筋緊張低下の前兆や初期症状について
特に乳児期には以下のような兆候から筋緊張低下が疑われます。見た目・姿勢の異常として、仰向けに寝かせると、手足がべったり床につく(frog-leg posture)、引き起こすと首がついてこない(head lag)が顕著、横抱きすると背中が逆U字に曲がる(inverted U)、 脇の下を支えて抱くと、肩が抜けそうになり、全身がだらんと垂れる(loose shoulder)、おすわりさせようとすると、体が折りたたまれるようになる(double folding)といった兆候がみられます。また、運動発達の遅れとして、首がすわらない、寝返りが遅い、座れない、立てない、ジャンプができない、階段を交互に上れない、動揺性歩行(歩くときに体が左右に揺れたり、アヒルのようにふらついたりするような歩き方)、転びやすいといった特徴がみられます。その他の症状として、表情が乏しい(顔面筋の筋力低下)、食事中にむせやすい(咽頭筋低下)、呼吸が浅い・弱い(呼吸筋の低下)、咳が弱く痰が出せない(喀痰排出困難)、 これらのサインは単なる「体がやわらかい子」として見過ごされることもあります。
筋緊張低下の検査・診断
筋緊張低下の診断には、臨床所見に基づく評価に加え、複数の検査を組み合わせて原因を探る必要があります。視診・身体所見において、姿勢、動き、筋緊張の程度を観察し、仰向け、引き起こし、抱き上げ、座位保持などの反応を確認します。血液検査においてCK(クレアチンキナーゼ)は筋逸脱酵素であり、筋肉由来疾患では高値となります(例:筋ジストロフィ)。アルドラーゼ、LDH、乳酸・ピルビン酸比は代謝性ミオパチーのスクリーニングに有用です。自己抗体、内分泌検査を行い免疫性や内分泌性ミオパチーの除外を行います。電気生理学的検査として、末梢神経伝導検査や針筋電図を行いますが、小児では協力が得られず検査から得られる情報が少ない場合もあり、結果の判断は慎重に行います。画像検査としては、筋MRIを撮影し、筋萎縮や炎症の分布を把握します。中枢性神経疾患などの非筋疾患が疑われれば脳MRIや染色体検査で評価します。筋生検・遺伝子検査はミトコンドリア病・糖原病・筋ジストロフィなどで有用ですが、小児では全身麻酔が必要となることが多く、専門施設での実施が望ましいです。

