「仕事と家庭の両立がつらい…」ワーキングマザーが抱える心の悩み 医師が教えるメンタルケアのコツとは

「仕事と家庭の両立がつらい…」ワーキングマザーが抱える心の悩み 医師が教えるメンタルケアのコツとは

仕事と家庭、どちらも手を抜けない毎日に疲れを感じていませんか? ワーキングマザーは責任の重さや時間のなさから、心が追い込まれやすくなります。無理をしすぎないためのメンタルケアのヒントについて、「渋谷365メンタルクリニック」の渡辺先生に解説していただきました。

渡辺 佐知子

監修医師:
渡辺 佐知子(渋谷365メンタルクリニック)

金沢医科大学大学院医学研究科修了。同大学の神経科精神科、女性総合医療センター外来を経て、厚生労働省医系技官として医療行政に携わる。精神保健指定医。日本精神神経学会認定専門医・指導医。産業医。医学博士。

ワーキングマザーが抱える心の悩み

ワーキングマザーが抱える心の悩み

編集部

ワーキングマザーがよく抱えるメンタルの悩みには、どのようなものがありますか?

渡辺先生

「子どもに時間をかけられない罪悪感」「仕事のパフォーマンスが落ちている焦り」「家庭のことがきちんとできない自己嫌悪」「常に時間に追われるストレス」など、様々な悩みを抱えています。特に働き盛りの世代は、自分の中で「これくらい頑張りたい」という目標があるのに達成することができず、「やりたいのにできない」「本当はこうしたいのにできない」という自己不確実感を抱え込みやすい傾向にあります。そして、その悩みを誰にも相談できず、1人で背負ってしまう女性は少なくありません。

編集部

夫や周囲の協力が得られず孤立している人も多いのですか?

渡辺先生

はい。育児や家事の負担が偏っていると「自分ばかり」と感じやすく、孤独感につながります。共働きでもメンタル的にはワンオペ状態になっているケースが多く、これが心の不調の原因になるのです。

編集部

最近では、女性の支援に力を入れている企業や団体も多いと思いますが、実際はどうなのでしょうか?

渡辺先生

たしかに、仕事と家庭の両立支援が重視されていたり、社会でも「一億総活躍社会」と叫ばれたりしていますが、ワンオペで家事も育児も背負っている女性が多いのが現実です。例えば、家族やパートナーから「手伝うよ」という声はあっても、実際に男性が動いてくれるのは少ないケースが挙げられます。また、男性自身も「どう関わったらいいのか分からない」「下手に手を出したら怒られる」と思っていることもあり、なかなか意識の改革が追いついていないのが現状です。

編集部

やることが多すぎて、慢性的に疲れている女性も多いと思います。

渡辺先生

そうですね。そのような場合の多くは、物理的に時間がないのではなく、心の余裕がない状態です。仕事・家事・育児の全てを完璧にこなそうとする責任感の強い人ほど、心がすり減ってしまいます。

編集部

無意識のうちにメンタルが限界に近づいている人もいるのでしょうか?

渡辺先生

「やる気が出ない」「物忘れが増えた」「朝がつらい」などの一見軽い不調が、うつ状態のサインである場合も少なくありません。責任感から無理を続ける人ほど、自分の疲れに気づきにくい傾向があるので要注意です。

編集部

自分でも気づかないうちに、心がどんどん疲れてしまうのですね。

渡辺先生

はい。例えば「ちょっと調子が悪いな」と、うすうす感じている中、職場では「書類、まだ出ていないよね」「ミスあったよね」なんて上司にちくちく言われてしまう。そして1on1で上司と話をして「特別にタスクが増えたわけじゃないのにどうしてミスが多いのか」と聞かれても、家庭のことはプライベートだから上司に話していいのか迷ってしまう……。そんなことを繰り返すたび、どんどん心が限界に追い込まれていくケースは多くあります。

編集部

誰にも相談できないという問題があるのですね。

渡辺先生

しかも「上司に言ったところでどうせ変わらない」と思ってしまうと、相談する気持ちも薄れて、結局言えなくなってしまいます。職場以外では、例えば家族に話しても喧嘩で終わったり、友人にはどこまで愚痴をこぼしていいのか分からなかったりして、結果的に1人で抱え込んでしまう人が本当に多いのです。

現在のメンタル状況を確認する方法

現在のメンタル状況を確認する方法

編集部

自分が今、心の限界に近いかどうか、どう判断すればいいですか?

渡辺先生

自分の状態を知るためのセルフチェックとして、「SDS:Self-rating Depression Scale(自己評価式抑うつ性尺度)」をおこなってみるのもいいと思います。検査項目には「気が沈んで憂うつだ」「朝方はいちばん気分がよい」など20項目あり、それぞれに「めったにない」から「いつも」まで4段階で回答していきます。インターネットで検索すると検査項目が見つけられるので、試してみてはいかがでしょうか。

編集部

セルフチェックすることもできるのですね。

渡辺先生

はい、そのほかにも、「K6」という精神科で使われる簡易チェックリストを使用することもできます。このテストはインターネット上でも公開されています。ただし、心配な場合は自己判断で終わらせるのではなく、産業医やメンタルクリニックで相談しましょう。

編集部

子どもの前では明るく振る舞えていても、1人になると落ち込む人も多いと思います。その場合も要注意ですか?

渡辺先生

表面上は元気でも、心の中で落ち込んでいるなら注意が必要です。特に「母親なのだから頑張らないと」「軽く振る舞わなきゃ」と自分を追い込むと、無自覚のままメンタルにダメージが蓄積されてしまいます。

編集部

「他人と比べて自分が弱いのが悪いのではないか」と思ってしまう人もいるのでは?

渡辺先生

たしかに、そのような人は多く見受けられます。しかし、他人からは見えないだけで、同じように苦しんでいる人はたくさんいます。「自分だけが苦しんでいる」「自分が悪い」など、自分ばかりに意識を向けてしまうと、かえってつらさが増すことになります。

配信元: Medical DOC

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