上村裕香『海の底に雨は降らない』- 過酷なヤングケアラーだった過去から、新たな人生へ一歩を踏み出す少女の、心に深く残る軌跡|アルパカ内田,コグマ部長

上村裕香『海の底に雨は降らない』- 過酷なヤングケアラーだった過去から、新たな人生へ一歩を踏み出す少女の、心に深く残る軌跡|アルパカ内田,コグマ部長

本読みのアルパカ内田さんと、幻冬舎作品を誰より愛する営業部のコグマ部長。

2人が、幻冬舎の新刊の中からお気に入りを選んで、おススメしあう、本コーナー!

今月のコグマ部長のおすすめはこちら。

(あわせて、アルパカさんがコグマさんにおススメした作品についても、お楽しみください)

【幻冬舎営業部 コグマ部長から、
アルパカ内田さんへオススメ返し】
上村裕香『海の底に雨は降らない』

幼少期から北九州市の自宅で難病の母親をほぼ一人で介護してきた光莉。彼女は母の自殺を幇助した疑いで逮捕され、執行猶予付きの有罪判決を受けてしまう。拘置所を出たあとは、叔母に引き取られて上京し、作家の日比谷と出会う。

一方、こちらは気鋭の著者による初の長編小説。

物語は二十歳になる光莉が拘置支所から出てくるところから始まる。光莉は母親の自殺を幇助した罪で執行猶予付きの判決を下されたばかり。彼女は小学生のころから難病の母親を北九州の自宅で一人で介護したヤングケアラーだった。著者はその日常を容赦なく描き切っている。掃除、洗濯、料理に加え、母親の排泄と入浴の介助、当然修学旅行は休まざるを得なかった。高校は家事や介護との両立のために通信制を選択したが、就職は介護のために諦め、結果苦しい生活を強いられた。まさに過酷な日々。そして、判決後、光莉は叔母に引き取られて上京し、介護福祉施設に就職。やがてひょんなことで売れっ子女性作家の日比谷に会い、体験を小説にするよう勧められる。いよいよ、新しい人生が……光莉は失われた時間を取り戻せるのか?

光莉が陥った出口のない世界。それを第三者が「どこかに相談すれば解決できたのに」、と断ずるのは勝手すぎる。幼い光莉は選択肢があることすら知らなかった。本作に書かれていることはけっして対岸の火事とか、どこかの家の物語では済まされない切実さが胸に迫る。

そう、光莉は自分だったかもしれない。読後、彼女にそっと寄り添っている自分がいることに気づくはずだ。重い内容だが、確実に心に残る小説を読んだ満足感に浸っている。

配信元: 幻冬舎plus

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