誰かを待つ時間、その人が来たときの第一声を考えたり、そのあとの時間に思いを馳せたり、あるいはメールチェック、SNS、携帯ゲームなど、過ごし方はさまざま。
DJ、作詞、音楽演出など幅広い活動をしているカワムラユキさんに、そんな「待つ時間」をテーマにして選曲&言葉を綴っていただきます。
君の目を眩ませた、かつては価値があった夜
光を消費する為ではなく、美しい欲望だけを反射するように
あらゆる可能性を探しながら、僕の360度周辺を鮮やかに取り巻いていた
スクランブル交差点のサイネージは、空よりも深い色を湛え、交差する人影は誰かに惹かれているのではなく、自分の輪郭だけを見つめている
ナルシズムとかルッキズムとか、後戻り出来ない概念の塊を自らの心身に縛りつけて、限りある時間の営みには白けきって
新しいビートは鋭く、それでいて官能的
真新しいわけではなく、ビンテージでもない
身体を揺らすため?
硬く閉じた感情を、静かに解錠してゆくリズム
ありがちな甘い誘惑に呆れてるのも、ひとつの美学
「愛を差し出せ」
「傷つくことを恐れる前に、心を携えて街へ出ろ」
表情を磨き、言葉を選び、感情を編集して
封印した裸が感情を侵食する
君の汗ばんだ顔から虚飾が剥がれ落ち、鼓動だけがフロアに残された
香りも記憶も境界を失ってゆく
この瞬間だけが異様な密度を帯びて存在して
美しさとは完成を目指すのではなく、壊れそうな均衡を保ち続ける緊張だとして
純粋すぎる愛を説明しない
証明もせずに、真っ直ぐに君へと差し出す
夜空へグラスを掲げるように、静かに誇り高く
愛とは誰かに与える感情ではなく、自分という輪郭を恐れず世界へ差し出す勇気なのかもしれない。
この街の夜は、君の愛を弄ぶように光る
過剰なほど華やかに、息を呑むほど静かに

Madonna『CONFESSIONS II』(2026年、Warner Records)収録

