なぜ「頑張れ」と言うほど子どもは動けなくなるのか。子どもの元気がない家庭に共通すること

「宿題やったの?」「早く準備しなさい」何度言っても動かない子どもに、苛立ちを感じたことはないでしょうか。一見すると“やる気がない”ように見えるこの状態。しかし、小児科専門医・成田奈緒子さんは「そもそも見方が間違っている」と指摘します。

「子どもは元気なもの」と思われてきたけれど

(※画像はイメージです)

ーー子どもが宿題もせずダラダラしているとき、ついイライラしてしまいます。子どもの無気力や不機嫌、集中力低下といった悩みを抱える親は少なくありません。

成田奈緒子先生(以下、成田) 親が「宿題やったの?」と声をかけて、子どもが「やるよ」と言いながらも動かない。そうしたシチュエーションは珍しくありませんよね。でも、子どもは嘘をついているわけではありません。特に小学校高学年にもなれば、「宿題をやらなきゃいけない」ということは分かっています。だから「やるよ」と言っているんです。

ーー分かっているのに、どうして動けないのでしょうか。

成田 端的に言えば、切り替えるためのエネルギーが足りていません。子どもが学校へ行くのは当たり前のことかもしれませんが、学校から帰ってきた時点で、子どもはかなり疲れています。そこに「今すぐやりなさい」と言われても、宿題に向かうだけのエネルギーが残っていない。
思春期になると、親に言われたことへの反発も加わるので、さらに難しくなります。つまり「分かっているのにできない」という状態です。これはもう、「やる気の問題」ではないんですね。

ーー親の目には、どうしても「怠けている」ようにうつってしまいがちです。

成田 親から見ると「だらだらしている」「サボっている」ように見えますよね。でも実際には、エネルギーが切れている状態です。ここに大きなズレがあります。やる気ではなく、「状態」の問題なんです。やる気がないように見える子どもは、実はずっと疲れているといえます。

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ーー塾や習い事で忙しいお子さんも多いです。

成田 毎日十分にリカバーできてエネルギーが回復できている状態なら良いのですが、「学校の勉強に集中できなくて成績が悪いから夜遅くまで塾に行かせる」というのは本末転倒です。
学校だけでも疲れているのに、リカバーできていない状態でさらに塾や習い事を増やすと、帰宅が遅くなって、寝る時間も遅くなる。疲れがたまる⇒動けなくなる⇒さらに予定を増やす、というループに入ってしまいます。
お子さんのやる気がないように見えるのであれば、むしろ予定を増やさず、休める環境を整えることが第一だといえます。
それに、そもそも子どもだけでなく親の側も、仕事に家事に子育てにと、毎日とても疲れているのではないですか?

ーー子どもだけの問題ではないのでしょうか。

成田 大人の問題でもあります。「ちゃんとしなきゃ」「やらなきゃいけない」という“べき”に追われて、家庭の中でも自分自身を休ませられていないことはありませんか。その状態で子どもに強く指示を出すと、家庭の中で悪循環が起きてしまいます。問題は、子ども個人ではなく、家庭全体の疲労にあります。
さらにその背景には、休まず頑張り続けることを美徳とする価値観の問題もあります。昭和・平成と頑張ってきた大人が、「もっと頑張ればもっとできる」という感覚のまま、子どもにも同じことを求めてしまう。その結果、ぼーっとしている子どもを見ると「何かさせなければ」と焦ってしまうのではないでしょうか。

親も睡眠を優先していい

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ーーそもそも「子どもは元気だねえ」という前提自体が間違っているような気もしてきました。

成田 はい。現代の子どもたちは、慢性的な睡眠不足で、脳だけでなく身体も疲労しています。一番の原因は、睡眠不足なんです。
私が推奨しているのは「20時就寝」です。特に、幼児期は20時までに寝かせることが必須だと考えています。

ーーしかしフルタイムで働いていて帰宅すると19時、子どもを20時に寝かせるのは現実的には難しい……

成田 「できない」ことはないんです。帰ってきて15分あれば寝られます。というのも、私自身が生後50日から子どもを保育園に預けて小児科医として働いてきましたが、19時すぎに保育園から帰って納豆ご飯を食べて、顔を拭いて、歯を磨いておしゃべりしながら寝かせていました。睡眠が何より大切だと知っていたからです。

ーーそうだったんですね。お風呂は……

成田 日本人はお風呂をとても大事にする文化がありますが、実は夜にこだわる必要はありません。むしろ高い温度のお風呂は交感神経を刺激して眠りにくくなります。朝、シャワーを浴びて目を覚ますことをおすすめします。我が家は全員朝風呂派で、私は毎朝4時に起きて朝風呂でスッキリしています。

ーーえ、先生は何時に寝ているのですか?

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成田 大体21時までには寝るのですが、下手すると本当に19時すぎぐらいから寝室に行って本を読んでいることもあります。

ーーええ、すごいですね。一般的には、大人はまだ寝る時間じゃないというか……

成田 だから今の日本の一般常識って、健康に悪いと思います(苦笑)。でも今みなさんが持っている「寝る時間はこれくらいでいいや」という感覚も、社会通念からの思い込みというのが強いのではないですか。

ーー言われてみれば、そうかもしれません。

成田 私はずっといろいろなところで「20時就寝にしてほしい」とお伝えしているのですが、「できない」と否定的な声をいただくことも少なくありません。でも、本当はできるんですよ。
みなさん「家事がある」「残った仕事がある」と言いますが、それは夜のうちに“絶対にやるべき”なのでしょうか。部屋が散らかっていても、食器を洗っていなくても、まずは睡眠を優先して良いと思います。

ーーたしかに、子どもを早く寝かせてから起きて家事や仕事をやろうと思っているときほど、なかなか寝てくれなくて、寝かしつけながらどんどんイライラして嫌な気持ちになってしまうことがあります。

成田 親も20時に寝てしまえば、朝4時に起きても8時間眠れます。先ほども触れましたが、子どもだけでなく“親も”そもそもとても疲れているんですよ。十分な睡眠時間を脳に与えてやることで1日の疲れはリカバー可能なのに、それをしていないのですから。是非、親御さんも積極的に休息をとって脳疲労を回復してほしいと思います。

子ども脳疲労

(取材・文 マイナビ子育て編集部)

成田奈緒子成田奈緒子小児科医・医学博士。公認心理師。子育て科学アクシス代表・文教大学教育学部教授。 1987年神戸大学卒業後、米国セントルイスワシントン大学医学部や筑波大学基礎医学系で分子生物学・発生学・解剖学・脳科学の研究を行う。2005年より現職。臨床医、研究者としての活動も続けながら、医療、心理、教育、福祉を融合した新しい子育て理論を展開している。著書に『「発達障害」と間違われる子どもたち』(青春出版社)、『高学歴親という病』(講談社)、『山中教授、同級生の小児脳科学者と子育てを語る』(共著、講談社)、『子どもにいいこと大全』(主婦の友社)など多数。近著に『その「一言」が子どもの脳をダメにする』(共著、SBクリエイティブ)がある。→記事一覧へ
配信元: マイナビ子育て

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