氷食症の治療法

氷食症が疑われるときは何科を受診すべきですか?
氷食症が疑われる際には、まずは内科を受診するとよいでしょう。氷食症は、鉄欠乏性貧血が原因であることが多いため、血液検査で鉄の状態を確認できる診療科が適しています。貧血が確認できない場合は、別の診療科への受診をすすめられる場合もあります。医師の判断に従いましょう。
参照:『II.鉄欠乏 1.日本の現状と病態』(一般社団法人日本内科学会)
氷食症で受診した際の診断や検査の流れを教えてください
氷食症の原因が鉄欠乏性貧血と疑われる場合、まず問診で症状の程度や食習慣、生活への影響を確認します。続いて血液検査を行い、鉄欠乏性貧血の有無を調べます。
鉄欠乏性貧血を診断するには、単に血液中の赤血球の大きさ(MCV)や血清鉄の値だけでは不十分です。正確な診断のため、主に下記の3点を確認します。
小球性貧血(MCV<80)
血清鉄の低下と総鉄結合能(TIBC)の上昇(TIBC≧360μg/デシリットル)
フェリチンの低下(<12ng/ミリリットル)
特に体内に鉄を貯蔵するフェリチンの数値が低いことや、総鉄結合能の数値が高いことは、鉄欠乏性貧血の診断において信頼性の高い指標です。
参照:『鉄欠乏性貧血の治療指針』(一般社団法人日本内科学会)
氷食症はどのように治療しますか?
氷食症は鉄欠乏性貧血との関係が深く、鉄分の補充が主な治療方法とされています。治療の第一選択はクエン酸第一鉄ナトリウムや硫酸鉄などの経口鉄剤です。通常、鉄剤の服用を開始して約6〜8週間で貧血の症状は改善します。
鉄剤の服用により、貧血の自覚がなかった患者さんも「身体が楽になった」「言われてみれば以前はつらかった」と感じることがあります。
ただし、ヘモグロビンが正常化しても鉄剤の服用をすぐに中止してはいけません。体内の鉄を十分に補うためにはさらに3〜4ヶ月間服用を続ける必要があります。また、鉄欠乏性貧血の再発を防ぐために治療後も定期的に血液検査を受け、鉄の状態を確認します。医師の指示にしたがって治療を進めていきましょう。
鉄分補充だけでは改善しない場合は、心理的な要因が関与している可能性があります。強迫性障害やうつ病などの精神的な問題が背景にある場合は、認知行動療法や抗うつ薬などが有効とされています。
参照:
『鉄欠乏性貧血の治療指針』(一般社団法人日本内科学会)
『Ask about ice, then consider iron』(Journal of the American Association of Nurse Practitioners)
編集部まとめ

氷食症は単なる氷好きではなく、背景に鉄欠乏性貧血が隠れている場合があります。鉄欠乏性貧血は特に女性に多く、放置すると日常生活に影響するほどの症状が現れます。
氷食症の疑いがある場合は、まずは内科で血液検査を受けてみましょう。鉄分不足が見つかれば、鉄剤の服用で症状の改善が期待できます。
氷食症は正しい診断と治療で改善できる病気です。ただのクセと思わず、早めに医療機関に相談しましょう。
参考文献
『Ask about ice, then consider iron』(Journal of the American Association of Nurse Practitioners)
『鉄欠乏性貧血の治療指針』(一般社団法人日本内科学会)
『鉄欠乏と異食症の関係一第1報 思春期の鉄欠乏性貧血における異食症の実態一』(日本小児保健協会)

