卵巣がんは初期に自覚症状がほとんど現れない病気です。そのため、症状に気付いたときにはすでに進行していることも少なくありません。女性にとって気になる症状の一つに不正出血があります。不正出血があると「もしかして卵巣がんでは?」と不安になることもあるでしょう。本記事では、卵巣がんと不正出血の関係や、卵巣がんの初期症状、受診の目安、検査方法を解説します。

監修医師:
西田 陽登(医師)
大分大学医学部卒業。大分大学医学部附属病院にて初期研修終了後、病理診断の研鑽を始めると同時に病理の大学院へ進学。全身・全臓器の診断を行う傍ら、皮膚腫瘍についての研究で医学博士を取得。国内外での学会発表や論文作成を積極的に行い、大学での学生指導にも力を入れている。近年は腫瘍発生や腫瘍微小環境の分子病理メカニズムについての研究を行いながら、様々な臨床科の先生とのカンファレンスも行っている。診療科目は病理診断科、皮膚科、遺伝性疾患、腫瘍全般、一般内科。日本病理学会 病理専門医・指導医、分子病理専門医、評議員、日本臨床細胞学会細胞専門医、指導医。
卵巣がんの概要と原因

卵巣がんとは、子宮の両脇にある卵巣に発生する悪性腫瘍です。2020年には日本で年間約1.3万人の女性が卵巣がんと診断されており、約5,100人が卵巣がんで亡くなっています。卵巣がんは40代から増え始め、50〜60代で発症のピークを迎えます。発症の原因は明確にはわかっていませんが、排卵の回数が多いほど卵巣がんのリスクが高まると考えられています。
また、食生活の欧米化との関連も指摘されています。卵巣がんは遺伝的な要因も一部あります。乳がん・卵巣がんの家族歴がある場合や、BRCA1/BRCA2といった遺伝子変異を持つ場合は遺伝性乳がん卵巣がん症候群と呼ばれ、卵巣がん発症リスクが高まります。
不正出血は卵巣がんの初期症状?

月経ではない時期に性器から出血した経験はありませんか?そのような不正出血は卵巣がんに関係するのかを本章で解説します。
不正出血の定義
不正出血とは、月経ではない時期に性器から出血することを指します。色は鮮血の場合もあれば茶色やピンク色のおりものとして気付く場合もあります。不正出血自体は女性では珍しい症状ではなく、婦人科を受診する理由としてもよくみられます。
不正出血と卵巣がんの関係
不正出血は卵巣がんの初期症状としてはあまり一般的ではありません。卵巣がんは骨盤の奥にある卵巣に発生するため、がんが小さい初期段階では出血など目立った症状を起こしにくいです。ただし、卵巣がんが進行していくと、ホルモンバランスの変化や周囲臓器への影響で月経異常や不正出血が現れる場合もあります。
卵巣がん以外に不正出血が生じる原因
卵巣がん以外で不正出血をきたす原因はいくつかあります。代表的なものは下記のとおりです。
子宮体がん
子宮頸がん
子宮筋腫
子宮内膜ポリープ
ストレスなどによるホルモンの乱れ
このように、不正出血は卵巣がん以外にも多くの原因が考えられる症状です。不正出血がみられた場合、年齢的に更年期だから仕方ないと自己判断せず、まずは婦人科で相談することが大切です。

