「きついネクタイの着用」は危険?緑内障のリスクになりやすい人の特徴と対策

「きついネクタイの着用」は危険?緑内障のリスクになりやすい人の特徴と対策

眼圧の上昇が視神経にどのような影響を与えるのか、ご存じでしょうか。眼圧が高い状態が続くと視神経への負担が増し、緑内障のリスクが高まるとされています。一方で、眼圧が正常範囲内でも発症する「正常眼圧緑内障」も存在します。眼圧だけでは判断できない緑内障の実態と、日常生活での注意点について整理します。

柳 靖雄

監修医師:
柳 靖雄(医師)

東京大学医学部卒業。その後、東京大学大学院修了、東京大学医学部眼科学教室講師、デューク・シンガポール国立大学医学部准教授、旭川医科大学眼科学教室教授を務める。現在は横浜市立大学視覚再生外科学教室客員教授、東京都葛飾区に位置する「お花茶屋眼科」院長、「DeepEyeVision株式会社」取締役。医学博士、日本眼科学会専門医。

きついネクタイ・首元の締め付けと緑内障の関係|緑内障のリスクと日常的な予防策

このセクションでは、きついネクタイの着用習慣が緑内障リスクにどのように関わる可能性があるのかを、緑内障という疾患そのものの特徴とあわせて詳しく解説します。また、首元の締め付けによる影響をできるだけ減らし、眼の健康を守るために日常生活で実践できる予防策についても紹介します。緑内障は早期発見と継続的な管理が重要な疾患であるため、日々の何気ない習慣にも目を向けることが大切です。

緑内障とはどのような疾患か

緑内障とは、眼球と脳をつなぐ視神経が障害されることで、視野が徐々に狭くなっていく疾患です。視神経は、目で見た情報を脳へ伝える重要な役割を担っており、この神経が損傷すると視野の一部が欠けたり、見えにくい範囲が広がったりします。

日本において緑内障は決して珍しい病気ではありません。多治見研究では、40歳以上の人口で原発開放隅角緑内障の有病率は約3.9%(およそ25〜26人に1人)と報告されています。高齢化が進む現代社会において患者数はさらに増加すると考えられています。また、緑内障は日本における視力障害・失明の原因の一つとして知られており、視機能を守るためには早期の発見と治療が欠かせません。

緑内障が怖いといわれる理由の一つは、初期症状がほとんどないことです。視野の欠損は周辺部からゆっくり進行することが多く、片目ずつ進行するケースも少なくありません。そのため、反対側の目が視野を補うことで異常に気づきにくく、「見えづらい」と感じたときにはすでに病気が進行していることもあります。

緑内障の発症にはさまざまな要因が関係しています。代表的なものとして、加齢、遺伝的要因、眼圧の上昇、強い近視、高血圧や糖尿病などの全身疾患が挙げられます。特に眼圧は緑内障との関連が深く、眼圧が高い状態が続くと視神経への負担が大きくなり、障害が進行しやすくなると考えられています。

そこで注目されているのが、ネクタイやシャツの襟による首元の締め付けです。首周囲が強く圧迫されると、頭部や眼球周辺の静脈血の流れが滞り、一時的な眼圧上昇を引き起こす可能性が指摘されています。一方で、長時間着用が緑内障の発症・進行に直接つながることは、現時点では証明されていません。

ただし、家族に緑内障の方がいる場合や、過去に眼圧が高いと指摘された経験がある場合は注意が必要です。緑内障は一度失われた視野を元に戻すことが難しい疾患であるため、「まだ症状がないから大丈夫」と考えるのではなく、リスクを知り、予防的な対策を講じることが重要になります。

首元の締め付けを避けるための具体的な対策

きついネクタイや窮屈な襟元による影響を軽減するためには、日常生活のなかで首周囲への圧迫をできるだけ減らす工夫が大切です。難しい対策を行う必要はなく、普段の服装や生活習慣を少し見直すだけでも、眼や首への負担を軽減できる可能性があります。

まず意識したいのが、ネクタイの締め具合です。ビジネスシーンでは見た目を整えるためにネクタイを強く締めてしまう方もいますが、首元に圧迫感を覚えるほど締め付けることは避けたほうがよいでしょう。一般的には、ネクタイを締めた状態でも首元に指が1〜2本程度入る余裕を確保することが望ましいとされています。

また、長時間のデスクワークや会議などで同じ姿勢が続く場合は、定期的にネクタイを少し緩めたり、首や肩を動かしたりすることも有効です。首周辺の筋肉が緊張すると血流やリンパの流れが滞りやすくなるため、軽いストレッチを取り入れることで首周囲の循環改善が期待できます。

シャツ選びにも注意が必要です。首回りのサイズが小さいシャツを着続けていると、ネクタイを締めなくても常に首元が圧迫された状態になります。購入時にはデザインだけでなくサイズにも注目し、首回りに適度なゆとりがあるものを選ぶことが大切です。試着の際に窮屈さを感じる場合は、ワンサイズ上を検討するのもよいでしょう。

近年では働き方の多様化に伴い、ノーネクタイやビジネスカジュアルを導入する企業も増えています。勤務環境が許すのであれば、首元への負担が少ない服装を選択することも一つの方法です。特に夏場はクールビズを活用することで、首元の締め付けだけでなく熱中症対策にもつながります。

さらに重要なのが、定期的な眼科受診です。首元の締め付けを避けることだけで緑内障を完全に予防できるわけではありません。緑内障は自覚症状が出にくいため、症状の有無にかかわらず定期的な検査を受けることが早期発見につながります。眼圧測定に加え、視野検査や眼底検査、光干渉断層計(OCT)による視神経評価などを行うことで、初期の変化を捉えられる可能性があります。

特に40歳を過ぎた方、強い近視がある方、家族に緑内障患者がいる方、高血圧や糖尿病などの基礎疾患を抱えている方は、定期的な眼科検診を習慣化することが望まれます。日々の服装の見直しと定期的な眼のチェックを組み合わせることで、緑内障による視機能低下のリスクを減らし、大切な視力を長く守ることにつながるでしょう。

まとめ

きついネクタイや首元の締め付けは、頸静脈還流への影響を通じて一時的な眼圧上昇が報告されており、とくに緑内障やそのリスクがある方では、締め方の見直しや測定時の配慮が有用かもしれません。首や肩のこり、頭痛、集中力の低下などとの関連も指摘されていますが、多くは疲労・ストレス・デスクワークなど他の原因の方が多く、個人差も大きいです。

日常では、首元に指1〜2本分の余裕を持たせる、長時間のデスクワーク中に適度に緩める、40歳以降は症状の有無にかかわらず定期的な眼科検診(眼圧・視野・眼底など)を受ける、といった対策から始めてください。気になる症状が続く場合は、眼科や内科などへ早めにご相談ください。

本記事で述べている「きついネクタイと一時的な眼圧上昇」は複数の研究で報告されている事実です。一方で、ネクタイ着用と緑内障発症・進行の直接因果、または認知症・重大な脳疾患との関連を示す大規模研究は限られています。不安がある方は、症状の有無にかかわらず定期的な眼科検診をおすすめします。

参考文献

日本緑内障学会「緑内障診療ガイドライン(第5版)」

日本循環器学会「自律神経と循環器疾患」

配信元: Medical DOC

提供元

プロフィール画像

Medical DOC

Medical DOC(メディカルドキュメント)は800名以上の監修ドクターと作った医療情報サイトです。 カラダの悩みは人それぞれ。その人にあった病院やクリニック・ドクター・医療情報を見つけることは、簡単ではありません。 Medical DOCはカラダの悩みを抱える方へ「信頼できる」「わかりやすい」情報をお届け致します。