こうしたなか、ChatGPTに相談したことで詐欺被害を免れた60代男性のニュースが話題になった。怪しいメッセージやお金に関わる不安を、まずAIに聞いてみる。そんな使い方は、今後さらに身近になっていきそうだ。
ただし、AIは何でも正しく判断してくれる“万能の相談相手”ではない。使い方を間違えれば、かえって判断を誤ってしまう可能性もある。では、どこまでならAIに相談してよくて、どこから先は人や専門機関に頼るべきなのか。
今回は、会員数4万人を超える生成AI学習コミュニティ「SHIFT AI」を運営するSHIFT AIの木内翔大さんに、身近なトラブルを 例にしながら、AIとの上手な付き合い方を聞いた。

■AIは、詐欺判定より“冷静さ”に効く
生成AIには、間違った情報を出してしまうリスクがある。そのため、詐欺対策やお金に関わる相談について、「AIに頼るのは危ないのでは?」と感じる人もいるかもしれない。
たしかに、AIに最終判断を任せきるのは危険だ。だが、木内さんは、AIの価値は「正解を出すこと」だけではないと話す。大事なのは、勢いで動きそうになったときに、一度立ち止まるための“ブレーキ”として使うことだ。
詐欺の手口は、多くの場合、相手に考える時間を与えない。「今だけ」「あなただけ」「すぐに振り込めば間に合う」といった言葉で急かし、冷静に考える余裕を奪ってくる。こういう場面で、AIに相談するワンクッションを挟むだけでもその場の勢いにストップをかけられる。
怪しいメッセージや広告文を貼り付けて、「これは詐欺の手口に当てはまりますか?理由も教えてください」と聞くだけでいい。文字入力が苦手なら、スマホの音声入力で相談する方法もある。
「AIは『絶対儲かる』『個人口座に振り込んでほしい』『今すぐ決めてほしい』といった、典型的な危険信号を整理するのが得意です。いつでも気軽に確認できる相手だと考えるといいと思います」(木内さん、以下同)
怪しいと思っても、誰かに相談するのは恥ずかしい。家族に言ったら怒られそうで、1人で抱え込んでしまう人もいるかもしれない。
そのようなとき、AIは「まず一度、確認してみる相手」として役立つ。大切なのは、AIにすべてを決めてもらうことではなく、冷静になるきっかけを作ることなのだ。

■AIに聞いていいのは、“判断する手前”まで
では、具体的にどんな相談ならAIに向いているのだろうか。ポイントは、「知識や状況の整理はAIに、最終判断は人に任せる」という線引きだ。
たとえば、お金や投資の話であれば、怪しい案件の特徴を確認したり、複雑な金融商品の仕組みをわかりやすく説明してもらったりする使い方は有効だ。
一方で、「自分の貯金からいくら投資すべきか」「この商品を買うべきか」といった個別の判断までAIに任せるのは避けたい。家計状況や年齢、働き方、将来設計は人によって違うため、最終的には専門家や信頼できる人に相談する必要がある。
医療の相談も同じだ。症状をうまく言葉にできないときに、「病院でどう説明すればいいか」「受診時に何を伝えればいいか」を整理するためにAIを使うのは役に立つ。
ただし、AIの回答だけを見て「受診しなくても大丈夫」と判断するのは危険だ。診断や治療の判断は、あくまで医師の領域である。
職場の人間関係や家族との悩みについても、AIは考えを整理する相手になる。相手にどう伝えるか、どのような言い方なら角が立ちにくいかをシミュレーションすることもできる。
ただし、深刻な悩みや他者が関わる複雑な問題は、AIとのやりとりだけで完結させないほうがいい。
「AIには、もっともらしく間違ったことを答えるリスクがあります。また、相手の業者が本物かどうかを完全に確認することもできません。AIは、一緒に確認してくれる相談役(パートナー)だと考えてください」

■AI依存を防ぐ「誰かに見せる」習慣
AIは24時間いつでも使えて、こちらを強く否定せず、優しく答えてくれる。悩みを打ち明けやすい相手である一方、その心地よさに頼りすぎてしまうリスクもある。
最近では、「AI依存」という言葉も聞かれるようになった。人間関係の代わりにAIとだけ話すようになり、現実の人とのつながりが薄れてしまうのではないか、という懸念だ。木内さんも、AIは人とのつながりの代わりではなく、あくまで「最初のきっかけ」として使うべきだと話す。
AIに相談して気持ちが落ち着いたとしても、本当に必要な相談があと回しになってしまっては意味がない。とくに、お金や契約、健康、法律に関わることは、AIだけで完結させないことが大切だ。
「お金が動く前に、いったんAIに加えて誰かに見せることです。AIに『確認すべき質問リスト』を作ってもらい、それを持って消費者ホットライン(188)や警察の相談専用電話(#9110)などに相談する。この順番が一番安全です」

怪しい副業や投資話だけでなく、日常の中でも「これ、本当に大丈夫かな?」と迷う場面はある。そういうときは、AIにすべてを決めてもらうのではなく、まずは状況を整理してもらう。そうすることで、勢いで判断せず、一度落ち着いて考えられるようになる。
AIは、正しく使えば、私たちの生活を守る身近な相談相手になってくれそうだ。
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※本記事内のイメージ画像(図解)は、生成AIで作成しています。

