肝吸虫症の治療
治療には、プラジカンテルという駆虫薬が使われます。この薬は体内に寄生している肝吸虫を駆除する薬で、通常1~3日間飲み続ける必要があります。プラジカンテルは副作用として吐き気や嘔吐、下痢、頭痛、腹痛、眠気、食欲不振、だるさ、発疹などが生じる可能性がありますが、いずれも一時的ですぐ消えることが多いです。また、妊婦さんや妊娠の可能性のある人は服用を避ける方が望ましいとされています。
プラジカンテルを数日飲むことで症状は収まることが多いですが、肝吸虫によって胆道が詰まってしまった場合は手術が必要になることもあります。
肝吸虫症になりやすい人・予防の方法
肝吸虫症は2010年代に感染者が世界全体で1,500万〜2,000万人に増加したと推定されています。中国、韓国、ベトナム、極東ロシアなどの東日本に多く分布し、淡水魚が感染源であることから河川流域や湖、沼の周辺で流行が見られます。。日本ではかつて秋田県、宮城県、石川県、岡山県、徳島県、佐賀県など各地の河川流域で発生が見られていましたが、現代はほぼみられなくなっています。
東南アジアのラオスではメコン川などの河川や湖、水田で採れる淡水魚を生食や発酵調味料で食べる習慣があります。そのため、これらの河川の淡水魚に寄生するタイ肝吸虫に感染して生じる肝吸虫症が問題になっています。住民の間では「ライム汁をかければ虫が死ぬ」と信じられていることも多いですが、科学的にはその効果は確認されていません。ラオスでは母親の92.9%、子どもの82.9%が肝吸虫に感染しているという報告もあり、感染者数はラオスとタイだけで1,000万人と推定されています。
予防の基本は、淡水魚を必ずよく加熱して食べることです。東アジアや東南アジアなどの流行地域では特に注意が必要です。発酵させた魚であっても発酵期間が短いと感染する可能性があります。また、ライム汁をかけても寄生虫は死なないため、誤った信じ込みに注意が必要です。
参考文献
矢崎義雄 et al.「内科學第11版」(朝倉書店、2017年) 357-358ページ
上村清 et al. 「寄生虫学テキスト第4版」(文光堂、2019年)83-84ページ
石上盛敏「ラオスの肝吸虫について」(国立感染症研究所、最終閲覧日2025年8月22日)
宮崎利夫 et al. 「薬の辞典」(朝倉書店、2001年)545-546ページ

