トリプルネガティブ乳がんは、乳がん全体の約10〜20%を占めるとされており、増殖速度が速い傾向があります。また、BRCA1遺伝子の変異との関連や、40歳代以下の若い世代に発症しやすいといった特徴もあります。再発リスクや遺伝的背景について正しく理解することは、患者さん本人だけでなく、ご家族の健康管理にも役立つ可能性があります。このセクションでは、リスクの特徴を丁寧に整理します。

監修医師:
和田 真弘(医師)
199年3月新潟大学医学部医学科卒業
1999年4月慶應義塾大学医学部外科学教室入局・研修医
2000年5月佐野厚生総合病院外科出向
2001年5月芳賀赤十字病院外科出向
2002年5月慶應義塾大学医学部一般・消化器外科帰室・レジデント
2004年5月慶應義塾大学医学部一般・消化器外科・チーフレジデント
2005年5月川崎市立川崎病院外科副医長
2008年4月佐野厚生総合病院外科・乳腺外科部長
2013年4月現職(宇都宮セントラルクリニック乳腺外科)
【所属学会・資格】
日本外科学会 指導医
日本乳癌学会 乳腺専門医
日本乳癌学会 指導医
日本乳房オンコプラステックサージャリー学会 責任医師
日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
日本乳がん検診精度管理中央機構 検診マンモグラフィ読影認定医
日本外科学会 外科専門医
慶應義塾大学大学院医学研究科博士(医学)学位取得
日本乳がん検診精度管理中央機構 乳がん検診超音波実施・判定医師
トリプルネガティブ乳がんに使われる薬:化学療法の種類と特徴
トリプルネガティブ乳がんの治療では、化学療法(抗がん剤治療)が中心的な役割を担います。使用される薬の種類はいくつかあり、それぞれの特徴を理解することで、治療に向き合いやすくなります。このセクションでは、代表的な薬の種類とその働きについて説明します。
代表的な抗がん剤の種類と働き
トリプルネガティブ乳がんに対して使用される抗がん剤は、大きくいくつかの種類に分けられます。
まず「タキサン系」と呼ばれる薬があります。パクリタキセルやドセタキセルがこれにあたり、がん細胞の分裂を止める働きを持ちます。乳がん治療において広く使われる薬剤の一つで、術前や術後の化学療法として用いられることが多いです。
次に「アントラサイクリン系」と呼ばれる薬があります。ドキソルビシン(アドリアマイシン)やエピルビシンなどがこれにあたり、がん細胞のDNAに働きかけて増殖を抑えます。「アルキル化薬」のシクロホスファミドと組み合わせて使用されることも多く、AC療法やEC療法などが代表的なレジメン(治療の組み合わせ)として知られています。
上記の通り、タキサン系抗がん剤とアンスラサイクリン系抗がん剤が、現在もなおトリプルネガティブ乳がんに対する化学療法の基本となっています。
投与の方法は、点滴による静脈注射が一般的です。外来治療が一般的です。治療のスケジュールや使用する薬の種類は、周術期(術前および術後)か転移・再発かによって異なります。
免疫療法薬・PARP阻害薬など新しい治療薬について
近年、トリプルネガティブ乳がんに対する治療の選択肢が広がっています。その一つが「免疫チェックポイント阻害薬」と呼ばれる薬です。代表的なものとして「ペムブロリズマブ」があります。この薬は、免疫細胞ががん細胞を攻撃する働きを強める作用を持ちます。
ペムブロリズマブは、一定の条件を満たすトリプルネガティブ乳がんに対して、化学療法と組み合わせて使用されることがあります。適応となるかどうかは、「PD-L1(ピーディーエルワン)」と呼ばれるタンパク質の発現状況などを検査したうえで判断されます。
また、BRCA1またはBRCA2遺伝子に変異がある場合、「PARP阻害薬(パープそがいやく)」と呼ばれる薬が選択肢となります。オラパリブやタラゾパリブがこれにあたります。PARP阻害薬は、がん細胞のDNA修復機能を妨げることでがん細胞を死滅させる働きを持ちます。BRCA遺伝子変異を持つ方には有効性が認められており、保険適用が認められております。
これらの新しい薬は、従来の化学療法だけでは対応が難しかった場合にも効果が期待できることがあり、トリプルネガティブ乳がんの治療においてひとつの希望となっています。ただし、適応の可否は患者さんの状態や病期によって異なるため、主治医との十分な相談が必要です。
まとめ
トリプルネガティブ乳がんは、ほかの乳がんと比べて治療が難しい面がある一方で、化学療法を中心とした標準治療のほかにも、免疫療法薬や PARP阻害薬など新しい選択肢が広がってきています。また、高額療養費制度やがん相談支援センターなど、経済的・社会的なサポートも活用することで、治療への不安を少しずつ和らげることができます。気になる症状がある場合や、診断を受けた後に疑問を感じたときは、乳腺外科や腫瘍内科の専門の医師へ早めに相談することをお勧めします。
参考文献
国立がん研究センター がん情報サービス「乳がん」
厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」
日本乳癌学会「乳癌診療ガイドライン」
国立がん研究センター「がん相談支援センターを探す」
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