「階段を上ると息が切れる」のは要注意?大人が見過ごしがちな徐脈のサイン【医師監修】

「階段を上ると息が切れる」のは要注意?大人が見過ごしがちな徐脈のサイン【医師監修】

完全房室ブロックのなかには、数ヶ月から数年かけてゆっくりと進行するタイプもあります。「以前より疲れやすくなった」「外出がおっくうになった」といった変化は、加齢による自然な変化と思われがちです。このセクションでは、症状が慢性的に続くケースで現れやすい身体的・精神的な変化と、生活の質(QOL)への影響について詳しくお伝えします。

本多 洋介

監修医師:
本多 洋介(Myクリニック本多内科医院)

群馬大学医学部卒業。その後、伊勢崎市民病院、群馬県立心臓血管センター、済生会横浜市東部病院で循環器内科医として経験を積む。現在は「Myクリニック本多内科医院」院長。日本内科学会総合内科専門医、日本循環器学会専門医、日本心血管インターベンション治療学会専門医。

完全房室ブロックの症状と日常生活への影響

完全房室ブロックは、心臓の電気信号が心房から心室へまったく伝わらなくなる不整脈です。発症すると失神や強いめまいなどの症状が現れることがありますが、なかには自覚症状が目立たず、ゆっくり進行するケースもあります。そのため、体調の変化を「年齢のせい」「疲れがたまっているだけ」と考えて見過ごしてしまう方も少なくありません。

しかし、心拍数の低下によって全身への血液供給が不足すると、日常生活のさまざまな場面に影響が及びます。仕事や家事、趣味、運動といった活動の質が徐々に低下し、本人も気づかないうちに生活範囲が狭くなっていることがあります。このセクションでは、完全房室ブロックによって現れる慢性的な変化や、精神面への影響について詳しく解説します。

日常生活で気づきにくい慢性的な変化

完全房室ブロックのなかには、急激に症状が悪化するケースだけでなく、数か月から数年かけてゆっくり進行するタイプもあります。この場合、身体がある程度低い心拍数に適応してしまうため、異常に気づきにくいことがあります。

例えば、「最近階段を上ると息が切れやすい」「買い物に出かけるだけで疲れる」「以前は問題なくできていた散歩や運動がつらくなった」といった変化がみられることがあります。こうした症状は、心拍数の低下によって十分な血液が全身へ送り出されなくなることで生じます。筋肉や脳に必要な酸素が行き渡りにくくなるため、体力の低下や疲労感として現れるのです。

また、「朝起きても疲れが取れていない」「昼間に強い眠気を感じる」「集中力が続かない」といった症状がみられることもあります。脳への血流が慢性的に不足すると、思考力や判断力の低下につながる場合があり、仕事や学業にも影響を及ぼす可能性があります。

高齢の方では、「歩く速度が遅くなった」「外出がおっくうになった」「家にいる時間が増えた」といった変化として現れることもあります。本人は加齢による自然な変化だと思っていても、実際には心拍数の低下が背景にあるケースも少なくありません。

特に次のような症状が継続している場合は、一度循環器内科で相談することが望ましいでしょう。

・安静時の脈拍が極端に遅い(一般的に1分間50回以下が続く)
・立ち上がるとふらつくことがある
・少しの運動でも息切れしやすい
・慢性的な疲労感や倦怠感がある
・集中力の低下や眠気を感じることが多い
・以前より活動量が減った

これらの症状は単独では目立たなくても、複数が重なっている場合には心臓の電気伝導障害が関与している可能性があります。早期に原因を特定することで、重症化の予防や生活の質の改善につながることが期待されます。

精神的な不安とQOLへの影響

完全房室ブロックは身体症状だけでなく、精神的な側面にも大きな影響を与えることがあります。特に、失神や強いめまいを経験した方では、「また突然倒れるのではないか」という不安を抱きやすくなります。

例えば、一人で外出することを避けるようになったり、人混みや長距離の移動を不安に感じたりする方もいます。失神による転倒経験がある場合には、その恐怖が強く残り、日常生活の行動範囲が大きく制限されることもあります。結果として、趣味や社会活動から距離を置くようになり、孤立感や抑うつ気分につながるケースもみられます。

また、完全房室ブロックの治療としてペースメーカー植え込み術を受けた方のなかには、「機械に頼る生活になった」「本当に正常に動いているのだろうか」といった不安を抱く方もいます。しかし、現在のペースメーカーは高い安全性と信頼性を備えており、多くの患者さんが植え込み後に以前と変わらない日常生活を送っています。

実際には、ペースメーカーによって心拍数が安定することで、息切れや疲労感が改善し、活動量が増える方も少なくありません。定期的な点検やフォローアップを受けることで機器の状態を確認できるため、過度に心配する必要はないとされています。

一方で、不安やストレスを抱えたまま生活すると、睡眠の質の低下や活動意欲の低下につながる可能性があります。そのため、完全房室ブロックの管理では、心臓そのものの治療だけでなく、精神面へのサポートも重要です。担当医や医療スタッフと十分にコミュニケーションを取り、不安な点を相談できる環境を整えることが、安心して生活を送るための大切なポイントになります。

完全房室ブロックは適切な診断と治療によってコントロールできる疾患です。身体症状だけでなく、生活の質や心理的な負担にも目を向けながら、継続的な管理を行うことが重要といえるでしょう。

まとめ

完全房室ブロックは、心臓の電気信号が心室に伝わらなくなることで、徐脈・倦怠感・失神・めまいといったさまざまな症状を引き起こす不整脈です。前兆となる脈の乱れや前失神の段階で気づくことができれば、早期の介入につながります。症状が気になる方は、循環器内科での心電図検査を早めに受けることが大切です。ペースメーカー治療によって多くの方が症状の改善と生活の質の向上を実感しており、適切な治療と定期的なフォローアップが心臓の健康を守ります。

参考文献

日本循環器学会「不整脈非薬物治療ガイドライン(2018年改訂版)」

国立循環器病研究センター「不整脈」

配信元: Medical DOC

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