いずれは「GOTOGIN」で本場イギリスに進出したい
小竹:「GOTOGIN」の売り上げの一部を、ある目的のために貯めているそうですね?
鬼頭:半泊は限界集落を超えているくらいに人の少ないところで、当時は5世帯7人しかいないところでした。昔から住んでいる方は3世帯3人しかいなくて、半泊に築103年の唯一の教会があるのですが、そこの信者さんはその3人のうちの1人で、1人しかいない教会だったんです。
小竹:うんうん。
鬼頭:半泊という場所を表現するときに、教会や潜伏キリシタンの方は切っても切り離せません。私たちも「GOTOGIN」のコンセプトで表現させていただいているので、その恩返しがしたかったんです。教会は信者がいなくなると教会ではなくなってしまい、維持管理する必要もなくなってしまう。だから、教会を維持管理するために協力させていただこうということで、収益から一定のお金をプールしています。
小竹:島に住むようになって、暮らし面も変わられたそうですね?
鬼頭:3人で最初に決めたのは、残業はやめようということ。会社を辞めて3人でやりたいことをやろうという意気込みで始めた事業なので、無理はやめる。でも、無理するときもあるんですけどね。
小竹:観光客の方たちが「GOTOGIN」を買いに蒸溜所を訪れたりもしていますよね?
鬼頭:非常にうれしいことですね。私たちもこの事業を始めるときに、ストーリーと味を楽しんだお客様に実際に蒸溜所に来てもらい、現地を感じてから味わっていただくというのが目標だったので、国内のお客様に関しては、結構その目標に近いような状態になっていてありがたいです。
小竹:今後の展望としては海外進出もある?
鬼頭:最初から、いずれは本場イギリスの方々を中心に、ヨーロッパの方々にも「GOTOGIN」を楽しんでいただきたいというのが最終目標としてあります。そして、半泊に来ていただきたいですね。
小竹:お話を聞いていると、すぐにイギリスに行けそうな感じがしますが…。
鬼頭:なかなか難しいと思います。どうやって海外での販売経路を確保して品物を届けるかという点と、「GOTOGIN」の味や香りの設計が、ロンドンドライジンというイギリスの伝統的な作り方と若干違う点がネックですね。
小竹:そうなのですね。
鬼頭:ロンドンドライジンは非常に辛くて、ボディー感が高くて、カッとくる味わいです。ニュートラルアルコールという味のないアルコールをおいしく飲むために、イギリスの産業革命のときに労働者の方々が飲みやすいようにと開発されたお酒なので、そういった味わいなんです。その後、それがアメリカに渡って、飲みやすくするためにカクテルの割り材になった。そこから進化していないというか、飲まれ方が変わっていないんです。
小竹:なるほど。
鬼頭:特にイギリスでは、昔のロンドンドライジンの香味がジンの味だと思われている方が今でも多い。でも、私たちのコンセプトは、とげとげしさがなくて、じっくりとそのままの味を味わってくださいという作り方をしている。そういった作り方をしていると、ジンというカテゴリーではたぶん評価の対象に入ってこない。そこをどううまく整合性を取って現地の方々に理解していただくかというのは、1つ大きな課題ですね。
小竹:ジンでイギリスで勝負したいという気持ちがあるということですよね?
鬼頭:特に社長の門田はそこにこだわっていますね。私はこの味だと苦労するだろうなと感じていますが…。ただ、お客さんの中には「GOTOGIN」の香味や飲み方に共感していただく方も絶対たくさんいると思う。だから、そういった方々にどうやってアプローチするかというのが大きなポイントかなと思っていますね。
小竹:日本のお酒が好きな方は、海外にはたくさんいらっしゃいますからね。
鬼頭:イギリスにはいろいろなウイスキーがある中で、フルーティーで柔らかくて口当たりがいい日本のウイスキーの評価は高い。だから、「GOTOGIN」を評価してくれる方もある一定数以上はいるのではないかと感じています。
(TEXT:山田周平)
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【ゲスト】
第44回・第45回(9月19日・26日配信) 鬼頭英明さん
大学院修了後、32年間、酒類メーカーでウイスキーのブレンド及び原酒開発を中心にスピリッツ、リキュールなど洋酒全般、焼酎、ワインなどの中味開発に従事。数々のヒット商品の中味を開発(ボストンクラブ淡麗原酒、エバモア21年、富士山麓、杏露酒シリーズ、キリン氷結シリーズ、キリンフリー、キリンビターズなど)。 現在は仲間と設立した株式会社五島つばき蒸溜所にてジンの原酒開発、ブレンド(香味)開発をはじめ製造全般を担当する一方で、新興のウイスキーやジンの蒸溜所の支援も行っている。 モットーは「商品を通じてお客様の幸せに貢献すること」
五島つばき蒸溜所公式HP
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クックパッド株式会社 小竹 貴子
クックパッド社員/初代編集長/料理愛好家。
趣味は料理🍳仕事も料理。著書『ちょっとの丸暗記で外食レベルのごはんになる』『時間があっても、ごはん作りはしんどい』(日経BP社)など。
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