戦が、日本時間6月26日午前8時にキックオフ。3大会連続の決勝トーナメント進出がかかる大一番は、多くの会社の始業時間と重なる。
「リアルタイムで応援したい」というファンの思いを代弁した本田さんの呼びかけは、大きな反響を呼び、「うちの会社も遅らせてほしい」といった声がSNSに相次いだ。
なかには、「午前は在宅勤務、午後から出社」とする対応を公表した会社もある。
では、ワールドカップ観戦を理由に従業員が始業時間を遅らせてほしいと申し出た場合、会社は応じる義務があるのだろうか。労働問題にくわしい今井俊裕弁護士に聞いた。
●始業時間を遅くするのは自由…トラブルに注意
会社が始業時間を遅らせること自体は自由です。しかし、従業員からの申し出に応じる法的義務まではありません。
個別に認めるかどうかは会社の判断ですが、注意しなければいけないのは、のちのちの運用です。
たとえば後日、別の従業員が異なる私的な理由で始業時間の繰り下げを申し出た際、それを認めなければ、「不公平な扱いではないか」と不満やトラブルにつながるかもしれませんね。
会社として柔軟な対応をとるのであれば、その判断に合理的な理由付けが必要になってきます。
●有給休暇やフレックス制の利用も
あらかじめ試合日がわかっているので、従業員は有給休暇を申請して観戦するという方法もあります。
もっとも、同じ日に多くの従業員が一斉に有給を申請すれば、業務に支障が生じてしまうこともありえます。
その場合は、早い者順に有給を認めたり、抽選で調整したりするなど、会社として公平な運用を検討せざるをえないかもしれませんね。
また、フレックスタイム制を導入している職場であれば、コアタイムに間に合う範囲で始業時間を従業員自身が調整できます。ワールドカップをリアルタイムで観戦したい人にとっては便利な制度といえます。
ただし、フレックスタイム制の導入には、就業規則の整備や労使協定の締結など、あらかじめ必要な手続きを済ませておく必要があります。
個別に始業を遅らせると不公平感が生まれかねない以上、本田さんが「経営者の皆さん」へ呼びかけたのは、案外的を射ているのかもしれません。ルールを整えたうえで、職場みんなで日本代表に声援を送れる朝になれば理想的です。
【取材協力弁護士】
今井 俊裕(いまい・としひろ)弁護士
1999年弁護士登録。労働(使用者側)、会社法、不動産関連事件の取扱い多数。具体的かつ戦略的な方針提示がモットー。行政における、開発審査会の委員、感染症診査協議会の委員を歴任。
事務所名:今井法律事務所
事務所URL:http://www.imai-lawoffice.jp/index.html

