現在、施設に入所している80代後半の父。2010年に初期のアルツハイマー型認知症と診断され、進行を遅らせる薬を服用し、デイサービス(利用者が自宅で自立した日常生活を送れるよう、食事や入浴などの支援が中心の介護サービス)を利用しながら在宅介護をしてきました。発症から10年たった2020年、アルツハイマー型認知症は確実に進行し、しかもコロナ禍の影響でデイサービスの利用もままならず、新たに訪問看護を利用することとなりました。
ゆっくりと着実に進んでいたアルツハイマー型認知症
父は2012年ごろから足腰に強い痛みを訴え、脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう:背骨の中を通る脊柱管と呼ばれる神経の通り道が狭くなり、神経が圧迫される病気)と診断され、2014年3月に手術を受けました。手術は無事に成功し、その後数年間は自力で歩行ができデイサービスにも元気に通うことができました。
しかし、2018年ごろから同じことを何度も繰り返し聞く、知り合いに会っても誰なのかがわからないなど記憶力の低下が次第に強くなりました。同時に口数が減り表情も乏しく、楽しみにしていたデイサービスへ行くことを拒み、他者に対する攻撃性(暴言と思われるような発言)が見られるようになりました。
また父自身から、「眠れないのがつらい。あと頭痛がして物がダブって見える。体が思うように動かない」などの訴えもあり、担当のケアマネジャーさんと相談し2019年3月に総合病院の脳外科を受診しMRIを受けました。
診察結果は「脳の萎縮が進んでおり、アルツハイマーが進行しています。進行レベルを4段階に分けると3段階に入ろうとしている状態です。また頭痛や物の見え方については脳梗塞(のうこうそく)などの問題はなく、精神的なものであると思われるので認知症専門外来の受診をおすすめします」と言われ、認知症専門外来のある精神科を受診することになりました。
ケアマネジャーからのアドバイス
初診時に認知症のテストをおこない、家族からこれまでの経過を説明すると「アルツハイマーが進行していることは間違いありません。それとうつの傾向が見られますね」とのこと。「まずは、眠れないのはつらいですよね。昼夜逆転にならないよう生活リズムを整えることも大切ですから夜きちんと眠れるようにしましょう」と効き目の軽い睡眠導入剤が処方され、その後、様子を見てうつ傾向の対策を考えることになりました。
数カ月が経過し、睡眠リズムはだんだんと整ってきたようですが、それまでほぼ問題なく自分でできていた身の回りのこと(着替え、食事、入浴、排せつ)に今までよりかなり時間がかかるようになり、内容によっては一部の介助が必要となってきました。そしてうつ状態に関しては不安が強いときに服用するようにと頓服(とんぷく)が出されるようになりました。
ケアマネジャーさんからは「今後は身体機能も徐々に衰えていくことになります。特に考えておくべきは、歩行ができなくなったときのことです。そのときになって慌てるのではなく今から対策を考える必要があります」とのお話がありました。
このときは、まさか「そのとき」がその後すぐに訪れるなど予想もしていませんでした。

