5歳の娘と2人で、新幹線で出かけたときの話です。富士山を見せてあげようと、娘には窓側の席を予約していました。しかし当日、娘と一緒に自分たちの座席へ向かうと、すでに老夫婦が並んで座っていたのです。
指定席トラブルのあと…
戸惑いながら「あの、ここは私たちの指定席のようなのですが……」と乗車券を見せると、通路側に座っていた旦那さんが自分の乗車券を見るなり「どこが間違ってるんだ! 席番号もちゃんとあっているじゃないか! そっちが日付か何かを間違えてるんだろ!」と声を荒げました。突然の剣幕に私は言葉を失ってしまいました。娘も怖がって、私の服をぎゅっと掴んでいます。
すると窓側に座っていた奥さんが「ちょっと、落ち着いて」と旦那さんをなだめながら、お互いの乗車券をよく見比べてくれました。しばらくして奥さんが「あなた、私たちのほう、号車が違うわよ……」と静かに伝えると、旦那さんはバツが悪そうに黙り込みました。「ごめんなさいね」と奥さんが謝りながら荷物をまとめ、旦那さんも文句をぶつぶつ言いながらも席を立ってくれました。
ようやく娘と席について一息つき、富士山を無事に眺めることができました。娘も「わあ、富士山だ!」と大喜びです。しかし、もうすぐ次の駅に到着するというころ、先ほどの老夫婦が再び私の席まで来て、旦那さんから「おいっ」と声をかけられました。私はまた何か言われるのかと身構えましたが、奥さんの手には、たこ焼きを持ったかわいらしい人気キャラクターが印字されたお菓子が。
そして「先ほどは主人が大変失礼なことを言ってしまって、本当にごめんなさい。これ、私たちの旅の思い出なんですけれど、お詫びにどうぞ」と差し出してくれたのです。娘が「ありがとう!」と笑顔でお菓子を受け取ります。旦那さんは気まずそうに「……悪かったな」とひと言。その後、駅のホームから笑顔で私たちに手を振りながら見送ってくれる奥さんと、ぶっきらぼうに顔をそむけつつも同じく手を振って見送ってくれた旦那さんの姿に、なんだか温かな気持ちになりました。
思いがけない出来事でしたが、自分の非を素直に認めて謝ることの大切さと、フォローひとつで相手も自分も気持ちよくなれることを改めて実感した出来事でした。娘には、自分が悪いと気づいたら素直に謝ること、言い争いになりそうな場面では落ち着いてお互いの話を聞くことを教えていこうと思います。
著者:鮎川 京子/30代女性・会社員
5歳の娘を育てるシングルマザー。娘の推し活に付き合うのが好き。
作画:たかだきなこ
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2026年7月)

