しかし、劣化や使い方を誤ることで発火してやけどや火災をおこすこともありますので、正しい使い方や処分方法を知っておきましょう。
リチウムイオン電池でおきる事故
製品の安全性などの評価を行う NITE(製品評価技術基盤機構)によると、2020年から2024年までの5年間にリチウムイオン電池を使った製品による火災事故が1587件報告されています。また、東京都消防庁による2023年の集計を見ると、モバイルバッテリーが原因となる火災が26%と最も多く、スマートフォンが10%、電動アシスト付き自転車が8%、コードレス掃除機が8%と続いています。
リチウムイオン電池が発火するときには、化学反応により炎や高温の煙がふき出し、時には爆発をおこすことがあります。また、充電中や高温の環境においた場合にも、温度の上昇によって電池内部で化学反応が進むため、発火しやすくなるという性質もあります。
充電中などで離れている間に発火すれば、知らないうちに火が燃え広がり大きな火災につながります。また、夏の車の中にリチウムイオン電池を使った製品をおいておくことで、車内が高温になり発火することもあります。こちらも、人のいないところで火が燃え広がってしまうため注意が必要です。
近年普及したハンディ扇風機でも事故が多くなっています。胸にぶら下げている時に発火し、大やけどにつながることもありますので、製品を熱く感じることがあればすぐに電源を切って体から離すようにしてください。
また、リチウムイオン電池を通常のごみとして捨ててしまうと、ごみの収集中やごみ処理施設で火災をおこし、大変な被害となることがあります。
2024年12月に茨城県守谷市のごみ処理施設で、リチウムイオン電池が原因とみられる火災によって、施設は稼働を停止することとなり、復旧は2028年の1月までかかる見通しとなっています。復旧工事費は約45億円となり、保険適用分を除いた負担額が約25億円となる大変な被害となりました。
電化製品を処分するときには、リチウムイオン電池などのバッテリーが含まれているかを確認して、自治体の案内する方法で安全に処分するようにしましょう。
リチウムイオン電池の安全な使い方
リチウムイオン電池は使い方を誤ると、人のいない場所での火災や、炎や高温の煙をふき出して大やけどにつながるなど、大きな事故をおこすことがあります。発火につながる原因を知って、安全な使い方を確認しましょう。充電時の注意
リチウムイオン電池は高温になると発火しやすくなりますが、高温の場所におく以外にも、充電中も電池の温度が上がるため発火がおきやすくなります。また、リチウムイオン電池本体ではなく、充電器や充電コードから発火する場合もありますので、こちらの使い方もあわせて確認をしておきましょう。
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充電を繰り返すとバッテリーが劣化し、発火する場合があります。
劣化したバッテリーは膨らんだり、使用時・充電時に高温になったりしますので、異常を感じたら使用を控え、新しい製品に買いかえましょう。
なお、リチウムイオン電池は100%まで充電をして長いあいだそのままにしておいたり、0%近くまで使い切ったりすると劣化しやすくなりますので、なるべく20%~80%の間で利用するのが長持ちするポイントです。
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破損した充電器のケーブルは使わないようにしましょう。
差込口が曲がっていたり、ケーブルが断線したりするなど、破損した充電器やケーブルを使うとショートして発火することがあります。
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充電器や充電コードの差込口に異物が入らないようにしましょう。
小さな金属片やシャープペンシルの芯などの電気を通すものが、充電器や充電コードの差込口に挟まっているとショートして発火することがあります。
高温に注意
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夏の自動車の中など、高温になる場所にはリチウムイオン電池を使った製品をおいたままにしないようにしましょう。また、室内でも強い日差しの差し込む場所におかないようにしてください。
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低温やけどに注意しましょう。寝ているときに、スマートフォンに布団がかぶさると熱がこもり、体に触れていると低温やけどとなることがあります。
衝撃に注意
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落下などで強い衝撃が加わった場合には、異常がないか注意して使用しましょう。バッテリーが高温になる、異臭がするなどの異常があれば、買いかえるようにしてください。
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製品を分解しないようにしましょう。
リチウムイオン電池を使う製品を分解する時に、電池に強い力が加わって破損することがありますので、自分で製品を分解しないようにしましょう。
電池本体に衝撃が加わると、内部でショートをして発火や爆発につながるため、電池本体の分解は絶対に行ってはいけません。
水濡れに注意
水濡れをすると製品の回路や、リチウムイオン電池自体がショートして発火することがあります。防水性能のない製品が、水没や水濡れした場合には使用を中止してください。製品・互換品に注意
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バッテリーはメーカー純正品を使用しましょう。
リチウムイオン電池を使う製品は精密に作られ、製品本体とバッテリー両方の制御機能がはたらき安全に動作するよう設計されています。別のメーカーの作る互換品は制御機能が正常にはたらかず事故をおこすことがあります。また、品質の悪いものもあり、互換バッテリーが発火をおこす事故が多く報告されていますので、交換型のバッテリーはメーカー純正品を使うようにしましょう。
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付属の充電器や充電ケーブルは、規格に合ったものを使用しましょう。
ACアダプター(電圧変換器の付いた電源ケーブル)は、同じように見えて流れる電圧(V)や電流(A)が違うものがあります。メーカー純正の電源ケーブルを使用するようにしましょう。
最近のスマートフォンには充電器がついていないものもありますが、この時も間違ったものを購入しないように、本体の対応する電圧(V)や電流(A) を確認し、規格にあったものを購入してください。もし自分ではわからないようであれば、家電量販店でお店の人に調べてもらうとよいでしょう。
なお、インターネット通販では、規格に合っているように見えても粗悪なものも販売されています。
適合性検査を行った証明となる「PSEマーク」がついているものを購入するようにしましょう。その際、下記の内容がすべて表示されているかを確認してください。
充電器の場合
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PSEマーク
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適合性検査を行った登録検査機関名又はその届け出た登録商標、承認された略称
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届出事業者名又はその届け出した登録商標、承認された略称
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定格等(入力・出力のそれぞれの電圧、電流など)
リチウムイオン電池やモバイルバッテリーの場合
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PSEマーク
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届出事業者名又はその届け出した登録商標、承認された略称
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定格電圧及び定格容量
粗悪な製品に注意
安価なものの中には、粗悪品が販売されている場合があります。リチウムイオン電池の製造過程に問題があるものや品質にばらつきのあるもの、安全装置がついていないものもあり、多くの事故がおきています。とくにモバイルバッテリーやハンディ扇風機などはさまざまなメーカーで製造されているため、製品選びに気をつけましょう。
なるべく、よく知られたメーカーのものを購入するのが一番ですが、
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PSEマークが表示されている
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他と比べてあまりにも安い製品は避ける
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販売ページや、パッケージの商品説明も日本語に不自然なところがない
また、リチウムイオン電池は小型充電式電池のリサイクル活動を行う 「JBRC」という団体があり、この会員でないメーカーの製品は家電量販店やホームセンターで回収することができません。また、リチウムイオン電池の回収を行っていない自治体もあるため処分が難しくなります。
処分する時のことも考えて、メーカーがJBRC会員になっているかも参考にするとよいでしょう。
リコール製品に注意
よく知られたメーカーの製品でも発売後に欠陥が見つかり、使用すると危険が生じる可能性があると判明した「リコール製品」でも、発火事故が報告されています。自分の持っている製品がリコール製品ではないかを確認して使いましょう。リコール製品の情報は
経済産業省 リコール情報 リチウム電池使用製品
こちらのページにて確認することができます。

