IgA腎症という病名には、「IgA」という免疫物質が深く関わっています。IgA(免疫グロブリンA)は本来、身体を守るために働く抗体の一種ですが、その構造に異常が生じることで腎臓の糸球体に炎症が起きることがあります。なぜIgAが腎臓に影響を与えるのか、その仕組みをわかりやすくお伝えします。

監修医師:
田中 茂(医師)
専門は内科学・腎臓内科・血液透析・腹膜透析・臨床疫学・生物統計学
IgA腎症の原因②|遺伝・生活環境・その他のリスク要因
IgA腎症の発症には、免疫の異常だけでなく、遺伝的な体質や生活環境など、複数の要因が関わっていると考えられています。このセクションでは、IgA腎症のリスクに関わるさまざまな背景について詳しく説明します。
遺伝的要因と発症リスクの関係
IgA腎症は、特定の家族内で複数の方が発症することがあり、遺伝的な要因が発症に関わっている可能性が指摘されています。特に、IgAの糖鎖構造の異常は遺伝的な傾向があるとされており、家族に同じ病気の方がいる場合は、自分自身の腎臓の状態にも注意が必要です。
ただし、遺伝的な素因があるからといって必ず発症するわけではなく、環境要因や免疫の状態との相互作用によって発症するかどうかが決まると考えられています。遺伝と環境が複雑に絡み合う疾患であるため、家族歴がある場合は定期的な尿検査を習慣にしておくことが望まれます。
日本は世界的に見てもIgA腎症の患者さんが多いとされており、アジア系の人々における発症率が高い傾向があるという報告もあります。この背景には遺伝的な素因が関係していると考えられており、日本において慢性腎臓病の原因疾患として重要な位置を占めています。
生活習慣・食事・飲酒との関連
IgA腎症の発症や進行には、生活習慣も一定の影響を与えると考えられています。塩分の過剰摂取に気をつけるとともに、たんぱく質については過剰摂取や極端な制限を避け、病状(ステージ)に応じた適切な量を守ることが推奨されています。
飲酒については、アルコールが腎臓に直接的なダメージを与えるという証拠は現時点では明確ではありませんが、過度な飲酒は血圧の上昇や免疫機能への影響を通じて間接的に腎臓の状態に影響を及ぼす可能性があります。IgA腎症と診断された場合は、主治医に適切な飲酒量について確認しておくことが大切です。
また、肥満も腎臓への負担を増やす要因として知られており、適切な体重管理が腎機能の維持に役立つとされています。日常生活での食事管理や適度な運動といった生活習慣の見直しは、薬物療法と並行して取り組むべき重要な要素です。
その他のリスク要因|感染症・扁桃との関連
すでに触れたように、上気道感染(かぜ・扁桃炎など)はIgA腎症を悪化させる要因として広く知られています。特に扁桃炎を繰り返す方では、腎臓への影響が蓄積されやすいとされており、扁桃の健康状態を管理することがIgA腎症の経過にも影響します。
慢性的に扁桃が炎症を起こしやすい体質の方は、耳鼻咽喉科での評価を受けたうえで、扁桃摘出術の適否について検討することがあります。この手術とステロイドを組み合わせた治療が、血尿や尿たんぱくの改善に効果を示す場合があることが知られています。
また、口腔(こうくう)内の細菌感染や腸内環境の乱れが、IgAの異常産生に関与している可能性も研究されています。口腔ケアや腸内環境の管理が間接的に腎臓の健康に影響を与えるという視点は、治療の多角的な取り組みを考えるうえで参考になるものです。感染予防を意識した生活を送ることが、IgA腎症の管理においても意味を持ちます。
まとめ
IgA腎症は、初期の段階では自覚症状がほとんどなく、健康診断で初めて発見されることが多い疾患です。免疫の異常によって腎臓の糸球体に炎症が生じ、放置すると腎機能が低下するリスクがありますが、早期に発見して適切な治療を続けることで、腎機能を長期間にわたって維持できる可能性があります。治療費については保険診療の範囲内で対応できることが多く、指定難病制度や高額療養費制度などの支援を活用することで、経済的な負担を軽減できます。気になる症状や尿検査の異常がある場合は、まず腎臓内科への受診を検討してみてください。一人で悩まず、専門の医師に相談することが、早期発見・早期対応への確かな一歩です。
参考文献
難病情報センター「IgA腎症(指定難病66)」
日本腎臓学会「IgA 腎症診療ガイドライン 2020」
日本腎臓学会「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023」
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