夫の俊は、あすかの感情を理解し「実親とでも縁を切っていい」と断絶を支持します。壮太のために我慢するより、あすかの笑顔が大切だと助言してくれました。俊の言葉に救われたあすかは、自分の心を守り、無理のないペースで新しい生活を築く決意を固めます。
止まらない涙と夫の提案
その夜は夫の俊に、今日の出来事を全部話しました。床に座り込んで、しゃくり上げながら、母に言われたこと、今までのこと、壮太のこと、全部。俊は何も言わずに、ただ私の背中をさすってくれました。
しばらくして、私が落ち着いたのを見て、俊は静かに話し始めた。
「あすか」
「…うん」
「俺は、今はお母さんと縁を切っていいと思う」
その言葉を聞いた瞬間、私の心の中に、一筋の光が差した気がした。誰かに「いいよ」と言ってもらいたかったんだ、と初めて気づいた。
「周りには理解してもらえないかもしれない。親なんだからとか、助けてもらった恩があるだろって。でも、あすかが本当に大事にしたい価値観とか、家族みんなを大切にしてくれる人を大切にした方が幸せじゃないか?」
自分の心を守るため
俊は、私がずっと抱えていた罪悪感を、一瞬で溶かしてくれた。
「壮太は、おばあちゃんがいなくて寂しがるかもしれない。でも、本当に可哀想なのは、毎日おばあちゃんの顔色を伺って、自分の気持ちを押し殺しているママを見ることだと思う。壮太にとっても、もちろん俺にとっても笑顔のあすかが一番大事だよ」
「…」
「それで、時々連絡をしてみたり、無理のないペースで、付き合っていくのはどう?向こうが距離を置きたいと言ったんだから、しばらくはそうしてみよう。仕事も、何か他を探して…。保育園が決まるまでしなくてもいいから」
俊は「完全に断絶する」という極端な方法ではなく、「無理のないペースで距離を置く」という、私たちにとって一番現実的で、法的に、社会的にも軋轢を生みにくい解決方法を提案してくれた。
「社交辞令的でいいから、母の日とか、少しプレゼントを送ったりしてあげるだけでもいいんだよ。自分の心を守るために。」

