LOCAL MIN. もしかすると真鶴は、東京から限りなく近い逃避行先なのかもしれない

LOCAL MIN. もしかすると真鶴は、東京から限りなく近い逃避行先なのかもしれない



真鶴へ行こう。そう思い立ったときから、旅のBGMはくるりの「ハイウェイ」と決めていた。

「僕が旅に出る理由はだいたい百個くらいあって…」と岸田繁が歌うのに耳を澄ませているうち、気がつけば車窓には一面のブルーグレーが広がっていた。

タイパ、コスパという言葉が世の中にあふれ、指先ひとつでたいていのものが手に入るこの時代に、わざわざ書店に足を運び1冊を選ぶ、その面倒と余白にこそ幸福は宿ると、その不便こそを愛したいと、そんな思いで今日は電車に揺られている。





駅からの坂をぶらぶらと下りたどり着いたのは、道草書店。

店内をぐるり歩き回っていると、地元真鶴ゆかりの本がいくつか並んでいるのが目を惹いた。

「東京での暮らしを手放しこの港町に移り住んだ人は、どんな日々を送るのだろう」とふと気になり手に取った、 1冊の本。
店の奥、秘密基地のようなカフェスペースで、ジンジャーエールをちびちびと飲みながら読み進めた。





太陽が西に傾く頃、本に登場した岩海岸へと向かう。

人気のない浜辺に降り立ち、少し湿り気を帯びた温かな砂を手に取ると、ここはおよそ15万年前の火山の噴火によってあふれ出した溶岩が連なり冷え固まってできた半島だ、と30分前に本で得たばかりの知識が実感を伴ってじわりと迫ってくる。

東京からたった1時間半、それなのに随分遠くまでやって来たような気がして。そこにはなんとも言えない解放感と、安らぎがあった。





東京に戻った今もこの1冊を見るたび、港町・真鶴で暮らす誰かの今日に、ぼんやりと想いを馳せている。






<今月の1冊>





海のまちに暮らす

のもとしゅうへい 著

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