涙袋が腫れた時、身体はどんなサインを発しているのでしょうか?メディカルドック監修医が解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。
※この記事はメディカルドックにて『「涙袋が腫れる」原因と対処法をご存知ですか?医師が徹底解説!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
村上 友太(東京予防クリニック)
2011年福島県立医科大学医学部卒業。2013年福島県立医科大学脳神経外科学入局。星総合病院脳卒中センター長、福島県立医科大学脳神経外科学講座助教、青森新都市病院脳神経外科医長を歴任。2022年より東京予防クリニック院長として内科疾患や脳神経疾患、予防医療を中心に診療している。
脳神経外科専門医、脳卒中専門医、抗加齢医学専門医、健康経営エキスパートアドバイザー。
「涙袋が腫れる」症状で考えられる病気と対処法
涙袋が腫れる症状で考えられる病気には、細菌感染によるもの、アレルギー、皮脂腺の詰まりなどさまざまな可能性があります。なかには感染力が高いものや緊急性が高いものもあり、注意が必要です。症状から考えられる病気とその対処法についてご紹介します。
涙袋が腫れる症状で考えられる原因と治し方
まぶたの一部が赤く腫れ、軽めの痛みや痒みを伴うのがこの症状を指します。このような場合、麦粒腫などが疑われます。
麦粒腫(ばくりゅうしゅ)
麦粒腫は、「ものもらい」や「めばちこ」とも呼ばれます。まつげの近くにある汗腺や皮脂腺に細菌感染が起きることが原因で発症します。細菌が原因ですが、他人にうつることはありません。抗菌薬の点眼や内服が主な治療法です。また、汚い手で目をこすったりしないように注意することも重要です。症状がひどくなる前に眼科を受診しましょう。
突然、涙袋が腫れる症状で考えられる原因と治し方
突然、まぶたが腫れ、赤みやかゆみを伴うような症状を指します。このような場合、接触性皮膚炎などが疑われます。
接触性皮膚炎・かぶれ
接触性皮膚炎は「かぶれ」とも呼ばれ、原因物質に対するアレルギーやそれ自体の刺激が原因となり症状を引き起こします。多くの場合、化粧品や目薬が目の周りの皮膚の接触性皮膚炎の原因となります。
すぐできる処置は、患部を触らないようにし、熱いお湯での洗顔は避けることです。治療には、原因物質の特定とその除去が大切です。そのため、医療機関ではパッチテストを行うこともあります。症状が目の周りだけでなく体の他の部分に現れたり、息苦しさを感じたりする場合は、すぐに眼科を受診しましょう。
涙袋が腫れて赤い症状で考えられる原因と治し方
涙袋が腫れて赤い、痛みがある、涙や目やにが出るなどの症状を指します。このような場合、涙のう炎などが疑われます。涙のうとは、目から排出された涙が流れ込む器官です。
涙のう炎
涙のう炎とは、涙のうから鼻へと続く管がふさがることにより、感染が起きる病気です。アレルギーや鼻の手術、外傷などが原因となります。抗菌薬による治療を行いますが、根治する(根本から治療する)には手術で涙の流れる道を再建する必要があります。症状が気になる場合には眼科を受診しましょう。
片目の涙袋が腫れる症状で考えられる原因と治し方
片方の涙袋が腫れている症状を指します。このような場合、麦粒腫や霰粒腫などが疑われます。麦粒腫はまつ毛付近の皮脂腺や汗腺に細菌感染が起き、痛みや腫れを引き起こす病気です。霰粒腫は皮脂腺が詰まることにより腫れや赤くなるなどの症状が現れる病気です。通常痛みを伴いません。軽度の霰粒腫には、温めたタオルなどをまぶたに10分ほど押し当て、マッサージをしましょう。詰まりを和らげ、早く回復することがあります。治らない場合は、切開して内容物を排出する必要があるため、眼科を受診しましょう。
涙袋が腫れてかゆい症状で考えられる原因と治し方
涙袋が腫れてかゆいという症状を指します。このような場合、アレルギー性結膜炎などが疑われます。
アレルギー性結膜炎
アレルギー性結膜炎は、免疫が過剰に反応してしまうことにより涙やかゆみ、腫れなどを引き起こす病気です。スギ花粉などの季節性のものと、ハウスダストやホコリなど通年性のものがあります。症状を抑えるには、アレルギーの原因物質の特定と除去が大切です。スギ花粉が原因の場合は、ゴーグルで目を保護することや、防腐剤フリーの人工涙液で花粉を洗い流すことも効果があるとされています。症状がひどい場合は眼科を受診しましょう。
子供・赤ちゃんの涙袋が腫れる症状で考えられる原因と治し方
赤ちゃんに涙袋が腫れる、赤くなる、涙が多いなどの症状が見られることがあります。このような場合、新生児涙嚢炎(るいのうえん)などが疑われます。目の内側から鼻にかけての涙の通り道が先天的に詰まってしまっていると涙がうまく排出されず、涙のうという涙の溜まる袋に細菌感染が起き、炎症を起こします。抗菌薬の点眼やマッサージを行い経過をみたうえで、よくならない場合は手術療法も検討します。
特に赤ちゃんや子どもは治療が遅れると視力に大きな影響を及ぼします。症状がある場合は必ず眼科を受診されることをお勧めします。
すぐに病院へ行くべき「涙袋が腫れる」に関する症状
ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。
応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。
涙袋が腫れて強い痛みがある場合は、眼科へ
痛みが強い、まぶたや目の周りが腫れる、目が赤くなる、物が二重に見えるなどの症状がある場合は眼窩蜂窩織炎(がんかほうかしきえん)という病気の可能性があります。眼窩とは眼球が収まっている空間のことで、眼窩内や眼の周囲の組織に感染が起こるのが眼窩蜂窩織炎です。鼻の周りの副鼻腔から波及した感染や、動物や昆虫による刺し傷などから発症することもあります。
十分な治療を行わないと失明に繋がることもある恐ろしい病気ですので、腫れに加え痛みが強い場合はできるだけ早く眼科を受診しましょう。

