甦るカミーユ・クローデル――死後の再評価と現代への影響
長い沈黙ののち、クローデルに再び光が当たり始めたのは20世紀の終わりでした。1980年代、フランスや日本で相次いで展覧会が開催され、忘れ去られていた作品群が一堂に並んだのです。力強さと繊細さを兼ね備えたその造形は、改めて多くの人に衝撃を与えました。
そして1988年、映画『カミーユ・クローデル』(主演イザベル・アジャーニ)が公開されると、その名は一気に世界的に知られるようになります。単なる「ロダンの愛人」ではなく、一人の芸術家としてのクローデルの姿がスクリーンを通して描かれ、観客の心を揺さぶりました。
再評価の流れは21世紀に入っても続きます。2017年には彼女の故郷ノジャン=シュル=セーヌに「カミーユ・クローデル美術館」が開館。現存する約300点の作品が集められ、来館者は彼女の歩みと独自の芸術世界を間近に体感できるようになりました。
さらに近年では、100年ものあいだ所在不明だった《分別盛り》のブロンズがパリの廃墟から発見されるなど、驚きのニュースも相次いでいます。まるでクローデル自身が時を超えて現代に語りかけているかのようです。
こうして彼女は、悲劇の影から抜け出し、革新的な女性彫刻家としての存在感を取り戻しました。
まとめ
「ロダンの愛人」──そんな言葉で語られることの多かったカミーユ・クローデル。30年の沈黙を経ても、彼女の造形は失われることなく現代に甦りました。
「芸術と詩だけが、人生で価値あるもの」
という言葉を残したクローデルは、一体、彫刻で何を表現し、何を伝えたかったのでしょうか。作品写真や図録を通してでも、その情熱のかたちを感じてみてください。
カミーユ・クローデルに会える美術館
クローデルの作品は、フランスに集中していますが、国内で原作を所蔵している例として、東京・国立西洋美術館の《ペルセウスとゴルゴーン》が挙げられます。また、静岡県立美術館はクローデルの《波》の複製を所蔵しています。ここでは、フランスの美術館をご紹介します。
カミーユ・クローデル美術館(ノジャン=シュル=セーヌ)
2017年に開館。世界最大のクローデル作品コレクションを所蔵しています。
ロダン美術館(パリ)
ロダンとともに展示されるクローデル作品から、二人の関係を感じられます。
オルセー美術館(パリ)
《波》など、19世紀末の芸術潮流の中にクローデルを位置づける展示がされています。
