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津波は自然災害の中でも被害規模が大きく、一瞬で私たちの暮らしや生命が奪われてしまいます。
津波に対しては国や自治体でさまざまな防災対策が行われており、その一つに津波災害警戒区域・特別警戒区域の設定があります。
この記事では、11月5日の世界津波の日に合わせて、近年の具体的な津波被害や今後想定されるリスク、津波災害警戒区域・津波災害特別警戒区域について解説します。
11月5日は世界津波の日
世界津波の日は、1854年(安政元年)11月5日に発生した「安政南海地震(M8.4)」の際に発生した津波が由来です。
津波が和歌山県内を襲った際に、稲に火をつけ暗闇の中で逃げ遅れていた人たちを高台に避難させ、命を救った濱口梧陵(はまぐち・ごりょう)の逸話にちなみ、定められました。
世界津波の日を迎えるにあたって防災意識を高めるため、まずは最近の津波の事例について紹介します。
最近の事例【1】2024年能登半島地震
2024年1月1日に、能登半島でマグニチュード7.6、最大震度7を記録する大地震が発生しました。
この地震により沿岸部では津波が発生し、石川県の珠洲市や能登町を中心に津波の高さが4m以上に達し、家屋倒壊や人的被害が発生しました。
最近の事例【2】2025年カムチャツカ半島沖地震
2025年7月30日に、ロシア・カムチャツカ半島沖の太平洋沿岸でマグニチュード8.8の巨大地震が発生しました。
この地震により津波が発生し、日本の北海道から九州地方の太平洋側まで広範囲に津波警報や津波注意報が発令されました。この津波により、岩手県久慈港では最大1.4mの津波を観測。北海道・三重県・宮崎県で人的被害も発生しました。
今後発生が見込まれる津波を伴う大型地震
今後発生が見込まれる津波を伴う大型地震として、「南海トラフ巨大地震」や「日本海溝・千島海溝周辺の海溝型地震」が挙げられます。
南海トラフ巨大地震では、関東地方から九州地方にかけての太平洋沿岸の広い地域に10mを超える大津波が予想されており、高知県の土佐清水市や黒潮町は全国最大の最大34mの津波が想定されています。
また、日本海溝・千島海溝周辺の海溝型地震においても、日本海溝沿いでは岩手県宮古市で最大30m、千島海溝沿いでは北海道えりも町や釧路町で最大28mの津波が想定されています。
いずれも甚大な建物や人的被害が想定されており、そしてこれらの巨大地震や津波はいつ発生してもおかしくない状況にあります。
数十cmの小さな津波にも要注意
津波はただの波ではなく、海底から海水全体が一つの塊となって陸地に押し寄せます。
高さ20cm~30cmの津波でも、人は速い流れに巻き込まれるおそれがあります。内閣府が分析した浸水深に応じた死者率では、津波に巻き込まれた場合に津波浸水深30cm以上で死亡者が発生、津波浸水深1mでは死者率100%に達するとされています。
このため、予想されている津波が数十cmの場合でも迅速な避難行動が必要です。
