乳がんの集団健診や人間ドックの結果で要精密検査と通知されると、不安になりますよね。精密検査が必要と言われても、必ずしも乳がんが見つかるわけではありません。それでも、万一乳がんが隠れていても早期発見できるよう、精密検査は必ず受けることが大切です。この記事では、要精密検査と言われた場合にどうすればよいか、精密検査の内容や流れについて解説します。

監修医師:
木村 香菜(医師)
名古屋大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、大学病院や、がんセンターなどで放射線科一般・治療分野で勤務。その後、行政機関で、感染症対策等主査としても勤務。その際には、新型コロナウイルス感染症にも対応。現在は、主に健診クリニックで、人間ドックや健康診断の診察や説明、生活習慣指導を担当している。また放射線治療医として、がん治療にも携わっている。放射線治療専門医、日本医師会認定産業医。
乳がん検診で要精密検査になるのはどういう状態?

乳がん検診では乳がんの所見をカテゴリに分けて記載します。そのなかで要精密検査になる状態について解説します。
乳がん検診のカテゴリ
乳がん検診では、画像所見に応じていくつかのカテゴリに判定が分けられます。一般的に以下のような分類です。
カテゴリ1:異常なし
カテゴリ2:良性
カテゴリ3:良性の可能性が高いが悪性(乳がん)を否定できない
カテゴリ4:悪性の疑い
カテゴリ5:悪性(乳がん)の所見がある
カテゴリ3以上が要精密検査になる
健診結果でカテゴリ3以上となった場合は、市区町村の検診であれば後日郵送などで要精密検査の通知が届きます。要精密検査は「疑わしいところがあるので、もう一度詳しく検査してください」という意味です。要精密検査=乳がん確定ではありませんが、少しでもがんの疑いがあれば精密検査を行うのが乳がん検診の方針です。とはいえ、症状がないからと先延ばしにせず、次回の検診を待たずに受診することが大切です。
乳がんの精密検査とは

乳がんの精密検査とは、乳房の詳しい画像検査や細胞・組織を調べる検査のことです。具体的には以下のような検査が組み合わされます。段階的にまず画像検査で詳しく調べ、それでも判断がつかない場合に細胞や組織を採取する検査へと進むのが一般的です。
画像検査
精密検査で行われる画像検査には、マンモグラフィの追加撮影と乳房超音波検査があります。マンモグラフィは乳房のレントゲン検査ですが、検診時の画像ではわかりにくかった部分を詳しく写すために、追加で特殊な角度や圧迫を変えた撮影を行うことがあります。
一方、乳房超音波検査は、乳腺に超音波を当てて内部の状態を調べる検査です。しこりの有無や性状を詳細に観察するのに適しています。特に、乳房が高濃度でマンモグラフィでは写りにくい若い年代の方や、指摘された異常が嚢胞か腫瘍かを区別したい場合などに有用です。
穿刺吸引細胞診
穿刺吸引細胞診とは、しこりなど病変部分に細い注射針を刺して細胞を吸い出し、顕微鏡で調べる検査です。痛みも注射とほぼ同じくらいの軽いもので、通常は局所麻酔はせずに実施できます。
細胞診で採れた細胞を染色し、病理医が顕微鏡で観察して乳がんの細胞があるかどうかを判断します。細胞診は身体の負担が少ない検査ですが、採取できるのは細胞だけなので診断精度は組織検査よりやや劣ります。
針生検
針生検は、組織の一部を採取する生検です。採取した組織を顕微鏡で詳しく調べ、がんの有無やホルモン受容体の有無などの性質を診断します。針生検を行う際は、局所麻酔を用いて針を刺す部位の痛みを感じにくくしてから行います。
外科的生検
外科的生検は、手術によって病変の一部または全部を切除して病理検査を行う方法です。針生検よりも広範囲で組織を取る方法で、部分麻酔または短時間の全身麻酔下で乳房を切開し、疑わしいしこりをまるごと摘出したり一部を切り取ったりします。
針生検で診断が確定できない場合や、しこりの場所が針では届きにくい場合、細胞診や針生検の結果と画像所見が異なる場合などに行われます。外科的生検では病変をしっかり摘出して調べるため、しっかりと診断を確定できます。

