「片耳の耳鳴り」が初期症状? “聴神経腫瘍”を疑うべき進行のサイン

「片耳の耳鳴り」が初期症状? “聴神経腫瘍”を疑うべき進行のサイン

聴神経腫瘍は一般的に成長がゆっくりとしており、初期は耳鳴りや軽度の難聴が中心ですが、腫瘍が大きくなるにつれて頭痛や顔面のしびれなど症状の範囲が広がることがあります。診断にはMRI検査や聴力検査など複数の検査が組み合わされます。症状の進行パターンと受診の流れを知ることが、早期発見への一歩になります。

大津 和弥

監修医師:
大津 和弥(医師)

三重大学医学部卒業。三重大学附属病院で研修。市立四日市病院、三重大学附属病院などに勤務後、国立がんセンター東病院研修。三重大学附属病院 耳鼻咽喉・頭頸部外科 講師を務め、小松病院で一色信彦、田邊正博の音声外科医師の指導の下音声外科手術を研鑽。市立ひらかた病院耳鼻咽喉科部長、市立ひらかた病院耳鼻咽喉科主任部長、音声外科センター長などを歴任。大阪医科薬科大学臨床教授。現在は大津耳鼻咽喉科・ボイスクリニック 院長。

聴神経腫瘍の初期症状②:進行に伴う症状の変化と診断の流れ

このセクションでは、腫瘍が成長するにつれて現れる症状の変化と、診断に至るまでの一般的な検査の流れについて解説します。症状の進行パターンを知ることで、適切なタイミングで医療機関を受診する判断材料になります。

腫瘍の大きさと症状の関係

聴神経腫瘍は一般的に成長が遅く、1年あたり数ミリ程度という緩やかなペースで大きくなるとされています。ただし、成長速度には個人差があり、長期間ほとんど変化しないケースもあれば、急速に増大するケースもあります。

腫瘍の大きさが小さい段階では、耳鳴りや軽度の難聴が主な症状です。腫瘍が内耳道(ないじどう)の中に留まっている場合は、聴覚と平衡感覚に関わる症状が中心となります。腫瘍が大きくなり脳幹や小脳(しょうのう)付近に及ぶようになると、頭痛、顔面のしびれ、嚥下困難(えんげこんなん)、声のかすれなどの症状が加わることがあります。さらに進行すると、脳室内に脳脊髄液が過剰に溜まり、脳を内側から圧迫する状態(水頭症)と呼ばれる脳脊髄液の流れが障害された状態が起こる可能性もあります。

症状が多岐にわたることから、脳神経内科や耳鼻咽喉科で診察を受ける際に、症状の経過を丁寧に伝えることが診断の精度を高めるうえで役立ちます。

診断に用いられる主な検査

聴神経腫瘍の診断では、複数の検査が組み合わせて行われます。以下に主な検査を紹介します。

聴力検査(オージオグラム):純音聴力検査では、どの音域でどの程度の難聴があるかを測定します。聴神経腫瘍では特定の音域で左右差が生じやすく、スクリーニング(ふるい分け)として有用です。

ABR(聴性脳幹反応)検査:音刺激に対する脳幹の電気的反応を記録する検査で、聴神経の機能を評価します。聴神経腫瘍では反応の遅延や消失が見られることがあります。

MRI検査(造影MRI):腫瘍の存在・大きさ・位置を確認するうえで、現在もっとも信頼性の高い画像診断方法のひとつです。ガドリニウムという造影剤を使用することで、腫瘍がより明確に描出されます。聴神経腫瘍の確定診断にはMRI検査が不可欠であり、症状が疑われる場合は積極的に検討されます。

平衡機能検査(重心動揺検査など):前庭機能の評価や、ふらつきの程度を客観的に測定するために行われます。

診断までにかかる時間と受診の流れ

聴神経腫瘍は初期症状が他の疾患と重なりやすいため、診断が確定するまでに数ヶ月から数年かかるケースがあります。多くの場合、最初に耳鼻咽喉科を受診し、聴力検査やABR検査を経て、精密検査としてMRIが実施されるという流れが一般的です。

MRIで腫瘍が確認された場合は、脳神経外科(のうしんけいげか)や耳鼻咽喉科での専門的な診察・治療方針の検討へと進みます。腫瘍の大きさや症状の程度に応じて、経過観察、放射線治療、手術のいずれかが選択されます。症状に心当たりがある方は、まず耳鼻咽喉科で相談することが一般的な受診の入り口になります。

まとめ

聴神経腫瘍は、耳鳴りや片側の難聴、めまいといった日常的な症状のなかに潜んでいることがあります。良性腫瘍ではありますが、発見が遅れると治療の選択肢が限られることもあるため、症状が続く場合は早めに耳鼻咽喉科や神経内科へ相談することが大切です。治療法には経過観察・放射線治療・手術の3種類があり、いずれも基本的に保険診療の範囲で対応できます。また、高額療養費制度など公的支援を活用することで、費用面の不安も軽減できます。まずは専門機関への受診を検討してみてください。

参考文献

国立がん研究センターがん情報サービス「脳腫瘍(成人)」

日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「耳の病気」

難病情報センター「神経線維腫症Ⅱ型(指定難病34)」

厚生労働省「34 神経線維腫症 」

配信元: Medical DOC

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