IgA腎症は長期的な通院が必要な疾患であるため、治療にかかる費用の見通しを持っておくことはとても大切です。保険診療での費用の目安から、先進的な治療の現状、高額療養費制度や指定難病の医療費助成制度など、利用できる支援の仕組みまでをわかりやすくご紹介します。焦らず、一つひとつ確認していきましょう。

監修医師:
田中 茂(医師)
専門は内科学・腎臓内科・血液透析・腹膜透析・臨床疫学・生物統計学
IgA腎症の治療費②|自費・先進医療・生活上の経済的支援
IgA腎症の治療には、保険診療のほかにも、自費で行われる治療や先進的な治療、さらには生活を支えるための経済的な支援制度があります。このセクションでは、それらの選択肢と活用できる支援について詳しく解説します。
先進的な治療と費用の現状
IgA腎症の治療は近年進歩しており、新しい薬や治療法の研究が進んでいます。たとえば、腸管免疫に働きかける新しい経口ステロイド製剤(一般名:ブデソニドなど)の開発や、IgAの異常産生に直接介入する新規の分子標的薬などの研究が行われています。これらの中には、まだ保険適用が進んでいないものや、臨床試験の段階にあるものも含まれます。
先進医療や臨床試験への参加については、費用の扱いが通常の保険診療とは異なります。臨床試験では研究機関が費用を負担するケースもありますが、すべての試験でそうなるわけではありません。関心がある場合は、主治医に相談し、参加の条件や費用の詳細について確認することが大切です。
また、腎機能が低下して透析が必要になった場合、血液透析(けつえきとうせき)の費用は通常1ヶ月あたり40万円を超える水準になりますが、前述の特定疾病制度により自己負担は大幅に軽減されます。透析への移行を少しでも遅らせるために早期からの適切な治療を続けることが、医療費全体の抑制という観点からも重要な意味を持ちます。
利用できる社会的支援と制度
IgA腎症を含む慢性腎臓病の患者さんが利用できる社会的な支援制度はいくつかあります。代表的なものを以下に示します。
高額療養費制度:1ヶ月の医療費の自己負担が一定の上限を超えた場合に、超えた分を後から払い戻す制度(健康保険の加入者が対象)
身体障害者手帳:腎機能障害として一定の基準を満たす場合、身体障害者手帳の取得が可能で、医療費の助成や各種福祉サービスを利用できる場合があります
難病医療費助成制度:IgA腎症は指定難病(難病法に基づく)に指定されており、一定の要件を満たす方は医療費の自己負担上限額の設定が受けられます
指定難病の医療費助成については、申請先はお住まいの都道府県の窓口となります。診断書の作成や申請手続きが必要ですが、認定されれば経済的な負担を大きく軽減できる可能性があります。主治医や病院の医療ソーシャルワーカーに相談しながら、利用できる制度を漏れなく活用することが大切です。
日常生活と経済的負担のバランスをどう整えるか
慢性疾患を抱えながら働き続ける方にとって、治療費と生活費のバランスは切実な問題です。IgA腎症の治療は長期にわたるため、家計への影響をあらかじめ見通しておくことが、治療を継続するうえで重要な視点のひとつです。
就労している患者さんで病状が進行した場合、体調管理のために仕事の量や内容を調整せざるを得ないケースも出てきます。企業の健康保険組合や全国健康保険協会(協会けんぽ)では、傷病手当金の制度があり、病気やけがで仕事を休んだ場合に一定期間の給与補填が受けられます。医師の診断書が必要になるため、主治医に相談することがスタートになります。
また、腎臓病患者さんを支援する患者会や家族会の存在も、精神的なサポートや情報収集という点で心強い存在です。同じ病気を抱える方々とのつながりは、治療への意欲を保つうえで重要な役割を果たします。孤立せず、必要なときに周囲のリソースを活用する姿勢が、長期の治療を乗り越えるうえで助けになるでしょう。
まとめ
IgA腎症は、初期の段階では自覚症状がほとんどなく、健康診断で初めて発見されることが多い疾患です。免疫の異常によって腎臓の糸球体に炎症が生じ、放置すると腎機能が低下するリスクがありますが、早期に発見して適切な治療を続けることで、腎機能を長期間にわたって維持できる可能性があります。治療費については保険診療の範囲内で対応できることが多く、指定難病制度や高額療養費制度などの支援を活用することで、経済的な負担を軽減できます。気になる症状や尿検査の異常がある場合は、まず腎臓内科への受診を検討してみてください。一人で悩まず、専門の医師に相談することが、早期発見・早期対応への確かな一歩です。
参考文献
難病情報センター「IgA腎症(指定難病66)」
日本腎臓学会「IgA 腎症診療ガイドライン 2020」
日本腎臓学会「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023」
- 「腎臓病の症状」はご存知ですか?受診の目安となる症状も解説!【医師監修】
──────────── - 「女性で尿潜血2+になる3つの原因」はご存じですか?考えられる病気も医師が解説!
──────────── - 慢性腎臓病「CKD」とはなにか 原因や治療法を医師が解説
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