
コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、ありまさんが描く『うちの母は今日も大安』をピックアップ。
2024年6月に発売された本作は2025年9月に重版されたばかりで、多くの読者から反響を集めている。今回はありまさんにインタビューを行い、作品に込めた想いや重版が決まったときの感想について語ってもらった。
■著者のお母さんの行動力溢れる日々に、人生を楽しく生きるヒントがある

「自分の人生を生きること」を大切にして日々を過ごしているお母さん。その行動力やチャレンジ精神はいつも驚きの連続だ。そして、お母さんの言葉や行動から、著者のありまさんはたくさんの勇気をもらって生きてきた。
そんな明るく強く生きるお母さんの原点として、30年ほど前に家族でアメリカに住んでいた日々を描いたありまさん。慣れない異国の地で円滑なコミュニケーションもままならない中、お母さんは持ち前の行動力で様々な困難を明るく乗り切っていたのだ。
ある日の買い物帰り、スーパーの駐車場でお母さんの運転する車が外国人男性の車と衝突。車から出てきた男性は顔を真っ赤にして怒っているが、早口の英語で何を言っているか聞き取れなかった。そんな中、お母さんがスーパーの店員に助けを求め、男性の怒りを落ち着かせようとしたその時、一言だけ男性の言葉が聞き取れた。その言葉は「It’s my birthday!」。今日は男性の誕生日だと知ったお母さんは、その場で店員と「Happy Birthday to You」を歌ったのだ。すると、怒っていた男性は次第に落ち着きを取り戻し、最後には「Thank you‼」とお礼まで言って立ち去ったのだった。
他にも実践的な英語を身に付ける為、優しそうな外国人女性を探して家庭教師を依頼したこともある。その女性はお母さんの家庭教師をしたことがきっかけで、本格的に生徒をかかえて英語のレッスンをするまでになったのだった。
今回紹介しているアメリカでのエピソード以外にも、書籍にはお母さんが自分らしく毎日を過ごしながら周りの人も明るい気持ちにする話がたくさん収録されている。そんな本作には、読者から「自分の人生を大事にしよう」「今を生きる素晴らしさを思い出させてくれる本」などのコメントが多数寄せられている。
■作者・ありまさん「いくつでもどんな時でもやりたいことをやっていいんだ!」

――『うちの母は今日も大安』に込めた想いや、本作を通して伝えたいメッセージなどをお聞かせください。
どのエピソードも根っこにあるのが「自分の人生を生きる」というテーマです。私がはじめて描いた母の漫画は本作にも掲載している「好きなものをもっていきたい」(第7話)というエピソードなのですが、やはりこれを一番伝えたかったのだと思います。年齢を重ねたり、環境が変化する中で、自分の気持ちや夢を諦めたり挫けそうになったりする瞬間があったのですが、その度に母との会話がヒントになって、「いくつでもどんな時でもやりたいことをやっていいんだ!」と思い直すことができました。子育てに奮闘しているとき、介護が始まったときなど、人生の節目や迷いの中で何度も読み返したくなるような、作品になれたらと思いながら制作しました。
――本作は、ありまさんとお母さまとの思い出のほか、ご家族でアメリカに住んでいた時期(漫画創作当時から30年前)、ありまさんが幼い頃のお母さまの様子も描かれています。このエピソードは、漫画を創作するにあたり、お母さまからインタビューするような形でお話を聞いたのでしょうか?
はい。元々、小さい頃から「母のおもしろエピソード」として何度もせがんで話してもらっていたのですが、今回漫画を制作するにあたって、改めて電話やLINEでインタビューしました。アメリカで事故った話は、Googleマップで事故現場の駐車場を一緒に見ながら説明してもらいました。(30年経ってもお店がまだやっていることに感動!)家庭教師をスカウトした話も、ママ友にお願いしたのかと思っていたので詳しく話を聞いて「この話ってそういう流れだったの?!」という新発見もあり…ニヤニヤ笑いながら執筆していました。笑
――完成した書籍は、お母さまもご覧になったのでしょうか?差し支えなければ、お母さまの反応をお聞かせいただいてもよろしいでしょうか?
見本誌が届いてすぐ送ったので、最初の読者は母でした。プロローグでうるうるして、目次を見たところで泣いてくれたそうです。読み終わったあと「がんばったね。二重丸ではなまるです」「いい本ができたね」と言ってもらえて、その言葉でようやく自分でも「いい本になった」と自信を持つことができました。また、帯下にある刺繍にも気がついてくれて「隠れている刺繍が粋だね〜」と言ってくれて、細かいところまで見てくれたことが伝わってきて嬉しかったです。ちなみに見本誌が届いてすぐには読まず「現実味がないから一旦落ち着いてから読むね」と言って、まずは祖母と愛犬の仏壇に本をお供えし、お風呂に入って体を清めていたのは母らしいなと思わず笑ってしまいました。
――外国でも物怖じせず、行動力とコミュニケーション能力があるお母さまを尊敬してしまいます。ずっとお母さまを間近で見てきたありまさんの生き方や考え方にも素敵な影響があったのではないでしょうか?
ありがとうございます。「なにかに挑戦すること」はとても影響を受けたと思います。石橋をスキップして渡る母に対して、私はどちらかというと心配性で、石橋を叩いて観察するタイプ。新しいことを始める時はまず「失敗したらどうしよう…」と思ってしまいがちでした。でも色々なことに挑戦して、しかも楽しそうな母のおかげで、今では「失敗してもいいから飛び込んでみよう」と思えるようになってきました。刺繍作家になろうと決めた時も、この本の出版が決まった時も、最初はものすごく不安で…でも思い切って飛び込んでみると、想像以上に面白い世界が広がっていて、新しい出会いもあって…。もちろん失敗もたくさんしましたが、それも含めて人生が豊かになった気がしています。母の姿を見て、挑戦することの楽しさ、みたいなものを教えてもらったように思います。
また、小さい頃から母にはたくさん応援してもらってきたのですが、こうして何かに挑戦する時に手放しで力強く応援してくれる人がいる安心感はものすごくて、だから私も娘が何かに迷った時は全力で応援してあげたいなと思っています。なかなか難しいのですが…精進します笑
――昨年発売された本作は多くの反響を集め、読者からは「今を生きる素晴らしさを思い出させてくれる本」や「優しく背中を押してくれる本」など前向きな言葉が寄せられています。先日、重版もされましたが、反響への感想をお聞かせください。
母との会話や日々を描いた作品が誰かの心をふっと軽くしたり、あたたかくしたり…そんな作品になったことが、まだ実感が湧かないのですが、でもとてもうれしいです。この本をきっかけに「マラソンを始めた」「学生時代の習い事を再開した」というDMをいただくことがあって、挑戦したいなと思うだけではなく実際に行動にうつしている皆さんの姿に、私の方が逆に勇気とパワーをいただいています。そして、重版のお知らせをいただいた時は、心から嬉しかったです。描き下ろしの最終話を読んで完成する本だと自分では思っているので、こうしてたくさんの方に1冊を通して読んでいただけて、感謝の気持ちでいっぱいです。
――最後に、読者やファンの方へメッセージをお願いします。
SNSや書籍で読んでくださってありがとうございます!いただいたコメントやDM、お手紙は母と一緒に読んでいます。読者の皆さま、ファンの皆さまに幸あれ~!

