ある日、さとみさんが弟・りょうたのもとを逃げだした上で離婚を切り出したことで、激昂したりょうたから電話が。みちるは「姉の覚悟」を決め、モラハラをDVだと冷静に指摘し、カウンセリングを受けるよう説得。さとみさんはシェルターに保護されて、離婚への道が拓けました。
ついに弟と向き合うとき
さとみさんと会ってからしばらく経った、ある日の夕方。突然、携帯電話が鳴り響きました。着信画面には「りょうた」の文字。心臓が跳ね上がりましたが、覚悟を決めて電話に出ました。
電話口から聞こえてきたのは、わたしの知っている弟の声ではなく、激しく興奮し、理性を失ったような怒鳴り声でした。
「おい、みちる!お前だろ!お前がさとみをそそのかしたんだろうが!」
どうやら、さとみさんが家を飛び出し、離婚を切り出したようです。モラハラ加害者特有の思考回路で、彼は自分の行動が原因ではなく、わたしたちが「説得」したからだと決めつけているようでした。
「さとみが急にいなくなったと思ったら、電話で『もう疲れた。離婚したい』って。居場所も教えないなんて頭おかしいだろ?お前たちが変なこと吹き込んだんだろ!ふざけんなよ!」
以前のわたしなら、この怒鳴り声に怖気づき、言葉を失っていたでしょう。しかし、さとみさんの涙を見て、夫のなおやと話し合い、専門家の情報を手渡した時から、わたしは姉として、そして一人の大人として、彼と向き合う「覚悟」を決めていました。
深呼吸をし、落ち着いた声でりょうたに話しかけます。
モラハラ弟と対決
「りょうた、落ち着いて。誰もそそのかしてなんかいない。さとみさんが自分で決めたことだよ」
「嘘つくな!なんでお前がしゃしゃり出てくるんだよ!お前には関係ないだろ」
「関係ある。家族だからね。りょうたがしてるのは夫婦喧嘩なんかじゃない。モラハラと暴力、DVだよ」
「冗談じゃねえよ!あれは夫婦の愛情表現だろ!」
彼は激しく反論しましたが、わたしは冷静さを保ち続けました。
「愛情表現で相手を「精神病のくせに」って罵倒したり、財布やスマホを取り上げたりしないよね?りょうたは完全に間違えてる」
わたしは、彼が幼少期に負った心の傷、そして三世代にわたる負の連鎖を理解しています。だからこそ、突き放すだけではなく、改善の道を示す責任があると思いました。

