大動脈弁硬化症のリスク因子を複数持つ方には、日々の生活習慣の改善と定期的な検査の継続が大切です。食事・運動・禁煙・節酒といった取り組みは、心臓への余分な負担を減らすことに役立ちます。焦らず、無理のない範囲で一歩ずつ取り組んでいただけるよう、具体的な対策をご紹介します。

監修医師:
本多 洋介(Myクリニック本多内科医院)
群馬大学医学部卒業。その後、伊勢崎市民病院、群馬県立心臓血管センター、済生会横浜市東部病院で循環器内科医として経験を積む。現在は「Myクリニック本多内科医院」院長。日本内科学会総合内科専門医、日本循環器学会専門医、日本心血管インターベンション治療学会専門医。
大動脈弁硬化症になりやすい人への対策と日常生活での注意点
リスク因子を持っている方にとって、大切なのは日常生活のなかで実践できる対策を継続することです。このセクションでは、生活習慣の改善と医療機関との関わり方について解説します。
生活習慣の見直しで進行を抑える
大動脈弁硬化症は現時点で進行を完全に止める方法は確立されていません。大動脈弁の石灰化を確実に遅らせる方法はまだ見つかっていませんが、血圧や血糖値を適切に保つことは、心臓にかかる余分な負担を減らすことにつながります。弁の状態は医師に任せて定期検査を受けながら、ご自身では無理のない範囲で全身の健康維持を心がけましょう。
食事の見直しは、脂質異常症や糖尿病、高血圧の管理において基本となります。塩分の摂り過ぎに注意し、野菜・魚・大豆製品を中心としたバランスのよい食事を心がけることが推奨されます。また、飽和脂肪酸(肉の脂身やバターなどに多く含まれる脂肪)を控え、不飽和脂肪酸(青魚やオリーブオイルなどに多い脂肪)を積極的に摂ることも、血中コレステロールの管理に役立ちます。
適度な運動は、血圧の低下、体重管理、血糖コントロールに効果が期待できます。ウォーキングや軽い有酸素運動を1日30分程度、週に5日を目安に行うことが一般的に推奨されます。ただし、大動脈弁狭窄症が中等度以上に進行している場合は、激しい運動が心臓への過度な負担となることがあるため、運動の種類や強度については担当医に確認することが重要です。
禁煙は、喫煙習慣がある方にとって取り組むべき課題の一つです。禁煙補助薬や禁煙外来を活用することで、禁煙の成功率が高まることが知られています。
節酒も忘れてはなりません。過度な飲酒は血圧を上昇させ、脂質異常症を悪化させる原因となります。適量(1日ビールなら中瓶1本程度)を守ることが望ましいです。
定期的な検査と医療機関との連携
大動脈弁硬化症と診断された後は、定期的な経過観察が欠かせません。自覚症状がなくても、心エコー検査や血液検査を定期的に受けることで、病状の変化を早期に把握できます。担当医からの指示に従い、検査の受け忘れがないよう注意することが大切です。
大動脈弁硬化症から大動脈弁狭窄症への進行が確認された場合は、重症度に応じた治療が検討されます。中等度以上の大動脈弁狭窄症では、症状の有無や心臓の機能に応じて、外科的な弁置換術(手術で弁を人工弁に取り替える治療)や経カテーテル的大動脈弁留置術(TAVIなど、カテーテルという細い管を使って新しい弁を留置する治療)が選択されることがあります。
心臓に関係する症状として、胸の痛みや圧迫感、運動時の息切れ、立ちくらみや失神などが現れた場合は、速やかに医療機関を受診してください。これらの症状は大動脈弁狭窄症が進行しているサインである可能性があります。
受診の際には、健康診断の結果や既往歴(これまでにかかった病気)、内服薬の情報などをまとめておくと、担当医との相談がスムーズに進みます。家族歴(親族の疾患歴)も伝えることで、より個別化された管理が受けられます。
日々の生活習慣の改善と定期的な医療機関への受診を組み合わせることが、大動脈弁硬化症との長期的な向き合い方の基本となります。一人ひとりの状況に合わせた対策を、担当医と連携しながら続けていただくことが大切です。
まとめ
大動脈弁硬化症は加齢や動脈硬化、生活習慣病などを背景に、心臓の弁に石灰化が進む状態です。自覚症状が現れにくい段階から進行することが多いため、定期的な心エコー検査による経過観察が重要な意味を持ちます。最大血流速度などの基準値を把握して定期的な検査を受けるとともに、血圧・脂質・血糖を適切に管理して全身の血管の健康を保つことが、将来を見据えた大切な備えとなります。気になる症状や検査結果がある方は、ぜひ循環器内科への受診をご検討ください。
参考文献
日本循環器学会「弁膜症治療のガイドライン(2020年改訂版)」
国立循環器病研究センター「大動脈弁狭窄症について」 国立循環器病研究センター「心エコー検査とは」- 悪玉コレステロールと『前立腺がん』の意外な関係をご存じですか? 尿トラブルのサインを医師が解説
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