「柔らかい食事」は認知症の“原因”?脳の衰えを招く『あの習慣』とは

「柔らかい食事」は認知症の“原因”?脳の衰えを招く『あの習慣』とは

噛む力は、日常的な使い方によって変化します。
食事で主に使われる咬筋・側頭筋などの咀嚼筋は、柔らかい食事が続くと使われる機会が減り、徐々に筋力が低下します。
また、顎の骨(歯槽骨)は噛む力の刺激によってその密度が保たれています。柔らかい食事ばかりでは刺激が不十分となり、歯を支える骨が少しずつ痩せていく可能性があります。
歯の機能が低下すると、根菜やナッツなど硬い食品を避けるようになり、栄養の偏りや低栄養につながりかねません。
さらに、よく噛まずに飲み込もうとすると誤嚥のリスクが高まります。噛む力の低下を「歯だけの問題」ではなく、全身の健康に関わる問題として捉えることが大切です。

田頭 秀悟

監修医師:
田頭 秀悟(たがしゅうオンラインクリニック)

鳥取大学医学部卒業。「たがしゅうオンラインクリニック」院長 。脳神経内科(認知症、パーキンソン病、ALSなどの神経難病)領域を専門としている。また、問診によって東洋医学的な病態を推察し、患者の状態に合わせた漢方薬をオンライン診療で選択する治療法も得意としている。日本神経学会神経内科専門医、日本東洋医学会専門医。

柔らかい食事ばかり:認知症リスクを高める要注意な習慣①

柔らかい食事そのものが問題なのではなく、それに付随しやすい生活習慣の積み重ねが認知症リスクを高める可能性があります。日常の中に潜む、見過ごされやすい習慣を具体的に確認しておきましょう。

食事時間が短すぎる習慣

柔らかい食事ばかりになると、噛む回数が自然と減り、食事時間が短くなる傾向があります。食事に費やす時間が短いことは、単に咀嚼回数の減少だけでなく、さまざまな健康上のリスクを伴います。
食事時間が短いと、満腹感に関わるホルモン(コレシストキニンやGLP-1など消化管から分泌されるホルモン)や血糖値の上昇が脳の満腹中枢に伝わるまでには一定の時間がかかります。早食いになると、このシグナルが届く前に食べ過ぎてしまいやすく、肥満や高血糖のリスクが高まり、これらは糖尿病や脂質異常症の発症に関与します。糖尿病はアルツハイマー型認知症の発症リスクを高めることが知られており、インスリン抵抗性(インスリンの働きが低下した状態)が脳のアミロイドβ蓄積と関係する可能性も研究によって示されています。
また、食事時間が短いと、食事そのものが脳への刺激になりにくくなります。食事は視覚・嗅覚・味覚・触覚・聴覚という五感をすべて刺激する活動です。時間をかけてゆっくり食べることで、脳はこれらの感覚情報を統合し、多面的な刺激を受け取ります。この「食事を楽しむ」という行為そのものが、認知機能の維持に役立つと考えられています。

単品・偏った食事の繰り返し

柔らかい食事が中心になると、食品の選択肢が自然と狭まります。パン、麺類、お粥、プリン、豆腐といった食品に偏りやすくなり、栄養の多様性が失われます。
認知症リスクとの関連では、特定の栄養素の過不足が問題になることがあります。たとえばビタミンB12や葉酸の不足は脳の神経細胞に悪影響を及ぼすリスクが指摘されています。また、良質なたんぱく質の不足は筋肉量の減少だけでなく、脳の神経伝達物質の原料不足にもつながります。オメガ3系脂肪酸(DHA、EPAなど)は神経細胞の膜成分として重要であり、魚介類の摂取が少なくなると不足しがちです。
単品の食事を繰り返すことは、栄養的な多様性だけでなく、食事に関連する認知活動(何を食べようか考える、料理する、複数の食品を組み合わせるなど)の機会も減らしてしまいます。こうした日常的な判断活動の低下が、脳への刺激を減らす一因になると考えられています。

まとめ

柔らかい食事ばかりという習慣は、噛む力の低下や口腔機能の衰えを通じて、認知症リスクとも関わりを持つことが明らかになってきています。咀嚼は脳への刺激、栄養の多様性の確保、口腔環境の維持など、さまざまな経路で健康に貢献します。日常の食事に意識的に噛み応えのある食品を取り入れ、口腔ケアと適度な運動・社会的なつながりを合わせて維持することが、脳と身体の健康を長く保つうえで大切な一歩となるでしょう。

参考文献

日本歯科医師会「8020運動」とは?

公益社団法人 日本歯科医師会 「歯科診療所におけるオーラルフレイル対応マニュアル 2019年版」

厚生労働省 e-ヘルスネット「口腔機能の健康への影響」

日本臨床歯周病学会 「歯周病が全身に及ぼす影響」

配信元: Medical DOC

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