
勤務中に熱中症になった場合、職場側が法的責任を負う?(画像はイメージ)
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職場における熱中症対策を強化する目的で、改正労働安全衛生規則が2025年6月1日に施行されてから1年以上がたちました。今年もすでに7月に入り、各地で最高気温が30度を超える真夏日や、35度以上の猛暑日を記録する本格的な暑さが始まっています。晴れの日だけでなく、曇りの日や雨の日も湿度が高くなるため熱中症には注意が必要です。
ところで、企業側が猛暑日や酷暑日に作業を続行させた場合、安全配慮義務違反に該当する可能性はあるのでしょうか。また、職場が適切な熱中症対策を行う中、従業員が熱中症になった場合、自己責任とみなされてしまうのでしょうか。佐藤みのり法律事務所の佐藤みのり弁護士に聞きました。
使用者側に責任が生じるケースも
Q.そもそも、猛暑日や酷暑日に従業員に作業を続行させた場合、企業側が安全配慮義務違反を問われる可能性はあるのでしょうか。また、「電気代の高騰を理由にエアコンを稼働しない」「水分補給の休憩を与えない」といった、オフィス内や店舗での熱中症トラブルも安全配慮義務違反になりますか。
佐藤さん「会社には従業員の健康や安全に配慮する義務(安全配慮義務)があるため、猛暑日や酷暑日に、個々の従業員の健康状態に配慮せず、十分な休憩もなく作業を続行させ、従業員が熱中症になったような場合、安全配慮義務違反に当たるとして、会社側が損害賠償責任を負う可能性があります。
また、エアコンを適切に使用させなかったり、適切なタイミングでの水分補給を認めなかったりといった場合も同様、安全配慮義務違反に当たる可能性があります」
Q.「自己管理がなっていない」と労働者側のせいにされるケースもありますが、もし体調不良を上司に言い出しにくい雰囲気がある中で熱中症になった場合、企業側の責任はどうなりますか。
佐藤さん「使用者側の安全配慮義務違反が認められるかどうかはケースバイケースです。例えば、熱中症予防について周知徹底され、体を冷やすための場所も用意されている職場環境の中、熱中症予防の知識が豊富で、他の職員に熱中症対策などを周知する立場にあった従業員が、自ら休憩を取ることなく作業を継続し、熱中症により死亡した事案では、使用者側の安全配慮義務違反が否定されています。
なお、この事案では、死亡した従業員は、上司の指示を待たず、体を冷やしながら作業できたはずである旨を認定されているため、体調不良を言い出しにくい空気のせいで熱中症になったケースではないと考えられます。
昨年、改正された労働安全衛生規則によると、熱中症が生じる恐れのある作業を行う際に、『熱中症の自覚症状がある作業者』や、『熱中症の恐れがある作業者』を見つけた者が、その旨を報告する体制を、事業場ごとにあらかじめ定め、関係作業者に周知することが求められています。これに違反すると、『6カ月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金』に処される可能性があります。
報告体制を整えることで、自然と『熱中症による体調不良を言い出しにくい空気』はなくなるはずであり、報告体制を整えていない事業場は、罰則を科される可能性があります」
Q.「うちは個人事業主(フリーランス・一人親方)だから関係ない」「業務委託だから対策は自己責任」という言い分は、現在の法律でも通用するのでしょうか。
佐藤さん「熱中症対策の義務は、すべての事業者に課されます。従って、『WBGT(暑さ指数または湿球黒球温度)28度以上または気温31度以上の環境下で、継続して1時間以上または1日当たり4時間を超えて行われることが見込まれる作業』をする事業者は、労働安全衛生規則に定められた熱中症対策をしなければなりません。個人事業主も、業務委託契約を受けた受託者も、それぞれ熱中症対策を講じる義務があります。
なお、同一の作業場で、複数の事業者が作業を行う場合、元方事業者(自らも仕事の一部を行いながら、他の部分を請負人に請け負わせている事業者)も、関係請負人の事業者も、いずれにも熱中症対策義務があります。元方事業者は労働安全衛生法29条に基づき、関係請負人が義務を果たすよう、必要な指導を行わなければなりません」
Q.2025年6月に熱中症対策が義務化されて以降、労基署が是正勧告を出した事例はどの程度だったのでしょうか。
佐藤さん「熱中症対策が義務化された2025年の6月から8月までの3カ月間に、全国の労働基準監督署が是正勧告を出した事業所は、257カ所に上ったと報じられています。
具体的には、熱中症の恐れがある人を見つけた場合などの連絡体制が整えられていなかったり、医療機関へ搬送するための手順が決められていなかったり、従業員らへの周知がなされていなかったりした場合に、是正勧告がなされたようです」
