子供を作るうえで重要な体の一部である卵巣ですが、この卵巣から出血がみられる場合があります。
それが卵巣出血です。卵巣出血は病院に行かなくても済むような軽度のものから手術を受けなくてはならないような重度のものまでとその症状は様々です。
今回はそんな卵巣出血について解説していきます。治療方法などについても触れていくので同じ症状でお悩みの人はぜひ参考にしてみてください。
※この記事はメディカルドックにて『「卵巣出血」とは?原因・症状についても詳しく解説!【医師監修】』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
前田 裕斗(医師)
東京大学医学部医学科卒業。その後、川崎市立川崎病院臨床研修医、神戸市立医療センター中央市民病院産婦人科、国立成育医療研究センター産科フェローを経て、2021年より東京医科歯科大学医学部国際健康推進医学分野進学。日本産科婦人科学会産婦人科専門医。
卵巣出血の検査と治療

卵巣出血を疑ったらどのような検査をしますか?
卵巣出血を起こしたときに注意しておきたいことが子宮外妊娠の可能性です。子宮外妊娠とは、子宮内以外の場所に受精卵が着床してしまうことをいいます。
この子宮外妊娠の特徴が出血と下腹部痛であることから卵巣出血と類似しているため、症状だけでは正しく診断ができません。そこでまず行われるのが妊娠の検査です。妊娠の有無が分かれば卵巣出血と子宮外妊娠の判別も可能になります。
そのときに卵巣出血と診断された場合、エコーで血液が溜まっているかを検査してその血液を吸引すれば検査は完了です。
なぜ妊娠しているか確認するのですか?
前述したように子宮外妊娠と卵巣出血は症状がよく似ています。しかし、妊娠検査以降の検査と治療方法は全く異なるのです。
子宮外妊娠は処置や発見が遅れたことによる死亡例も少なくありません。そのため、早期発見・早期治療が求められます。
卵巣出血も大量出血の場合には命に関わりますが、どちらの症状であったにせよ正しい検査と処置を行うためにも妊娠の確認は必要なのです。
卵巣出血の治療方法を教えてください。
出血量によって治療方法は異なります。出血量が多くなければ自然治癒することが多いため経過観察となりますが、貧血を起こすことがあるためほとんどの場合が入院です。少量であれば1週間程度の入院ですみますが、この入院期間中に検査を定期的に行います。血液検査やエコー検査の中で出血量や貧血の状態を確認しての判断が必要です。出血量が多い場合には手術と止血が行われます。手術の方法として挙げられるのが以下の2つです。
開腹手術
腹腔鏡手術
開腹手術は名前の通り、腹部を開いて行う手術です。腹腔鏡手術の腹腔鏡とは内視鏡のことを指し、腹部の一部を切開して挿入した内視鏡での腹腔内の映像を見ながら手術を行う方法をいいます。止血にも2つの方法があり、それが以下の2つです。
電気メスなどによる焼灼止血
一部卵巣の切除
一部卵巣の切除の場合には今後の妊娠を希望するかどうかについての確認をしてから行います。
編集部まとめ

今回は卵巣出血について解説しました。卵巣出血は卵胞や出血性黄体のう胞によるもので、排卵が原因となる症状です。
卵巣出血と同様の症状がみられるものに子宮外妊娠があります。
子宮外妊娠は早期発見・早期治療が求められ、卵巣出血とは検査方法も治療も異なるためまずは妊娠検査を行うことが必要になります。
適切な検査と治療を行うことで命に関わる重症化を防げるため、妊娠検査は重要です。
卵巣出血の再発はあまりみられませんが、予防方法としては低用量ピルなどの排卵を止める作用を持つ薬の使用が有効になります。
低用量ピルは多くの婦人科で処方してもらえるため、こうした方法で予防をしておくことも卵巣出血を避ける1つの手です。適切な自己管理で自分の健康を守りましょう。
参考文献
卵巣出血|Medical Note

