“あの基準値”の見逃しは落とし穴?「糖尿病」が招く脳動脈硬化【医師監修】

“あの基準値”の見逃しは落とし穴?「糖尿病」が招く脳動脈硬化【医師監修】

生活習慣の見直しだけでは不十分なケースでは、医療機関での治療が重要な選択肢となります。降圧薬やスタチン系薬、抗血小板薬などが、それぞれの危険因子に応じて用いられることがあります。また、喫煙習慣は動脈硬化を強く促進するとされており、禁煙は血管の健康を守るうえで優先度の高い取り組みのひとつです。医師と相談しながら、ご自身に合った方法を選んでいきましょう。

田頭 秀悟

監修医師:
田頭 秀悟(たがしゅうオンラインクリニック)

鳥取大学医学部卒業。「たがしゅうオンラインクリニック」院長 。脳神経内科(認知症、パーキンソン病、ALSなどの神経難病)領域を専門としている。また、問診によって東洋医学的な病態を推察し、患者の状態に合わせた漢方薬をオンライン診療で選択する治療法も得意としている。日本神経学会神経内科専門医、日本東洋医学会専門医。

脳動脈硬化症と糖尿病の関係①|血糖コントロールが血管に与える影響

脳動脈硬化症の危険因子として、糖尿病は高血圧や脂質異常症と並んで重要な位置を占めています。このセクションでは、糖尿病の状態が脳の血管にどのような影響を与えるのかを詳しく説明します。

高血糖が脳動脈硬化症を引き起こすメカニズム

糖尿病では、インスリンというホルモンのはたらきが低下することで、血液中にブドウ糖が過剰に蓄積します(高血糖状態)。この高血糖が血管に与えるダメージは、大きく分けて2つの経路から考えることができます。

1つ目は、血管内皮細胞への直接的な障害です。血糖値が高い状態が続くと、血管の内側を覆う細胞が酸化ストレスにさらされ続けます。細胞が傷つくと、血管壁の炎症が起きやすくなり、コレステロールが沈着してプラークが形成されやすい状態になります。これが動脈硬化の起点となります。

2つ目は、終末糖化産物(AGEs:Advanced Glycation End-products)の蓄積です。高血糖の環境では、体内のたんぱく質にブドウ糖が結合して変性した物質(AGEs)が増加します。AGEsは血管壁の弾力性を奪い、硬くもろい血管を作り出す方向に作用するとされています。

これらの変化が積み重なると、脳に向かう血管が徐々に狭くなり、血流が低下します。その結果、脳への酸素・栄養の供給が滞り、認知機能の低下や脳梗塞のリスクが高まります。糖尿病の患者さんでは、脳梗塞の発症リスクが糖尿病でない方の2〜3倍になるとも報告されています(日本糖尿病学会資料などより)。

HbA1cの基準値と脳動脈硬化症リスクの管理目標

糖尿病の管理において中心となる指標が、HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)です。HbA1cは、過去1〜2ヶ月の平均的な血糖コントロールの状態を反映する指標で、正常値はおおむね5.6%未満とされています。6.5%以上が糖尿病の診断基準の一つとなります。

日本糖尿病学会のガイドラインでは、合併症の予防を目標とする場合のHbA1cの管理目標を7.0%未満としています。ただし、この目標値も患者さんの年齢・病歴・低血糖のリスクなどに応じて個別に調整されます。

脳動脈硬化症を合併している方や、そのリスクが高い方では、血糖コントロールとともに血圧・脂質・体重の管理を同時に行う「包括的管理」が特に重要とされています。複数の危険因子が重なると、脳血管への影響が相乗的に大きくなるためです。

血糖コントロールの改善は、脳動脈硬化症の進行を遅らせ、脳梗塞などの深刻な合併症を予防するうえで、大変重要な取り組みです。定期的な受診と検査を欠かさずに続けることが、長期的なリスク管理の土台となります。

まとめ

脳動脈硬化症は、ある日突然現れるものではなく、長年の生活習慣の積み重ねによって少しずつ進行する疾患です。血圧・コレステロール・血糖といった基準値を把握し、異常があれば早期に対処することが、深刻な脳血管疾患の予防につながります。糖尿病を抱える方は特に、血管へのダメージが重なりやすいため、包括的なリスク管理が求められます。気になる症状がある方や、健康診断で数値の異常を指摘された方は、ぜひ神経内科や糖尿病内科などへご相談ください。日々の小さな積み重ねが、将来の大きな病気を防ぐ力になります。

参考文献

日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」

日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」

厚生労働省「健康・医療生活習慣病予防」

配信元: Medical DOC

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