糖尿病を抱える方は、脳動脈硬化症のリスクが高まりやすいとされています。高血糖が血管内皮を傷つけ、動脈硬化を進める経路があるためです。HbA1cの管理目標を意識しながら、血糖・血圧・脂質を包括的に整えることが、脳血管への負担を和らげることにつながります。食事の順番や食後の軽い運動、ストレスケアなど、日常の小さな積み重ねが長期的な健康を支えていきます。

監修医師:
田頭 秀悟(たがしゅうオンラインクリニック)
鳥取大学医学部卒業。「たがしゅうオンラインクリニック」院長 。脳神経内科(認知症、パーキンソン病、ALSなどの神経難病)領域を専門としている。また、問診によって東洋医学的な病態を推察し、患者の状態に合わせた漢方薬をオンライン診療で選択する治療法も得意としている。日本神経学会神経内科専門医、日本東洋医学会専門医。
脳動脈硬化症と糖尿病の関係②|合併した場合の治療と日常管理
糖尿病と脳動脈硬化症を同時に抱える場合、治療の方針はより慎重かつ包括的なアプローチが求められます。このセクションでは、両者を合併した場合の治療の考え方と、日常生活での管理のポイントを解説します。
糖尿病と脳動脈硬化症を合併した場合の治療方針
糖尿病と脳動脈硬化症が合併している場合、それぞれの疾患を別々に管理するのではなく、血糖・血圧・脂質の3つを同時に管理する「包括的リスク管理」が基本となります。
血糖コントロールには、食事療法・運動療法に加えて、必要に応じた薬物療法が組み合わされます。経口血糖降下薬や、GLP-1受容体作動薬・SGLT2阻害薬といった比較的新しい薬剤の中には、血糖降下作用に加えて心血管保護作用が認められているものもあります。主治医と相談しながら、それぞれの身体の状態に合った薬を選ぶことが大切です。
血圧管理においては、糖尿病を合併している場合の降圧目標が、一般の高血圧患者さんよりも厳しく設定されることがあります。日本高血圧学会のガイドラインでは、糖尿病を合併した高血圧患者さんの診察室血圧目標を130/80mmHg未満としています。
脂質管理では、LDLコレステロールの目標が120mg/dL未満(冠動脈疾患合併例では100mg/dL未満)とされることがあります。スタチン系薬は、この目標達成のために広く用いられていますが、前述のようにLDLコレステロールの上昇が健康へ貢献的に働いている場合もありますので、主治医と相談の上、薬物療法については慎重に判断する必要があります。
また、糖尿病を合併した患者さんでは、体重管理が重要です。肥満は血糖・血圧・脂質のすべてに悪影響を与えるため、適切な体重を維持することが脳動脈硬化症の進行抑制にも直結します。
糖尿病患者さんの日常生活での脳動脈硬化症対策
医療機関での治療と並行して、日常生活での自己管理が脳動脈硬化症の進行を抑えるうえで欠かせません。特に糖尿病を持つ方は、血糖値の急激な変動を防ぐ食事の工夫が大切です。
食事では、食べる順番(野菜→たんぱく質→炭水化物の順)や、ゆっくりよく噛んで食べることで、食後の血糖値の急上昇を緩やかにすることができます。また、1日3食を規則正しいタイミングで摂ることも、血糖コントロールを安定させるうえで重要です。
運動に関しては、食後30〜60分後に軽いウォーキングを行うことが、食後高血糖を抑えるうえで効果的とされています。筋肉を動かすことでブドウ糖が消費されやすくなり、インスリンの効きもよくなる可能性があります。
日常的なストレス管理も見落とせない要素です。ストレスが高まると、血糖を上昇させる方向に作用するホルモン(コルチゾールなど)が分泌され、血糖コントロールが乱れやすくなります。睡眠をしっかり取り、心身をリラックスさせる時間を意識的に設けることが、血管の健康を守ることにもつながります。
頭痛・めまい・手足のしびれ・言語障害などの症状が現れた場合は、脳動脈硬化症が進行しているサインである可能性があります。そのようなときは、速やかに神経内科などを受診することが強く望まれます。
まとめ
脳動脈硬化症は、ある日突然現れるものではなく、長年の生活習慣の積み重ねによって少しずつ進行する疾患です。血圧・コレステロール・血糖といった基準値を把握し、異常があれば早期に対処することが、深刻な脳血管疾患の予防につながります。糖尿病を抱える方は特に、血管へのダメージが重なりやすいため、包括的なリスク管理が求められます。気になる症状がある方や、健康診断で数値の異常を指摘された方は、ぜひ神経内科や糖尿病内科などへご相談ください。日々の小さな積み重ねが、将来の大きな病気を防ぐ力になります。
参考文献
日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」
日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」
厚生労働省「健康・医療生活習慣病予防」
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