説明:地球に衝突する小惑星は大きさによって被害が大きく異なる(JAXA相模原チャンネル「隕石の衝突回避方法 プラネタリーディフェンス」より)
天体衝突から地球を守る「プラネタリーディフェンス」(地球防衛)
2025年7月に大災害が起きるという言説の中には、「隕石が衝突して大津波が起きる」というものもありました。では、隕石はどの程度、地球に落下するのか、どのような対策があるのか、宇宙航空研究開発機構(JAXA)プラネタリーディフェンスチーム長の吉川真さんに聞きました。
隕石の大きさで決まる災害
太陽系は、地球や火星、木星など大きな惑星が太陽の周囲を回っていますが、このほかに岩石などでできた小惑星が無数にあります。小さいものであれば、地球に衝突しても大気圏に突入する時に溶けてしまいます。その時に発する光が流れ星です。一部が溶け残って小さな隕石として落ちてくることもあります。
衝突する小惑星の直径が20m弱くらいになると、大気圏に突入する時に衝撃波が起き、窓ガラスが割れるなどの被害が起きます。2013年2月には推定で直径17mの小惑星が地球に衝突し、ロシア中部のチェリャビンスク州では南北180km、東西80kmにもわたる広範囲で、窓ガラスが割れる、ドアが吹き飛ぶなどの被害が起き、約1500人が負傷しました。

写真説明:隕石による衝撃波を受け、壁や屋根が大破したチェリャビンスクの亜鉛工場(2013年2月16日、緒方賢一撮影)
直径50mほどの小惑星は、巨大なクレーターをつくり、一つの都市を壊滅させるほどの威力があります。アメリカ・アリゾナ州にあるバリンジャー・クレーターは、約5万年前に直径30~50mの鉄を多く含む小惑星が衝突してできたとされ、直径1km、深さ200mにもなるクレーターが残っています。1908年にロシア・シベリアで起きたツングースカ大爆発は、直径50~60mの小惑星の衝突が原因とされており、東京都全体の面積に匹敵する約2000平方kmにわたって樹木がなぎ倒されました。

写真説明:直径30~50mの小惑星が衝突してできたとされるアメリカ・アリゾナ州のバリンジャー・クレーター(JAXA相模原チャンネル「隕石の衝突回避方法 プラネタリーディフェンス」より)
直径が500mを超えると、衝突のエネルギーは地球上の全核兵器を合計したエネルギーに匹敵します。さらに直径が1kmを超えると生命の存続が危機にさらされる威力になります。6550万年前にメキシコ・ユカタン半島に落下した直径10kmの小惑星は、地表に巨大なクレーターをつくりました。衝突時に巻き上げた大量の土砂などが大気中を漂い、日光をさえぎったため地球全体の気温が低下し、恐竜などが絶滅したと言われています。
