仕事と家庭の両立がつらいときの対処法
編集部
両立が苦しいとき、まず何から始めたらいいですか?
渡辺先生
多くの人が「全部を自分で頑張らなきゃ」と思っていますが、あえて「頑張らない」「全部はやらない」と決めてしまうことも大事です。特に家事や育児は、家族で分担したり、外注をうまく利用したりして、省エネで回す工夫もできます。優先順位を整理して、「これだけやればいい」と余裕をつくることが、心を安定させる一歩になると思います。
編集部
仕事を辞めるという選択肢も考えるべきですか?
渡辺先生
仕事を辞めることが悪いわけではありませんが、感情的な判断は避けましょう。まずは職場に相談し、時短勤務や業務内容の調整など、働き方を見直す手段がないか検討をしてみてください。最近では、リモートワークを取り入れている企業も多いので、会社と相談して出社ではなく在宅勤務にしてもらうのもいいと思いますよ。
編集部
パートナーが非協力的な場合、どうすればいいですか?
渡辺先生
パートナーに話をするうち、感情的になって喧嘩してしまったパターンはよくあると思います。頑張って共有しようとしても相手からの共感や受け止めがなくて、「もう言っても無駄だな」って諦めてしまいがちです。そんなときは利害関係のない相手、例えば同じ子育て世代の女性同士で「うちも同じだよ」と愚痴を言い合うだけでも、すごくスッキリするかもしれません。ペアカウンセリングのように、同じ立場で気持ちを言い合えるだけで楽になる人もいるので、ぜひ参考にしてみてください。
編集部
なんとかパートナーに分かってもらおうとするのではなく、同じ立場にいる女性同士で話し合うのですね。
渡辺先生
そもそも身内に全部理解してもらうのは、育ってきた環境も価値観も違うので困難です。そんなときには同じ環境にいる人同士、話し合うのがいいと思います。最近では、ChatGPTのようなAIを使って、セルフカウンセリングしている人も増えています。今の時代、それも立派なセルフカウンセリングだと思います。1人で悶々と考え込むよりも、文字や言葉にして表現することで自分の課題が見えてくることもあり、AIからアドバイスをもらうことで「こういう視点もあったんだ」と気づけることもあると思います。
編集部
最近はAIを活用している人も多いのですね。
渡辺先生
とにかく大事なのは1人で抱えないこと。誰かに話を聞いてもらうには言語化することが必要なので、そうしたプロセスを経ることで頭が整理され、スッキリすることもあると思います。
編集部
心が折れそうなときは、どう乗り越えたらいいですか?
渡辺先生
「1人で耐える」必要はありません。自治体の相談窓口、保健師、母子保健サービス、子育て支援など利用できる支援があるので、そうしたサービスを利用してみるのもおすすめです。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
渡辺先生
子育ては年単位で続く大きなタスクです。短期決戦ではないからこそ、1人で抱え込まないことが大切です。「もう無理だ」「自分はダメな母親だ」など結論を急がずに、まずは誰かに頼ってみましょう。実際に話してみると「言ってよかった」「スッキリした」と思えることは多いと思います。医師やカウンセラーに相談するだけではなく、AIなどのサポートも活用しながら、少しずつ肩の荷を下ろしていってください。子育ては完璧を目指すものではなく、続けていくための工夫と支え合いが大切です。1人で抱え込まず、ぜひ頼れるものに手を伸ばしてみてほしいと思います。
編集部まとめ
子育ては「1人で頑張るもの」ではありません。支えを求めることは弱さではなく、より良い日々をつくるための大切な選択です。家族や専門家、そしてAIの力を借りながら、自分らしい子育ての形を見つけていきましょう。

