ACTH単独欠損症の治療
この病気の治療の中心は、足りないホルモンであるコルチゾールを外から補うことです。具体的には、ヒドロコルチゾンなどの「グルココルチコイド製剤」を1日数回に分けて服用します。これにより、体のストレスに対する反応を補い、日常生活を支えることができます。
治療を始めると、だるさや食欲不振などの症状は比較的早く改善することが多いですが、完全に元の体調に戻るには時間がかかる場合もあります。特に、急激なストレスがかかるとき(風邪をひいたとき、手術を受けるときなど)は、通常より多めのコルチゾール補充が必要になるため、主治医とよく相談し、「ストレス時の対応計画」を決めておくことが大切です。
また、一生涯にわたってホルモン補充が必要になることが多いため、自己管理能力が重要になります。ときには、コルチゾールの内服を忘れたりすると、体調が急激に悪化する危険があるため、薬の管理には十分注意が必要です。
ACTH単独欠損症になりやすい人・予防の方法
ACTH単独欠損症は非常にまれな病気であり、明確な予防方法は確立されていません。しかし、発症しやすい背景には、自己免疫体質や遺伝的要因、頭部外傷、脳下垂体の炎症や腫瘍などがあります。そうした背景がある人は、体調の変化に敏感になることが大切です。
特に、風邪を引きやすい、原因不明の疲労感が続く、食欲がない、ストレスの後に体調が極端に悪化するといった場合には、早めに内分泌専門医に相談することが勧められます。また、過去に頭部外傷や脳の病気を経験した方も、ホルモンバランスに異常がないか定期的に検査を受けると安心です。
この病気を予防することは難しいものの、早期発見・早期治療により健康的な日常生活を維持することは十分可能です。日ごろからの健康チェックと、体調変化への気づきが、自分の体を守るための第一歩となります。
参考文献
日本内科学会 ACTH単独欠損症
難病情報センター 下垂体機能低下症

