
コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョンマンガ部」。今回は、『なりそこないの粒』を紹介する。作者の日暮ずむさんが、5月18日にX(旧Twitter)に本作を投稿したところ、6000件を超える「いいね」やコメントが多数寄せられた。本記事では、『神の児』(ホーム社刊)の作者としても知られる、日暮ずむさんにインタビューを行い、創作の裏側やこだわりについて語ってもらった。
■夏は元気になり冬は元気がなくなる理由

ある夏の日、生ごみの袋がしっかり閉まっておらず「最悪だ…」と言う弟と「あらほんと」と少しゆったりした口調の姉がいた。その日は海に行きたくなるほど暑い日だ。少しでもこの暑さを凌ごうと、飲み物を冷蔵庫から取り出そうとした弟。そこで、サイダーが減っていることに気が付く。
「姉ちゃんだろ」と言う弟に対し姉は「おいしくて…」と認める。姉は突然「生きものって…あたたかくなると元気になる」と言い出した。次いで、寒いと元気がなくなると言う。その理由は「冷たい深海の一粒だったことを思い出すから」だ。そんな姉に対し、弟は「それなのに姉ちゃんは海行きたい?」と聞いたところ…。
このエピソードを読んだ人たちからは、「表現が頭から離れない」「“一粒”という言葉が美しく感じる」「すごく良い」「BGMが聞こえてくる」など、多くのコメントが寄せられている。
■作者・日暮ずむさん「胸にすっと落ちるような、ふとした時に思い出すようなセリフが書けたら」

――本作を創作したきっかけや理由があればお教えください。
「人類の祖先、最初の生命は海から生まれた」というお話が好きで制作いたしました。また、幼い頃に母から水子供養に関するお話を聞かせてもらったことがあり、「水子」という言葉が今でもとても印象深く心に残っています。このふたつの事柄を概念的に織り合わせるような形で描かせていただきました。太古の海の中で生まれた最初の生命と、羊水の中で形づくられていく生命に、近しさを感じているのだと思います。
――本作の「あたし海の一粒よ」と言うセリフに美しくも儚い印象を抱きました。セリフを考える上で大切にしていることがありましたらお教えください。
ここぞという場面では簡潔で力強い言葉を使えるように、と意識しています。ご覧いただいている方の胸にすっと落ちるような、ふとした時に思い出すようなセリフが書けたらうれしいなと……!言葉の意味のわかりやすさ、よりも、印象強さを優先しているかもしれません。
――普段作品のストーリーはどのようなところから着想を得ているのでしょうか?
好きなものがたくさんあるのですが、好きなものについて考えているうちに「この“好き”は自分の手で形にして残しておかないと落ち着かないかも……」と思った時に作品にすることが多いです。
今作でたとえるなら、海や水と生命について表現した素敵な作品はこの世界にたくさんたくさん存在すると思うのですが、ただ平凡な「姉弟の日常」に落とし込んで白昼夢のような味わいで描きたい、と思えたから生まれたのだと思います。夏場に行われそうなやり取りが自然と思いついたのもあるかなと思いますね……!夏という季節のこともだいすきです。
――日暮ずむさんの作品は、心が揺さぶられる作風が多いように感じます。作画や構成でのこだわりや、意識していることはありますか?
じつは、自分の考える言葉やストーリーは気に入ることも多いのですが、絵についてはすこぶる自信がなく……。なのであくまで「お話」がメインになるように、セリフの読みやすいテンポ感や文章量、それを邪魔しない絵の入れかたを主に意識しているかもしれません。
そのため「作画で魅せたい」という場面は少ないのですが、そのぶん「ここは絵の見え方にこだわりたい!」というところはしっかりお心に届くものが描けるようにと努めています。
――今後挑戦してみたいジャンルやテーマがありましたらお教えください。
どうしても生きているうちに形にしておきたいお話があるのですが、内容が結構センシティブなので、世情を鑑みて……いつどのように描こう……とのんびり置いている状態だったりします。育児ものです。
――作品を楽しみにしている読者へメッセージをお願いします!
拙作をご覧くださる方、お言葉をくださる方に本当にいつも救われています……!本当はいつもおひとりおひとりにお菓子を配り歩きたいくらいなのですが、それはさすがに不可能なので、あなたの生活の中の何かひとつ「なくても困らないけど、あると素敵な気持ちになれるもの」になれたらいいなと思っています。これからも、少しでもお心に響くものをお届けできるようにがんばります……!

