
TBS×U-NEXT×THE SEVENによるグローバルプロジェクト「ちるらん 新撰組鎮魂歌」。U-NEXTでは、「江戸青春篇」および「京都決戦篇」を全話独占配信中だ。5月9日からはアメリカをはじめ世界100以上の国と地域で「HBO Max」での配信もスタートし、のべ47カ国でトップ10にランクインするなど大ヒットを記録している。このほど、主演を務めた山田裕貴にインタビューを実施。前編となる今回は、反響に対する率直な思いやアクションの舞台裏、共演者とのエピソードなどについて語ってもらった。
■累計発行部数300万部超のコミックスを実写化
本作は、幕末の京都を舞台に、最強のサムライ集団・新撰組の志士たちの荒々しくも熱い生きざまを、ド派手なアクションと、史実に基づきながらも大胆な解釈で描いた累計発行部数300万部超の同名コミックス(原作:梅村真也、漫画:橋本エイジ/ゼノンコミックス)を実写化。
後に新選組副長となる土方歳三が近藤勇という“器”と出会い、沖田総司、斉藤一といった個性的な仲間たちと共に、歴史に名を刻む“新撰組”をいかにして作り上げていったのか。そして、激動の幕末を駆け抜けた若者たちの物語を、現代的かつ艶やかで魅力的なキャラクター造形と、史上最速とも評されるハイスピードな殺陣(たて)を交えて描く“ジャパニーズ・ソードアクション・エンターテインメント”だ。
主人公・土方を演じる山田の他、新撰組の志士役には、鈴木伸之、中村蒼、細田佳央太、上杉柊平、藤原季節、杉野遥亮、栁俊太郎、宮崎秋人、岩永ひひおらが集結。
また、土方の宿敵であり盟友の「人斬り以蔵」こと岡田以蔵を中島健人、土方らに立ちはだかる“最強で最凶の宿敵”芹沢鴨を綾野剛が演じる他、奥野瑛太、高橋光臣、金子ノブアキ、安藤政信、桜井ユキらが作品を盛り上げている。
■世界で見られている作品なのに盛り上がりが足りない?
――「ちるらん 新撰組鎮魂歌」がU-NEXTで現在もトップ10をキープしており、加えてHBO Maxでも配信され、世界中で話題となっているそうですが、そうした反響を受けての現在の心境はいかがですか?
反響は正直あまり分かっていなくて。森井(輝)プロデューサーから熱心に情報が送られてくることと、僕が気になって聞いたこともありますし、あとはドラマの公式アカウントが「世界第5位」とか発信してくださっているので、そこから情報を得ています。というくらい、「盛り上げてもらっているか?」と思っていて(笑)。
もちろん、たくさんの方が見てくださって楽しんでいただいてるからそういうことになっているとは思うんですけど、僕がその情報をどこで知ったのかと言えば公式アカウントだったので、もうちょっと日本のメディアも取り上げていただけたらうれしいなと思っているところなんです(笑)。配信もこれだけ広がっているのに。「のに」なので…。
自分たちも(動画配信サービス等で)血まなこになって自分たちの出演した作品を探すわけじゃないから、「それでも自然に届いてくるレベルにはなっていないのかな」っていうのは正直な気持ちで。だけど、結果としては出ているので、もうちょっと取り上げていただけたらなという気持ちもあります。
――周囲の反響という意味では、共演者の皆さんや親交のある俳優さんなどから何かお声がけされたことはありましたか?
「あ、そうだよね、『ちるらん』やってるもんね」とは言われているんですが、「あ、見ましたか?」なんてこちらからはなかなか聞けないので(笑)、見ていただいたかどうかまでは分からないんです。でも、「原作を読んでいた」という方はたくさんいて。中には妻夫木聡さんとか以前共演した方たちもそうですし、美容師さんとか、医学博士の人とか、「この人が読んでいるのは意外だな」と思った人もいたんです。
「ドラマはまだ見れていないんですけど、原作は知ってました」みたいな反応だったので、原作を楽しまれている方はたくさんいるんだなって改めて思いましたし、そういう方たちにこそ見ていただけたらいいなと思いました。
■「(武士の世の中も)今の時代とそんなに変わらないんじゃないか」
――本作の撮影などについてもいろいろと振り返らせていただければと思います。改めて本作で土方歳三演じるにあたっての役作りは、どのようなアプローチでされていったのでしょうか?
自分でも不思議だなと思うのですが、僕って「このタイミングで自分にこういう作品が来るんだな、こういう役柄をやるんだな」という“ご縁”のようなものがすごく多いんです。どの作品でも、「今の自分の心境とこんなにも重なるのか」と思うことが多くて、僕がたまたまそれを引き寄せているようなこともすごくあって。
なので役作りというよりは、自分が土方歳三を通して何を思っているかも気付かされるし、何なら「こういうことを言いたいんだ」ということも思うし。俳優人生において、「自分ではないはずなのに、自分のように思ってしまう」というか、そういったことが多いので。自分を追いながら、土方歳三を追うようにやっていました。
もちろん役作りで原作や台本を読むなんて当たり前ですし、アクションをやるのも当たり前なので、それを「役作り」とは思っていないのですが、「なんか自分の思いと重なるな」と思いながらやっていくうちに、「(武士の世の中も)今の時代とそんなに変わらないんじゃないか」という発見も見えてきました。やっていくとどんどん知る気持ちがあれば、自分で気付く気持ちもあって。
あとはやっぱり、ケンティー(中島健人)をはじめ本当にキャストの皆さん全員のおかげで(演じられた)。もちろん台本に書かれたことをやってはいるんですが、台本の持つ情報量が何万倍にもなって、自分たちの気持ちの中にあるという。それはみんなの意思を示し合わそうとしたわけではなく、そういう思いになっていられた現場だったんです。なので、役作りはみんなが作ってくれたなという感覚です。

■アクションシーンを重ねる中で見えてくる相手の“息”
――本作はやはりアクションシーンが大きな見どころとなった作品だと思います。山田さんは大河ドラマでも殺陣を経験されていて、その他の作品でも数々のアクションシーンを演じてこられたと思いますが、本作の大きな魅力である「ソードアクション」についてはいかがでしたか? その魅力や難しさを感じたところなどお聞かせください。
大河の時は槍だったので、刀は今回が初めてなんです。監督が判断したものが全てだと思うので、僕にとっては「OKが出てるものが正解」なんですが、難しさで言うなら「もっとこう動けたらいいのにな」とか「体の可動域が悪いから(うまく見せられない)」とか、そういった難しさは感じました。ただ、僕はアクションをアクションだと思っていないというか、あくまでアクションもお芝居だと思ってやっているんです。
どういうふうにアクションが変化していくかというのも、(アクション監督の)園村(健介)さんがちゃんと作ってくださっていましたし、自分たちがそのクオリティーに追いつくか追いつかないか、それ以上を弾き出せるかということでしかないので。
そこにお芝居も乗ってくれば、一斬りするにも意味を持って、そこに刀を出してるわけで。アクションのある作品をやるとやっぱりアクションの話を聞いていただくんですが、「アクションをアクションだと捉えていない」というのが全てで。
やっていけばやっていくほど、刀が出てくるタイミングが見えてくるんですよね。よく「(相手の動きが)スローで見える」なんて言いますけど、実際全部が「ああ、もう分かった」って体が反応するようになってくるんです。
もちろん本物の殺し合いだったらそうはいかないと思うのですが、そこが唯一アクションとして感じる場所かなと思います。相手の“息”が見えてくるというか。でも、「本物の武士たちもそうだったんじゃないか」と思えるところをひとかじりできたような感覚はありました。
つまりは熟練の達人にしか分からないような、「あ、今来る」っていう空気感みたいなものが自分たちで(分かるようになっていく)。もちろんアクションとして手順が決まっているものではあるけど、その一瞬の相手が動く刹那、瞬間に切りかかるとか、自分の中でもそういう感覚でやっているんです。
僕自身アクション部さんから「感覚派」とか「本能型だから」って言われるんです。「山田くんはもう計算しない方がいいんで、動いちゃってください」って言われてやっていました。
――それでちゃんと相手と息を合わせられるのはすごいですね。
そこは、アクション部の皆さんがそのスピード感でもちゃんとマッチするように、ロジカルに組み立ててくださっているというのが前提としてあるので、そこを信頼して全力でやるというのが僕らの役割というか。そこで僕らも計算してやってしまうと、ものすごくギミックっぽいアクションになっちゃって“生きた剣”には見えない。だから、僕は「アクション」として捉えていないんです。
アクションはアクション部さんが作ってくださるもので、僕らはあくまで剣を振るアクションをやっている人間だけど、(その人物になりきって剣を振る)お芝居をしているという、「今ここに刀が来たからしんどい、だからこっちに切り替えしたい」とか、(役柄の)気持ちを考えている感覚です。

■「大人になっていく土方の姿がだんだん悲しく見えるように」
――本作ではそれぞれのキャラクターごとに刀や戦い方のスタイルも大きく異なっていたのも印象的でした。土方のアクションについて、監督さんやアクション部の方から「こういうスタイルで」という方針や設定などはお伝えされましたか。
僕は別の作品で園村さんとご一緒したことがあって。アクション部さんって、監督が違っても別の現場で「もう何回顔を合わせているんだろう?」というくらい一緒になる方が多いんです。だから、僕のこともよく分かってくださっていて。それこそ、「HiGH&LOW」をやっていた頃から現場にいてくれた方が、「ちるらん」の現場にもいらっしゃったんです。
そんな方々が僕のアクション練習を見てくれていたのですが、僕は結構動きが荒いんです。「荒い」というのは「型が定まってない動き方をする」ということで、どのアクションをやる時も荒々しく見えてしまう自分の動き方の癖があって。
普通武士を演じるんだったら「どこの流派を通っていて」というのは大事な要素ですし、(実際に土方の剣術である)天然理心流という型があるので、「もうちょっときれいに見えた方がいい」って考えるところだと思うんです。
でも、今回の土方は“バラガキ”というところから、(試衛館に)入門して武士になっていくという過程があったので、最初に園村さんから「山田さんはカチッと固めないでください」と言われたんです。最初はそれをそのまま生かしつつ、頭突きや金的も交えたけんか殺法から、(高橋光臣演じる)平山五郎と戦う頃には(武士として)型になっている、という姿を見せていく流れをちゃんと作ってくださっていたので、そこに一番土方の成長が表れていました。
子どもの頃って、誰しもが泣きたい時に泣いて、笑いたい時に笑って、おもちゃで遊んでいたと思ったらポイッて放り投げて好きな場所に行くみたいな、そういう純粋で無垢で真っすぐな思いで生きていましたけど、大人になればなるほど、会社の中に属し、社会に属し、常識というものにとらわれて、その時代に合う生き方をしなくてはいけなくなっていく。要はみんな同じような生き方をしなければ「はみ出し者」や「はぐれ者」って呼ばれていくじゃないですか。そこに儚さや悲しさを込めたかったというか。
土方で言えば、最初は“バラガキ”として暴れ回っていたところから、以蔵という“友”と出会って、あの時はあんなに好きに殴り合えていたのに、いつからか自分は“武士”という社会の身分に属して(それができなくなり)、また自分が慕う将軍(松本潤演じる松平容保)にも出会って…という流れがありますが、この作品を深く読み取ってくれる方々に大人になっていく土方の姿がだんだん悲しく見えていったらいいなと思ってやっていました。

■共有していた「この作品、このメンバーで世界に羽ばたこう」という思い
――以前のインタビューなどを通して、近藤勇を中心とする「試衛館メンバー」の強い絆を感じました。そうした試衛館メンバーの皆さんとのシーンの中で、山田さんの中で特に印象的だったシーンや、撮影中の出来事などがありましたら教えてください。
僕はこれまで脇役を務める方が圧倒的に多かったので、自分が主演で作品をやらせてもらうことに対する「免疫」と「経験」がなさすぎて。そこについてきてくれる人がいるのかという不安が最初はあったんです。だけど、いざやってみたらみんなが僕を認めてくれて、その場を楽しんでくれていて。
鈴木伸之くんは「山田裕貴の代表作を作りたい」と望んでくれていたり、細田佳央太くんも「裕貴くんだったからやりたいって思ってる」と言ってくれたり、みんなの言葉にものすごく助けられたんです。それは先輩方も同様に、綾野剛さんもそうだし、松本潤さんも「裕貴(が主演)だったから出たんだからね」と話してくださりました。
そういったことってすごくありがたいですし、その分自分は期待に応えなきゃいけないし、実際にそれができていたのかどうかは分からないですけど、僕が一番願っていたのは、「この作品と出合い、出演したことでみんなにとってプラスになってほしい」という、そのことしか思っていなかったんです。
地上波でドラマスペシャルがある、U-NEXTで配信もある、世界配信もあるという作品で僕が真ん中でやっている以上は、もちろん皆さんすでに羽ばたいている方たちばかりですけど、「裕貴の作品に出たからよりジャンプアップできた」とか、「自分を知ってもらうきっかけになった」とか、そういう作品になることでしか僕は自分を満足させられないというか。
そうなったかどうかはまだ分からないですが、現場の空気としては確実にそうなっていたはずだし、みんながみんなを面白がっていたし、みんなから「この作品、このメンバーで世界に羽ばたこう」という思いが確実に見て取れました。今回はそれを一番に感じられるメンバーだったし、人間性や俳優としての実力も含めて、新撰組隊士みんなが素晴らしかったんだと思います。

――新撰組ゆかりの地である金戒光明寺など、京都や滋賀でのロケも大々的に行われていましたが、そうしたロケーションで実際にお芝居をやられてみて何か感じたことはありましたか?
本当に、作品において大事なものって俳優だけじゃないので。そこにある光と音とロケーション、そこに脚本があって…という総合芸術なので、僕らなんてその一部でしかないんです。今回はそれに大いに助けられましたし、何より「ここに(新撰組が)いたかもしれない」という場所にいられるだけで、自分たちが「新撰組であること」を強く思えたというか。
資料館に行って、歳三さんが使っていたかもしれないという刀を見たんですが、たとえ「かもしれない」であっても僕たちは(その人物に)なることはできないから、ちょっとだけでも近づきたいんです。(演じることに対して)自信を持ちたいというか。
置いてあった等身大パネルを見て「あ、こんな小っちゃいんだ土方歳三って」と思ったり、この人が剣の才に恵まれ、努力を重ねて、そして“最後の侍”であり“ファーストアーミー”と言える人になったんだって知ることができたり。顔(写真)からだとそれ以上のことは想像するしかできないですけど、そういう場所でみんなと撮影できたというのは、ものすごくありがたかったです。
あと、これは本当にお金をかけないとできなかったことだと思うので、本当に出資してくださった方々に感謝です(笑)。これはどんな作品をやっていても思います。非常にリアルな話なんですが、お金をかけて作品を作っていただけるということが、ものすごく大事だなというのを感じています。


