単なるハウツーでも、壮大な思想書でもない「第三の文章術本」ができるまで|レジー

単なるハウツーでも、壮大な思想書でもない「第三の文章術本」ができるまで|レジー

7/29にレジーさんの最新刊『ビジネスパーソンのための「芸風」で書く技術』(リンク先はAmazonに遷移します)が発売となります。書籍制作の裏側をセルフライナー・ノーツ的に綴っていく本連載は、はやくも4回目を迎えました。今回は、「書く」テーマの本を企画会議に通すうえで、レジーさんが「文章術」と「メタ文章術」の間でとった身動きの様子、そして整理の過程についてです。

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いざ「文章術」に関する本を書くことになったものの、当然これだけでは企画にはなっていないわけで、何をどういう切り口でまとめるのかをもっと具体的に考える必要があった。

…あったわけだが、これがなかなかに難しかった。

連載初回で「自分が書く文章術の本ならこういう切り口で」という話を書いたが、実際のところあそこで触れた内容は決してそんなにすっきりと確定したわけではない。自分がなぜこれを書くのか、何を書いたら面白くなるのか、そもそもこの領域に踏み出すのは自分にとってよいことなのか…いくつかの逡巡や葛藤を経て、最終的な本の形が固まった。

 

 

 

今回はその過程について振り返ってみたいと思う。

おそらく多くの書籍がそうだと思うが、今度出る本も版元内での企画会議を経て最終的なGOが出るプロセスで、会議にあたってはそこでの議論に耐え得る内容をまとめる必要がある。企画書を作って議論するのは担当編集の方だが、その手前で著者として書きたいことをすり合わせるために自分が何をどう論じるかを整理しなければならない。

最初に難しかったのは、いわゆるハウツー的な側面を自分が許容できる範囲でどの程度盛り込むかだった。

この本は新書での刊行が前提だったので、ビジネス書の棚でハウツーが前面に押し出された類似企画と並ぶ想定は基本必要ない。とはいえ、文章"術"が企画の根幹にある以上、何らかの形で「これをこうすればこうやって書けます」というアプローチは求められる。自分としては、それをやればやるほど本として薄っぺらくなるのではないかという疑念や不安はどうしても拭えなかった。

また、自分の関心事はどちらかといえば「文章術そのもの」よりも「なぜみんなして文章術の類を求めるのか?」の方だった。文章をうまく書きたいと思う人の多い状況にこそ今の世の中のいろいろな構造が現れているような感覚もあり、その問題意識を掘り下げた方が見えてくるものがあるのでは…という直感もあった。

そんなことを思いながら最初に整理した企画は、着地したものより良くも悪くも批評的な内容だった。なんで人はそんなに"書きたい"のかを考える、言ってみれば「メタ文章術本」のようなものと言えるかもしれない。

自分としてはそれなりに面白く書けそうな感覚もあったのだが、この内容はあまり反応が良くなかった。

企画会議でのフィードバック内容をここで詳らかにすることは避けるが、大きく言えば最初の趣旨に立ち返って「書き方」にもっとフォーカスした方が良いのではということだった。

今思えば掲げた問いが大きすぎるというか、通り一遍の話(承認欲求がどうとか)と壮大な話(人間はコミュニケーションする生き物とか)のどちらかに帰着させるしかない話になりそうな懸念もあるので、この指摘自体は真っ当だと感じる。ただ、「単にハウツーに寄せた本」を書きたくない自分にとって、この戻しは結構難易度が高かった。

「書き方」を段階的に解説するパートはそれなりのボリュームで必要で、一方でそれが求められる「時代」について掘り下げるパートも自分の矜持として組み込みたい。このバランスを考える中で、連載初回で書いたような『ファスト教養』『東大生はなぜコンサルを目指すのか』の最終章を膨らませるイメージの骨子が固まっていく。仕上がりはぜひ書籍で確認していただきたい。

ここまで書いてきたのが構成面での難しさだが、当然内容面での難しさもあった。関係する人たちと折り合いをつけるにあたって最も難儀したのが、「仕事における文章」と「独自性・オリジナリティ」のつながりである。

「仕事で書く文章にこそ、その人らしさが大事だ」

こう言われた時、あなたはどんな印象を持つだろうか?

もちろん「仕事」「その人らしさ」の指し示すものや「大事」の度合い次第ではあるのだが、この論旨は今度の本で中心に据えられているテーマの1つになっている。

「関係する人たちと折り合いをつけるにあたって最も難儀した」と書いたのは、この命題に対するスタンスだった。ざっくり言ってしまうと、「これを核にしたい著者と疑義を呈する中の人たち」という感じである(だいぶ「ざっくり」言っています)。

確かにビジネスにまつわる文章にはある程度型が存在するだろう。結論からシンプルに書かない人はもはや犯罪者のように扱われるし、「どう思ったか」を差し込む余地は大きくはない。そんな中でその人らしさがどうこうと言うことに意味はあるか疑問に思う人がいるのはわかる。

一方で、自分はここにある種のバイアスを感じ取った。

いわゆる「優秀なビジネスパーソン向けの文章の書き方」が流布しすぎた結果として、何を伝えるかよりも型通りかどうかばかりが議論されるようになっていないか?また、仕事の文章とその人らしさを完全に切り離して考えること自体が仕事を退屈に、かつ窮屈にする原因なのではないか?

結果的に、今回の本はここで書いたような内容そのものを掘り下げたうえで、では実際に何をすれば単に型を学ぶだけではない形で文章を書くことができるかについて述べたものになっている。そしてそれは、そのまま「ハウツーと時代考察を両立するストーリー」として機能するものになったと思われる。

実践に寄せた結果として背景への思索が浅い本と、深く考えている一方で行動からの距離が遠い本。今回の本は、そのどちらにも陥らないものをどう作るかという作業になった。そのトライがうまく行ったかどうかは、7/29の新刊(リンク先はAmazonに遷移します)刊行後にぜひ確かめてみてほしい。

配信元: 幻冬舎plus

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