脳動脈硬化症の評価には、頸動脈の壁の厚みやプラークを超音波で確認する「頸動脈エコー検査」も活用されています。さらに、日々の食事や運動習慣を整えることが、動脈硬化の進行を穏やかに抑えるうえで大きな力を発揮します。塩分や質の低い脂肪酸を控えること、適度な有酸素運動を続けることなど、無理なく取り組める工夫を少しずつ積み重ねることが大切です。

監修医師:
田頭 秀悟(たがしゅうオンラインクリニック)
鳥取大学医学部卒業。「たがしゅうオンラインクリニック」院長 。脳神経内科(認知症、パーキンソン病、ALSなどの神経難病)領域を専門としている。また、問診によって東洋医学的な病態を推察し、患者の状態に合わせた漢方薬をオンライン診療で選択する治療法も得意としている。日本神経学会神経内科専門医、日本東洋医学会専門医。
脳動脈硬化症の進行を抑える方法②|医療機関での治療・薬物療法
生活習慣の改善だけでは不十分な場合や、すでにリスクが高まっている場合には、医療機関での治療が必要になることがあります。このセクションでは、脳動脈硬化症に対して行われる薬物療法や医学的介入について解説します。
脳動脈硬化症に用いられる主な薬物療法
脳動脈硬化症の治療では、その背景にある危険因子(高血圧・脂質異常症・糖尿病など)を管理することが基本的な方針となります。それぞれに対応した薬が用いられ、組み合わせて使用されることもあります。
高血圧に対しては、降圧薬が処方されます。降圧薬にはいくつかの種類があり、カルシウム拮抗薬・ARB(アンジオテンシン受容体拮抗薬)・ACE阻害薬・利尿薬などが代表的です。どの薬が適しているかは、年齢や合併症の有無によって異なります。
脂質異常症に対しては、スタチン系薬(HMG-CoA還元酵素阻害薬)が広く使われています。スタチンはLDLコレステロールを低下させる効果があり、動脈硬化の進行を抑えるはたらきが報告されています。脳梗塞や心筋梗塞の既往がある方では、積極的な脂質管理のためにスタチンが推奨される場合があります。一方で、スタチンは横紋筋融解症や糖尿病の悪化、さらには認知症のリスクを高めるなどの多彩な副作用を認めることもわかってきていますので、使用すべきかどうかは医師とも相談の上、細心の注意を払う必要があります。
血液をさらさらに保つ抗血小板薬(アスピリン・クロピドグレルなど)も、脳梗塞の再発予防を目的として処方されることがあります。ただし、出血リスクとのバランスを考慮したうえで使用の適否が判断されるため、自己判断での服用・中断は避けることが重要です。
薬物療法はあくまで補助的な手段であり、生活習慣の改善と組み合わせることではじめて十分な効果が期待できます。定期的に医師の診察を受け、検査値の推移を確認しながら治療を続けることが大切です。
禁煙が脳動脈硬化症の進行抑制に果たす役割
脳動脈硬化症を下げる方法の中で、喫煙習慣の見直しは極めて重要です。タバコに含まれるニコチンや一酸化炭素は、血管内皮を傷つけ、動脈硬化を強く促進する作用があるとされています。喫煙者は非喫煙者と比べて、脳梗塞や脳出血を発症するリスクが高まることが知られています。
禁煙の効果は比較的早期から現れ始めます。禁煙後数週間で血圧や心拍数の安定化が見られ始め、数ヶ月から数年のうちに血管機能の改善が期待されます。禁煙は脳動脈硬化症の進行を止めるうえで、生活習慣の中で優先度の高い取り組みの一つです。
禁煙外来では、ニコチン代替療法(ニコチンパッチやニコチンガム)や内服薬を用いた治療が行われており、自力での禁煙が難しい方にも選択肢があります。禁煙を試みてもうまくいかなかった経験がある方も、医療的なサポートを活用してみることをおすすめします。
また、受動喫煙(周囲のタバコの煙を吸い込むこと)もリスク要因になり得るため、喫煙環境そのものを変えることも大切な視点です。
まとめ
脳動脈硬化症は、ある日突然現れるものではなく、長年の生活習慣の積み重ねによって少しずつ進行する疾患です。血圧・コレステロール・血糖といった基準値を把握し、異常があれば早期に対処することが、深刻な脳血管疾患の予防につながります。糖尿病を抱える方は特に、血管へのダメージが重なりやすいため、包括的なリスク管理が求められます。気になる症状がある方や、健康診断で数値の異常を指摘された方は、ぜひ神経内科や糖尿病内科などへご相談ください。日々の小さな積み重ねが、将来の大きな病気を防ぐ力になります。
参考文献
日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」
日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」
厚生労働省「健康・医療生活習慣病予防」
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