“あの基準値”に要注意?脳動脈硬化の進行を防ぐ「血圧」の秘密【医師監修】

“あの基準値”に要注意?脳動脈硬化の進行を防ぐ「血圧」の秘密【医師監修】

脳動脈硬化症を考えるうえで、血圧の数値は欠かせない指標のひとつです。日本高血圧学会のガイドラインでは、収縮期140mmHg以上または拡張期90mmHg以上を高血圧と定義しています。また、130〜139mmHgの範囲は「高値血圧」とされ、リスクが高まり始めるサインとして注目されています。ご自身の血圧の意味を正しく理解することが、脳の血管を守る第一歩となります。

田頭 秀悟

監修医師:
田頭 秀悟(たがしゅうオンラインクリニック)

鳥取大学医学部卒業。「たがしゅうオンラインクリニック」院長 。脳神経内科(認知症、パーキンソン病、ALSなどの神経難病)領域を専門としている。また、問診によって東洋医学的な病態を推察し、患者の状態に合わせた漢方薬をオンライン診療で選択する治療法も得意としている。日本神経学会神経内科専門医、日本東洋医学会専門医。

脳動脈硬化症の基準値①|診断に用いられる主な検査指標

脳動脈硬化症は、脳に向かう血管の壁が厚く硬くなることで、血流が妨げられる状態です。このセクションでは、診断や経過観察に際して医師が参照する主な検査指標と、その基準値について解説します。数値だけを見て一喜一憂するのではなく、自分の身体の状態を理解するための手がかりとして捉えていただければ幸いです。

脳動脈硬化症の診断で参照される血圧の基準

脳動脈硬化症を考えるうえで、まず外せない指標が血圧です。血圧が高い状態が続くと、血管壁に絶えず強い圧力がかかり続けます。その結果、血管の内側を覆う内皮細胞が傷つき、動脈硬化が進みやすい環境が生まれます。

日本高血圧学会のガイドラインでは、診察室で測定した血圧が収縮期(上の血圧)140mmHg以上、または拡張期(下の血圧)90mmHg以上の場合を高血圧と定義しています。一方、収縮期が130〜139mmHg、拡張期が80〜89mmHgの範囲は「高値血圧」と呼ばれ、脳動脈硬化症のリスクが高まり始める段階として注意が必要です。

家庭で測定した血圧の場合は、診察室血圧よりもやや低い基準が用いられます。具体的には、家庭血圧で収縮期135mmHg以上、または拡張期85mmHg以上が高血圧の目安とされています。日常的に血圧を記録しておくことは、受診時に医師が状態を把握するうえでも大変有用です。

また、脳動脈硬化症を抱える方では、収縮期血圧の目標値を130mmHg未満に設定することが推奨される場合があります。ただし、高齢の方や他の疾患を合併している場合は、急激な降圧がかえって脳血流を低下させるリスクもあるため、目標値は医師と相談しながら個別に設定することが大切です。

コレステロール・中性脂肪の基準値と脳動脈硬化症の関係

血圧と並んで、脳動脈硬化症のリスクを評価するうえで重要なのが、血液中の脂質(脂肪)の状態です。脂質の代謝に異常が生じる「脂質異常症」は、自覚症状がほとんどないまま進行することが多いものの、動脈硬化を促進し、脳梗塞や心筋梗塞などの重大な血管疾患につながる危険因子として知られています。

脂質異常症は単に「コレステロールが高い状態」を指すわけではありません。悪玉コレステロールの増加や善玉コレステロールの低下、中性脂肪の増加など、複数の異常が関わることで血管に負担をかけます。そのため、健康診断の結果を見る際には、一つの数値だけでなく全体のバランスを確認することが大切です。

脂質の検査では、主に次の4項目が測定されます。

・LDLコレステロール(いわゆる「悪玉コレステロール」)
・HDLコレステロール(いわゆる「善玉コレステロール」)
・中性脂肪(トリグリセライド)
・Non-HDLコレステロール

日本動脈硬化学会のガイドラインでは、LDLコレステロールが140mg/dL以上を「高LDLコレステロール血症」、HDLコレステロールが40mg/dL未満を「低HDLコレステロール血症」、中性脂肪が150mg/dL以上を「高トリグリセライド血症」と定義しています。

特に注意したいのがLDLコレステロールです。LDLコレステロールが高い状態が続くと、血管の内側にコレステロールが蓄積し、やがて「プラーク」と呼ばれる脂肪の塊が形成されます。プラークは血管を徐々に狭くするだけでなく、破裂すると血栓(血の塊)ができる原因にもなります。脳の血管でこのような変化が起こると、脳への血流が低下し、脳梗塞のリスクが高まります。

ただし、中性脂肪が正常範囲にある場合のLDLコレステロールの上昇は必ずしも脳動脈硬化症の進展に寄与しない、むしろ血管の炎症の修復に貢献しているという見解もあります。したがって、LDLコレステロールの高い数値があっても、必ずしもこれを下げる必要があるとは限らないので注意が必要です。

一方で、HDLコレステロールには血管壁にたまった余分なコレステロールを回収し、肝臓へ運ぶはたらきがあります。そのため「善玉コレステロール」と呼ばれており、この数値が低い状態では血管内にコレステロールが蓄積しやすくなり、動脈硬化の進行につながる可能性があります。

また、中性脂肪が高い状態も見逃せません。中性脂肪の増加は肥満や糖尿病、脂肪肝などと関連が深く、動脈硬化を促進する要因の一つと考えられています。さらに、中性脂肪が高い方ではLDLコレステロールが小型化し、より血管壁に入り込みやすい「小粒子型LDLコレステロール」「酸化型LDLコレステロール」が増えることも知られています。これらが「真の悪玉」であって、「LDLコレステロール自体は実質的に悪玉ではない」という見解もあるのです。

近年は、LDLコレステロールだけでなく「Non-HDLコレステロール」も重要な指標として注目されています。Non-HDLコレステロールは、動脈硬化の原因となる可能性のあるコレステロールを総合的に評価できるため、より実際のリスクを反映しやすいと考えられています。

脂質異常症は初期にはほとんど症状がありません。しかし、自覚症状がないまま血管の老化や動脈硬化が進行し、ある日突然、脳梗塞や心筋梗塞として発症することがあります。そのため、健康診断でコレステロールや中性脂肪の異常を指摘された場合は、「症状がないから大丈夫」と考えず、早めに生活習慣の見直しや医療機関への相談を検討することが大切です。

なお、すでに脳梗塞や心筋梗塞を経験した方、糖尿病や慢性腎臓病を合併している方などでは、LDLコレステロールの管理目標が一般の方より厳しく設定されることがあります。どの程度の数値を目標にすべきかは個々のリスクによって異なるため、自身の健康状態に応じた管理目標について主治医と相談するとよいでしょう。

まとめ

脳動脈硬化症は、ある日突然現れるものではなく、長年の生活習慣の積み重ねによって少しずつ進行する疾患です。血圧・コレステロール・血糖といった基準値を把握し、異常があれば早期に対処することが、深刻な脳血管疾患の予防につながります。糖尿病を抱える方は特に、血管へのダメージが重なりやすいため、包括的なリスク管理が求められます。気になる症状がある方や、健康診断で数値の異常を指摘された方は、ぜひ神経内科や糖尿病内科などへご相談ください。日々の小さな積み重ねが、将来の大きな病気を防ぐ力になります。

参考文献

日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」

日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」

厚生労働省「健康・医療生活習慣病予防」

配信元: Medical DOC

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