上室性期外収縮を指摘された方のなかには、「コーヒーを飲むと動悸が気になる」と感じる方も少なくありません。カフェインが心臓の働きにどのような影響を与えるのか、そのメカニズムを知ることが、症状との向き合い方の第一歩になります。本記事では、カフェインと上室性期外収縮の関係を中心に、日常生活で参考にできる情報をわかりやすく解説していきます。

監修医師:
本多 洋介(Myクリニック本多内科医院)
群馬大学医学部卒業。その後、伊勢崎市民病院、群馬県立心臓血管センター、済生会横浜市東部病院で循環器内科医として経験を積む。現在は「Myクリニック本多内科医院」院長。日本内科学会総合内科専門医、日本循環器学会専門医、日本心血管インターベンション治療学会専門医。
上室性期外収縮とコーヒーの関係|カフェインが心臓に与える影響
上室性期外収縮を指摘された方のなかには、「コーヒーを飲むと動悸がする気がする」「カフェインを控えたほうがよいのだろうか」と疑問を抱く方も少なくありません。実際に、カフェインは心臓の働きに影響を与える成分として広く知られており、不整脈との関係についても多くの研究が行われています。
しかし、「コーヒーを飲むと必ず上室性期外収縮が増える」という単純なものではなく、その影響には個人差があります。また、近年の研究では、適度なコーヒー摂取と不整脈との関連について従来とは異なる知見も報告されています。
そのため、上室性期外収縮とコーヒーの関係を考える際には、カフェインが心臓にどのような作用を及ぼすのかを理解したうえで、自身の体質や症状との関係を見極めることが重要です。
カフェインが心臓に働きかける仕組み
カフェインは、コーヒーをはじめ、紅茶、緑茶、エナジードリンク、栄養ドリンク、チョコレートなどにも含まれている成分です。摂取されたカフェインは消化管から速やかに吸収され、血液を介して全身へ運ばれます。
カフェインの代表的な作用の一つが、中枢神経を刺激して眠気を軽減し、覚醒状態を高めることです。この作用は心臓や血管にも及び、交感神経を活性化させることで心拍数や血圧に影響を与える場合があります。カフェインは、身体をリラックスさせる働きを持つ「アデノシン」という物質の作用を妨げることが知られています。アデノシンは、心拍数を落ち着かせたり、過度な興奮を抑えたりする役割を担っていますが、カフェインがその働きを阻害することで、心臓が刺激を受けやすい状態になることがあります。
さらに、カフェインは細胞内のカルシウムの動きにも影響を与えると考えられています。カルシウムは心筋の収縮や電気信号の発生に重要な役割を果たしているため、そのバランスが変化すると心臓の興奮性が高まり、不整脈が起こりやすくなる可能性があります。
カフェインによって心臓の興奮性が高まると、このような異常な電気信号が発生しやすくなる可能性があると考えられています。ただし、実際の反応には大きな個人差があります。同じ量のコーヒーを飲んでも全く症状が出ない方がいる一方で、少量のカフェインでも動悸や胸の違和感を自覚する方もいます。
この違いには、カフェインの代謝速度や自律神経の状態、ストレスの有無、睡眠の質、年齢、体格などが関係していると考えられています。また、もともと上室性期外収縮が出やすい体質の方や、不安感が強い方では、カフェインの影響をより受けやすい場合があります。
コーヒーを飲む量と上室性期外収縮の出やすさ
コーヒーの摂取量と上室性期外収縮との関係については、これまで多くの研究が行われてきました。一般的には、カフェインを大量に摂取すると心臓の興奮性が高まり、不整脈が出現しやすくなる可能性があると考えられています。特に、短時間で大量のコーヒーやエナジードリンクを摂取した場合には、動悸や脈の乱れを自覚する方もいます。カフェインによる刺激作用が強く現れることで、上室性期外収縮を含む不整脈が誘発される可能性があるためです。
一方で、日常的な適量のコーヒー摂取が必ずしも不整脈リスクを高めるわけではないことも知られています。健康な成人においては、1日2〜3杯程度(※内閣府食品安全委員会の情報に基づく一般的な目安)のコーヒーであれば、上室性期外収縮の発生頻度に大きな影響を与えないとする結果も報告されています。また、一部の大規模研究では、適度なコーヒー摂取が心血管疾患のリスク低下と関連している可能性も示されています。ただし、こうした結果はあくまで集団全体を対象としたものであり、個々の患者さんにそのまま当てはまるとは限りません。
実際の診療では、「コーヒーを飲んだあとに症状が出るかどうか」が重要な判断材料になります。例えば、コーヒーを飲んだ直後から動悸や脈の乱れを感じる場合には、カフェインが症状に関与している可能性があります。
また、同じ量のコーヒーでも、空腹時や睡眠不足のとき、強いストレスを抱えているときには症状が出やすくなることがあります。これは、自律神経のバランスが乱れた状態では、カフェインの刺激作用が強く現れやすいためです。
さらに、エナジードリンクや濃いコーヒー、カフェイン錠剤などを併用している場合には、本人が思っている以上に多量のカフェインを摂取しているケースもあります。コーヒーだけでなく、日常的に摂取している飲料や食品全体を見直してみることも大切です。
上室性期外収縮が気になる方は、コーヒーを完全に禁止する必要があるとは限りません。まずは摂取量や飲むタイミングを記録し、症状との関連を確認してみるとよいでしょう。コーヒーを減らした際に動悸が改善するようであれば、カフェインが一因となっている可能性があります。
一方で、症状が続く場合や頻度が増えている場合には、コーヒーだけが原因とは限りません。背景に心疾患やほかの不整脈が隠れている可能性もあるため、循環器内科で相談し、必要に応じて心電図検査やホルター心電図検査を受けることが重要です。適切な評価を受けることで、安心して日常生活を送るための判断材料を得ることができるでしょう。
まとめ
上室性期外収縮は、コーヒーやアルコールなどの摂取習慣・睡眠不足・ストレスといった日常生活の要因と深く関わっています。症状が気になる方は、まずカフェインや生活習慣の見直しに取り組むことが大切です。無症状でも健康診断で指摘された場合は、放置せず循環器内科への受診を検討してください。自分の身体の状態を正しく把握し、必要に応じて専門の医師に相談することが、上室性期外収縮と向き合ううえでの第一歩となります。
参考文献
日本循環器学会「不整脈の診断とリスク評価に関するガイドライン」
国立循環器病研究センター「不整脈」
内閣府 食品安全委員会 「食品中のカフェイン」
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