厚生労働省が8月28日「2023年度介護保険事業状況報告書」を発表しました。
2023年度末時点の要介護(要支援)認定者数が前年度比で13万9000人増の708万8000人になったなど、さまざまなデータが示されていますが、今回はその中から「要介護認定率」に注目してみます。

第1号被保険者に占める要介護認定者(要支援含む:以下同)の割合は、全国平均で19.4%となっています。
これを都道府県別にみてみると、大阪府が最も高く23.7%となりました。
2位は京都府の23.0%、和歌山県の21.0%であり、関西圏が上位となっています。
一方で最も低いのは茨城県の16.1%。次いで宮崎県の16.2%、栃木県の16.3%となっており、地域差が非常に大きいのが特徴です。
介護事業者の視点で言えば「関西圏は高齢者人口に占める要介護認定者の割合が高く『ビジネス』という点では魅力的なマーケット」と言えるかもしれません。
では、なぜ要介護認定率にここまで大きな地域差が出るのでしょうか。
まず、要介護認定というのは、本人や家族が「介護が必要な状態になったと思われます」と自治体に申請をしなくてはいけません。
ですから要介護認定率が低い地域は、申請をする人の割合自体が少ないことが考えられます。
例えば、要介護認定率が低い県を見てみると、東京への通勤圏内である茨城県の南西部を除いてはいわゆる「地方」です。
子どもや孫と同居する高齢者の割合も大都市圏より高く、身体的には介護が必要でも家族などのサポートで生活ができているケースもあるでしょう。

それに対し、大阪府は単身高齢者が多いという現実があります。
2020年時点の府内の高齢者世帯に占める単身者の割合は39.3%で、全国平均の33.1%を上回っています。
家族のサポートを受けられないことが、公的な介護保険サービスに頼らないといけないという理由につながっています。
特に、大阪の場合は日雇い労働などで生計を立てて来た単身高齢者が数多く住んでいる地域もあります。
そして、住宅事情も考えられます。
特に大阪では単身高齢者がいわゆる文化住宅などの古く狭小な賃貸住宅に住んでいるケースが少なくありません。
賃貸ですから自身でバリアフリー対応にするにも限度があります。

このほか、エレベーターが無い、電化キッチンになっていない、浴槽が高すぎる(深すぎる)など高齢者が一人で生活するには不都合な点が多いということも要介護認定率の高さにつながっているのではないでしょうか。
もっとも、最近はこうした文化住宅や長屋が開発により姿を消し、複数の分譲戸建て住宅やマンションなどに生まれ変わっています。
しかし、これらの住宅は単身高齢者の居住は想定していません。
そこに有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅とまではいかないまでも、高齢者の生活を支える何等かの機能が付いた賃貸住宅が整備され、加えて地域社会が見守りや緊急対応などの機能を十分に発揮することで、介護が必要なレベルの高齢者でも生活ができるようになるかもしれません。
それが結果として要介護認定率を引き下げることにもつながると思われます。

2024年度以降の介護保険料を保険者別にみてみると、大阪市が全国で一番高く9249円です。
次いで守口市の8970円、門真市の8749円とトップ3を大阪が占めています。
このほか松原市が7位に入っており、大阪府は「高齢者が住みにくい街」であると言えます。
しかし、要介護認定率が下がれば、介護保険料が下がる可能性もあります。
介護保険給付を減らすには、「運動など生活習慣に気を配り、介護予防に努める」という高齢者本人の意識も大事ですが、「要介護になっても自力で生活できるようにする」という環境づくりも重要なキーワードになりそうです。
介護の三ツ星コンシェルジュ



