「見えている」は“落とし穴”?『緑内障』に“なりやすい人”とは【医師解説】

「見えている」は“落とし穴”?『緑内障』に“なりやすい人”とは【医師解説】

緑内障の発見が遅れる背景には、自覚症状の乏しさだけでなく、「症状がないから受診しなくていい」という心理的な要因もあります。片目ずつ視界を確認する習慣や、アムスラーチャートを使ったセルフチェックは、異変に気づくきっかけになります。40歳以降は定期的な眼科検診を受けることが、将来の見える生活を守るための大切な一歩となります。

柳 靖雄

監修医師:
柳 靖雄(医師)

東京大学医学部卒業。その後、東京大学大学院修了、東京大学医学部眼科学教室講師、デューク・シンガポール国立大学医学部准教授、旭川医科大学眼科学教室教授を務める。現在は横浜市立大学視覚再生外科学教室客員教授、東京都葛飾区に位置する「お花茶屋眼科」院長、「DeepEyeVision株式会社」取締役。医学博士、日本眼科学会専門医。

緑内障の受診

緑内障は、初期には自覚症状がほとんどないまま進行することが多く、「見えにくさ」を感じたときにはすでに視野障害が進んでいる場合もあります。そのため、症状がなくても定期的に眼科を受診し、早期発見・早期治療につなげることが大切です。ここでは、緑内障の受診が遅れてしまう理由や、早期発見のために意識したいセルフチェック・定期検診について解説します。

緑内障の受診が遅れてしまう要因

緑内障の発見が遅れる理由は、視覚の仕組みだけにあるわけではありません。社会的・心理的な背景も、受診を遅らせる大きな要因となっています。ここでは、受診が遅れやすい状況を整理します。

自覚症状を感じにくい

多くの方が眼科を受診するきっかけは、「見えにくい」「眩しい」「痛い」などの自覚症状です。しかし、慢性の開放隅角緑内障では、症状がないために「眼科に行く理由がない」と感じてしまいます。

「見えているから問題ない」という思い込みが、受診の機会を遠ざけてしまいます。緑内障の初期・中期では視力低下が起こりにくいことも、この誤解を強める要因です。
自覚症状がなくても、年齢や家族歴などのリスク因子がある方は、定期的な眼科検診を受けることが大切です。

精密検査を先延ばしにしてしまう

会社の健康診断や地域の健診で眼底検査を受け、「緑内障の疑い」と指摘された方のなかにも、精密検査を受けずに放置してしまうケースがあります。「たぶん大丈夫だろう」「忙しいから後でいいか」という気持ちが、受診をためらわせてしまいます。

健診での「要精密検査」という結果は、異常が確定したわけではありませんが、見逃してよい結果でもありません。
早期発見・早期治療の機会を活かすために、健診の結果を受け取ったら速やかに眼科を受診することを強くおすすめします。

緑内障に気づくためのセルフチェックと定期検診

緑内障は自覚症状が乏しいまま進行することが多いため、早期発見のためには「自分で気づく工夫」と「医療機関での定期的な確認」を組み合わせることが重要です。セルフチェックだけで診断することはできませんが、日常的に視覚の変化に意識を向けることで、異変に気づくきっかけを増やすことができます。

家庭でできる視野のセルフチェック

家庭でできる簡単な方法として、「片目ずつ視界を確認する習慣」を持つことが挙げられます。片方の目を手で覆い、もう片方の目で前方や周辺の見え方を確認し、左右で違いがないかをチェックします。これを定期的に行うことで、視野の変化に気づきやすくなります。

確認の際には、正面だけでなく、視線を動かさずに周辺がどの程度見えているかにも意識を向けることがポイントです。「片側だけ見えにくい」「視界の一部が抜けているように感じる」といった違和感があれば、早めの受診を検討してください。

また、「アムスラーチャート」と呼ばれる格子状の図を使ったチェックも一つの方法です。マス目が歪んで見える、欠けて見えるといった変化は、視覚に何らかの異常が生じているサインである可能性があります。

ただし、これらのセルフチェックはあくまで補助的な手段です。異常がなくても安心とはいえず、逆に異常を感じた場合は自己判断せず、必ず眼科での検査を受けることが重要です。

定期的な眼科検診の重要性

緑内障を早期に発見するための最も確実な方法は、定期的な眼科検診です。自覚症状に頼らず、客観的な検査によって状態を把握することが、進行を防ぐうえで不可欠とされています。

一般的には、40歳を過ぎたら症状がなくても年に1回程度の検診を受けることが望ましいとされています。特に、緑内障の家族歴がある方、強い近視のある方、これまでに眼圧が高いと指摘されたことがある方は、発症リスクが高いとされているため、より意識的に受診することが重要です。

眼科では、視力検査だけでなく、眼圧測定・眼底検査・視野検査などを組み合わせて総合的に評価を行います。これにより、自覚症状が出る前の段階でも異常を捉えることが可能になります。

緑内障は進行を止めることができても、失われた視野を元に戻すことは難しいとされています。だからこそ、「見えているうちに気づく」ことが何よりも重要です。定期検診を習慣にすることが、将来の見える生活を守る大きな一歩となります。

まとめ

緑内障は、自覚症状がないまま視野が失われていく病気です。脳の補完機能や両眼視によって欠損が隠されるため、気づかないまま進行してしまうことが珍しくありません。
視野欠損は一度起きると元には戻らないため、早期発見・早期治療が残存する視野を守るうえでの基本となります。緑内障のサインや検査の仕組みを知り、定期的な眼科受診を習慣にすることが、視力を守るための確かな一歩です。

気になる症状がある方はもちろん、自覚症状がない方も、ぜひ眼科で一度検診を受けてみてください。

参考文献

日本緑内障学会「緑内障診療ガイドライン(第5版)」

日本眼科学会「目の病気 – 緑内障」

慶應義塾大学病院「緑内障」

配信元: Medical DOC

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