これまで、噛み合わせやストレスが原因と考えられてきた「歯ぎしり」ですが、「舌の筋力」や「寝ているときの呼吸」との関係も明らかになってきているようです。歯ぎしりの対処法、治療法と日常のケアについて、「むらかみ歯科クリニック」の村上先生に解説していただきました。

監修歯科医師:
村上 明延(むらかみ歯科クリニック)
福岡歯科大学卒業。その後、広島大学歯学部附属病(現・広島大学病院)や広島市内の歯科医院で勤務医として経験を積む。2013年、広島県廿日市に「むらかみ歯科クリニック」を開院。患者さん一人ひとりの生活習慣に寄り添い、むし歯や歯周病の根本的な予防を通じて、健康な口腔環境の維持をサポートしている。
編集部
歯ぎしりの対処法にどのようなものがありますか? 歯科医院でできる治療や処置を教えてください。
村上先生
歯ぎしりの対処法としては「マウスピース(ナイトガード)の着用」が一般的です。ただ、マウスピースにも種類があり、適切なものを選ぶことが重要です。患者さんのなかには柔らかいソフトタイプを使用されている人も多いのですが、歯に力をかけない点では効果があるものの、滑りが悪いためあごの動きを妨げてしまいます。すると、舌が持ち上がらないため呼吸がしづらく、かえって睡眠を妨げてしまいます。
編集部
では、どのようなタイプのマウスピースがおすすめですか?
村上先生
個人的におすすめするのは、硬いハードタイプのマウスピースです。歯ぎしりが必ずしも口の中の様々なトラブルを引き起こすわけではありません。要は、歯ぎしりがしやすい状況なのか、そうではないのかという点です。歯列に乱れがある人とそうでない人では、乱れがない人の方が歯ぎしりがしやすく、つまり「歯ぎしりしやすい=歯にあまり力がかからない」ということです。
編集部
もう少し詳しく教えてください。
村上先生
歯ぎしりしやすい噛み合わせを獲得できればいいのですが、根本的にその噛み合わせを獲得するためには矯正などのハードルの高い治療になってしまいます。しかし、マウスピースを歯ぎしりしやすい状態に作り、装着して寝ていただくことで、歯のでこぼこをマウスピース上で平らにして、あごの動きをスムーズにする効果があります。歯ぎしりしやすいということは、歯に力がかかりにくいということになります。歯ぎしりは完全に止めてしまうと呼吸ができなくなるという問題があるため、むやみに止めようとするのはかえって逆効果です。大切なのは歯に負担をかけずに歯ぎしりをしやすくすることで、ハードタイプであれば歯に力がかからないうえに、あごもスムーズに動くようになります。これにより舌が持ち上がりやすく、気道も確保されるため睡眠の質の改善にもつながります。
編集部
そのほかに、歯ぎしりを軽減するためのセルフケアや予防法はありますか?
村上先生
舌を鍛えることも、効果的な予防法の1つだと思います。「あいうべ体操」や舌を口のなかでぐるぐる回す「舌回し運動」などがおすすめです。舌の筋力がついて前にしっかり出せるようになれば、歯ぎしりを軽減できる可能性があります。加えて、食生活の見直しも重要です。歯ごたえのあるものを意識して食べるだけでも、舌の筋力が自然に鍛えられます。
編集部
最後に、読者へメッセージをお願いします。
村上先生
口のトラブルは「細菌」や「清掃不足」が原因だと思われがちですが、じつはそれだけではありません。一生懸命歯磨きをして、定期的に歯医者さんに通っているのになぜかむし歯ができたり、詰め物や被せ物が外れたりする原因の1つに歯ぎしりがあると思っています。セルフケアの質を高めるだけでは防ぎきれない口の問題があることを、ぜひ本記事をきっかけに知っていただければ幸いです。歯ぎしりは口だけでなく、睡眠の質など体全体にも影響してくるものですので、気になる症状があれば早めに対処されることをおすすめします。
※この記事はメディカルドックにて<「歯ぎしり」をする原因はご存じですか? 歯ぎしりしやすい人の特徴や対処法も歯科医が解説!>と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。
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