「プリオン病」という病気をご存知でしょうか。聞き慣れない病名かもしれません。この病気は脳のとあるタンパク質が原因で起こると言われています。
しかし、未だにどのようなメカニズムで発病するのかがわかっていない特殊な病気です。現代においても解明できていない難病のひとつといえます。
周囲の人がプリオン病にかかったらどうしたら良いのでしょうか。今回は、プリオン病の検査について紹介します。
※この記事はメディカルドックにて『「プリオン病」とは?症状・原因・治療法も併せて解説!【医師監修】』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。
プリオン病の受診・検査

プリオン病を疑う症状が出た場合は何科を受診したら良いですか?
基本的には神経内科が適しています。ただし、プリオン病の診断は困難とされています。
なぜかというと、孤発性クロイツフェルト・ヤコブ病であった場合は多くが高齢者となるので、認知症が疑われるケースが多いからです。
認知症ではミオクローヌスや視覚異常が起こることがあまりないため、ミオクローヌスが疑われた場合は病型から診断します。
プリオン病の診断ではどのような検査をしますか?
プリオン病が疑われた場合、脳波検査・MRIや髄液・血液検査を行います。
髄液検査では神経細胞の破壊によって髄液に流出した特定のタンパク質の量を測定します。ただし、特定タンパク質の増加は他の神経疾患でもみられるのでプリオン病が確定診断されるわけではありません。
もう一つの血液検査では、白血球を検査します。白血球でプリオン蛋白遺伝子検査を行い、遺伝性プリオン病であるかどうかを診断するのです。
ただし、孤発性クロイツフェルト・ヤコブ病をはじめとしたプリオン病は、生前での確定診断が困難とされています。なぜかというと、原因となる異常プリオンが脳にあるからです。
死後解剖を行い、脳組織を病理学的見地から診断することで初めて確定診断されます。
プリオン病の進行スピードは早いのでしょうか?
ほとんどの場合は進行スピードが早いです。発症数ヶ月から半年ほどで寝たきりとなります。
寝たきりとなった後は身体機能の低下で呼吸麻痺となり、その後肺炎などが原因で死に至ります。
編集部まとめ

プリオン病は難病に指定されています。治療法や治療薬がなく、現代においても原因を特定することも難しい病気のひとつです。ただし、メカニズムは判明しています。
異常プリオンが脳の神経細胞を壊すことで、さまざまな身体異常や認知機能の低下を引き起こす病気です。
発病のうち7割は、異常プリオンの発生原因がわからない孤発性クロイツフェルト・ヤコブ病と診断されます。残りの3割は遺伝性プリオン病か獲得性プリオン病です。
遺伝性プリオン病は、異常プリオンを作り出す遺伝子を遺伝したことで起こります。獲得性プリオン病の原因は異常プリオンに汚染された組織を摂取・移植することです。
症状としては認知症に似た症状と同時に、ミオクローヌスや視覚異常が起こります。症状が進行すると半年ほどで寝たきりとなり、1年から2年ほどで全身衰弱により死に至ります。
ほとんどが発症から1年ほどで死亡してしまうため、診断された場合の患者さん・ご家族ともに心理的ショックが大きい病気です。
カウンセリングなどで心理的不安に向き合う治療も行う必要があります。患者さんへのサポートと同時に、ご家族や周囲の方へのサポートも必要な病気です。
もし身近な方がプリオン病に罹患してしまった場合、必ず一人で悩まず、カウンセラーや心療内科などを受診しましょう。
参考文献
プリオン病(1)クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)(指定難病23)|難病情報センター
プリオン病(1)クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)(指定難病23)|難病情報センター
人類が経験したもっとも悲惨な病気の1つ「プリオン病」の実態|Medical Note

